「産消提携運動」に聴く

みなさまへ    松元

みなさん、「産消提携運動」というのをご存知でしょうか。1960年代に急増した化学物質の被害から、「無農薬・無化学肥料」の農畜産物をひろめたいという有機農業運動からさらに発展したものです。

それは単なる「産直販売」とは異なり、「生産者の農業復権運動と消費者の生命を守る運動が結合したもの」であり、また「循環が断ち切られた現実を再構成する営み=「生命循環の確保」(土地-作物-家畜-人間のつながり)」でもある、と説明されています。

つまり生産者は無害な農畜産物をつくり、消費者が安全な食物を受け取れるよう提携しながら、ともに「いのちとくらしを守る」人間のつながりをつくろうという運動です。

資本の論理を追求する大手食品メーカーが市場を支配するなかで、このような志をもった運動は残念ながら少数者としてきびしい環境にさらされてきました。増え続ける化学物質、遺伝子作物などに悩まされながら、今回、フクシマの放射能汚染はこれらの生産者、消費者、提携者を直撃しました。

農畜産物の食品汚染は、福島、茨城、宮城など全国に広がり出荷停止などが相次ぎます。厚生労働省は放出された放射能量も定かになっていない段階で、早くも3月17日に「食品暫定基準値」を発表しましたが、国際比較からも何十倍も高く内部被ばくを度外視した「基準値」は大きな疑問を抱かせたまま事実上一人歩きして「基準・規制値」として矛盾を広げています。汚染食品の流通拡散は、さらなる隠蔽を重ねています。

問題なのは、東電、政府のサボタージュによって肝心の食品の放射能計測が、民間食品業者や自治体に委ねられ、何十万円、何百万円もする計測機器を自前で購入し自ら計測しなければ、「基準値」との比較も出来ず、「安全な食品」を生産し提供するという良心的な志がずたずたにされているということです。

そうした中で、全国十幾つの「産消提携」団体の呼びかけによって、この18日、『福島原発事故から「産消提携」を考える―私たちは「暫定規制値」で子どもたちを守れるか?』が、東京で開かれました。前迫志郎さんの議論のたたき台を紹介します。「現場の悩み」をすこしでも共有できれば、と思いました。

放射能を人災で撒き散らした犯罪者(東電、電事連、政府)が裁かれず、証拠隠滅、情報隠蔽、過小評価デマ情報が許される一方で、未来の子どもを含む幾百万の騙された被ばく者をつくりだし、話し合いを拒否する東電が官憲に守られる一方で原発反対を叫ぶ若者が逮捕され、国策と大資本が生き延び自然を守り「いのちとくらしを守」ろうとする良心が圧殺される転倒した社会を、ニッポンという国はいつまで続けるのか?

=====以下、前迫志郎さんの主張・論点など転載=====

★ 5月の主張
食品残留放射性物質のレベルは「ドイツ放射線防御協会」が日本に対して示している 成人8Bq/kg~子ども4Bq/kg を基準にすべきです。土壌汚染の値が30Bq/kgを越える田畑では通常作物作付けを断念し、夏期はひまわり、越冬作物は菜種栽培を奨励し、収穫は根からの抜き取り方法をとり、この収穫物も低レベル放射性物質として東電が責任を持って処分しなければなりません。この間の休業補償は何年に及ぼうと、東電が見なければなりません。

東北地方太平洋岸海産物についても同様。
また、希望する福島県民全員の県外移住経費と移住先の住居確保と就職斡旋にも責任があります。

これらの膨大な経費を東電は全財産を使って補償しなければなりません。原発事業者である全ての電気事業者、及び東電株主はこれに連帯して、保証人(無限責任)にならなければならない。これは法令以前の道義的責務である。

