「独立しても英ポンドを使う」スコットランドの独立論

スコットランドの独立を問う住民投票が18日に迫っている。8月の世論調査でYESがNOを上回るという「まさか!」の結果が出て、イギリス政治は緊急事態に突入した。キャメロン首相をはじめ与野党の首脳がこぞってスコットランドに入り、連日「スコットランドの残留」を訴えている。英を代表する経済紙『フィナンシャルタイムス』も、連日、看板記者たちの独立反対の記事を載せている。そのなかで、主筆格のマーチン・ウォルフMartin Wolfの「スコットランド、英ポンド使うなら真の独立はない」(2014年9月15日日本経済新聞に翻訳掲載)は、スコットランドの独立問題の核心を突いている。

スコットランドの独立派は「独立しても通貨は英ポンドを使い続ける」と主張している。つまりスコットランドと(スコットランド抜きの)「残りのイギリス」が通貨同盟を結ぶと主張している。これにたいしてイギリスの三大政党(与野党)は「認めない」と宣言している。

マーチン・ウォルフによれば、通貨同盟というのは、ユーロ圏の経験があきらかにしたように、政治同盟抜きには、成り立たない。「残りのイギリス」は財政の均衡化をめざしているのに、スコットランドは放漫財政を続けようとしている。「残りのイギリス」がこれを放置することはできない。金融面でもスコットランドが勝手にポンドの量的緩和に走ったりしたら、最悪のばあいにはポンドの暴落と言ったとばっちりを食らうから、放置できない。「1国、1政府、1中央銀行」が原則だ、とマーチン・ウォルフが言うのは、今日の世界資本主義にあっては、真実だ。「1中央銀行」は「1通貨」ということにもなる。今日の国民経済では、「通貨」は中央銀行の通貨(銀行券・預金通貨)だからである。

 

EUの通貨統合(共通通貨ユーロの誕生)は、ソ連・東欧の崩壊→東西ドイツの併合、という事態に迫られてむりやり突き進んだ通貨統合であった。そのため、周縁弱体国(ギリシャ、スペイン、ポルトガルなど)は、ユーロへの通貨の切り替えによって、はじめは身の丈以上の金融バブル経済に浮かれたが、リーマン危機によって、一転、ユーロ圏のお荷物に転落した。ユーロ圏は、通貨は統合したが政治の統合はまだまだ、という中途半端な状態にある。通貨を統合するなら政治も統合しなければならない、ということが明らかになってきた。

「政治は分離するが通貨は統合する」というスコットランド独立派の選択は、世界経済の力学の根本に背いている。投票の結果がどうなるか、まったく予断を許さないが、逡巡している人たちがYESに踏み切れずにスコットランドの独立が否決されたとしたら、「独立しても通貨同盟」に、多くの住民が不安を直感したからであろう。

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