これによって、東電他電力事業社に経営破綻の可能性が生じた場合、原発関連以外の給配電事業とその人員が、国営化によって支えられなければならない。

原発設備は全て現経営陣=取締役会とこれまでの原発事業関連人員に拠って、責任ある廃炉と使用済み核燃料永年安全保管されなければならない。

今回の事故はそれほどの無限債務であると思います。
これを履行できない場合は、そろそろ「人類への罪」として起訴準備がなされるべきです。

と言う道理からかけ離れた政治状況ですね。
政府(文科省)自身が、模造石けんを持たせ、収容所民をシャワー室だと偽って送り込んだナチのごとく、20mSv/年環境へ子どもたちを誘っています。政府も「人類への罪」で告訴されるべきです。

そんな風に考えていたら、明治の(血税)一揆~地方の自由民権運動を覗いてみたら、加波山事件は福島事件に続く抵抗運動であり、田中正造も連座しかけているのでした。福島、そして今回の汚染地域、郡山~上州(上野)には民衆反乱の歴史もまた息づいているようです。過酷な農の状況で、それでも積極的に農に生きようとする民衆には、また抵抗・反乱とも切れない関係を持っています。
由緒正しい反乱民衆、福島民衆は立ち上がれ!

●<論点整理 ①>

 今回、前迫が皆様方にお声を掛けさせていただいているのは、いきなり、突然、どさくさ紛れに出てきた「暫定規準値」だとか、環境汚染、特に「避難基準」だとかが、これまでの法制度からみても、まともな人への健康懸念からみても、相当に不十分。より端的には「殺人レベル」であることからでした。

 高い「避難基準」は避難すべき人たち・特に子どもたちや妊婦さんの自主避難さえ妨害します。「SPIIDI」は起動されていたのに、そのデーターを5月2日まで秘匿していた行為は「不作為」ではなく、充分に作為的だったことを示しています。

 3~4月、ヨウ素の汚染が充分に脅威であった時にデーターを隠し、安定ヨウ素剤配布を見送り、子どもたちの甲状腺に放射性ヨウ素131を蓄積させてしまったのは、未必の故意による傷害・傷害致死・殺人だと思います。

 私たちは、国民を殺し・傷害するような国家に属して暮らしています。そんな中で、生産者も食品団体も、国民の健康--より身近には生協組合員・共同購入会員・農産物や海産物を購入してくださる消費者--の健康に、少なからず責任を持つべき立場です。

 しかし、この様な殺人・傷害国家の環境で生産・販売活動を継続してゆく場合、その国家(政府)が提示する基準(スタンダード)に盲目的に従っていて良いのか?

かつての軍隊内制度同様、「命令されたから」が人類への犯罪から免罪されるわけではありません。人としての判断力と良心に従うことが如何なる場合にも要求されるというのが、現代「倫理」です。
 
 私たちは、私たち自身で私たちの「基準」を思考し選び取らなければならないのです。 

●<論点整理 ②>

 汚染地域あるいは放射線被曝の危険を避ける法的な基準は1.3mSv/3月→5.2mSv/年の「放射線管理区域」規程です。ここでは未成年者の就労が禁止されています。当然妊婦の立ち入りも禁止です。

 mSv/年→uSV/時 換算は365d×24h=87605.2mSv→5,200uSV→÷8760=0.59uSV/時就寝時間を含む個人生活時間は家屋の中だから、という風な都合主義を排して平均すると、とにかく「0.59uSV/時」を越える環境で未成年者や妊婦さんを生活させてはいけません。

 換算。0.5 uSV/h = 15万 Bq/m2 = 1000 Bq/kg ただし次を仮定。セシウム134と137がベクレルで等量。深さ15センチの土壌を採取。 (群馬大学 早川由起夫)

「福島第一原発から漏れた放射能の広がり」(群馬大学 早川由起夫)
http://blog-imgs-34-origin.fc2.com/k/i/p/kipuka/26julyJG.jpg

この地図から、0.5uSV/時の汚染レベルは黄色表記枠内側ですから、福島県はほぼ全県、宮城県側は白石・角田・相馬市まで、茨城県は北茨城市辺りまでの範囲。栃木県内では那須・大田原・日光。その他飛び地として、岩手県一関市付近、群馬県沼田市北部、千葉県柏・守谷・流山・三郷・松戸市、茨城県の土浦・阿見市などが「放射線管理区域」レベルの地帯で、住民避難が急がれます。

東電・電事連・国はこの地帯の住民の避難と避難費用、あるいは再生活開始に必要な資金や生活費の支援を開始しなければならない。
* 何兆円になるかの試算は私たちの責務ではない。

小出裕章氏の証言
「現在進行中の福島の、原発事故の本当の被害って、いったいどれだけになるんだろうかと私は考えてしまうと、途方に暮れます。失われる土地というのは、もし現在の日本の法律を厳密に適応するなら、福島県全域といってもいい位の広大な土地を放棄しなければならなくなるとおもいます。それを避けようとすれば、住民の被ばく限度を引き上げるしかなくなりますけれども、そうすれば住民たちに被ばくを強要させるということになります。」
(2011年5月23日参議院行政監視委員会における小出裕章氏の発言)

 群馬大学早川由起夫先生の作業と、小出裕章さんの証言は、この様にぴったりと重なり合います。

●<論点整理③>

食品暫定基準
私たちに最も係わり深い食品基準です。この決定過程と権限については全く不明です。そもそも我が国にもともと基準の無かったものです(輸入食品370Bq/kg以外)。それが突然に食品500Bq/kg、飲料水・牛乳など200Bq/kgと決められました。そのような根拠薄弱な、事故後に急いで策定されたものが基準になっています。

根本的議論として、いかなる放射線も有害と閾値を認めない論。あるいは、食品ですから内部被曝は空中放射線よりさらに危険であることが、常識化していますが、IEAと同じく核推進団体である国際放射線防御委員会(ICRP)の推奨基準はとてもゆるいものです。

私たちは内部被曝の問題も積極的に取り込んだ欧州放射線リスク委員会(ECRR)の主張、早くに福島と首都圏を訪れ調査に入ってクリス・バズビー氏の提言に親近感を感じる。

非常時だからと言っても、この国の暫定値は異常に高い。
● 出典:世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル
http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.html

しかるに、この基準以下の食品については流通消費を自由にしているばかりか、むしろ地域外に拡散させることで、ロンダリングさえ行われている。東日本産生乳が関西にまで運ばれている等がその最たる例である。関西の人間は店頭で買う牛乳パックに放射能が残留しているなどとは、ほとんど思っていない。(山形県長井市出しのミルクローリー車の名神滋賀県内での横転で発覚)あるいは、計測機器性能を盾に、検出限界以下を未検出とする測定値隠蔽。(千葉県は20Bq以下は全て「検出されない」)
――消費者は「基準以下だから大丈夫」と政府が言えば「490Bqのものは出回っているかもしれない」と思うのは当然です。結果的に風評被害は政府が作り出しています。対策としては、基準を下げて、実際の数字を挙げて消費者を説得することです。――河田昌東

稲藁由来とされる牛肉の例等から、消費者は未検査であれば、暫定基準を超えるものも流通してしまうことを知っている。

私たちにとって、最も重要なのは私たち自身の基準の策定である。九州拠点の「グリーンコープ事業連」は10Bq/kg以下を公言している。「オルター大阪」は1Bq/kg以下を公言。「こうべ消費者クラブ」はドイツ放射線防御協会の勧告、大人8Bq/kg~子ども4Bq/kgより、大人も子どもも食べる4Bq/kgを採用。
関東生協関係(首都圏事業連のパルシステム)や食品団体は国の基準(500Bq)。

●<論点整理 ④>として

私はこの間、震災ガレキも福島県外各地で回収される有意なレベルの焼却灰や汚泥やスラッジも、そして汚染された食品も、全て放射性廃棄物なので、発生源=福島第一の敷地内に戻し、閉じこめなければならない。と主張してきました。

もちろん、一度放散された放射性物質を回収したり、閉じこめ直したりすることは困難なのですが、でもその努力が放棄されてはならない。手放しの汚染拡散を許してはならない。ましてや意図的な汚染物質の拡散を許してはならない。

 また、そうすることで、放射能汚染の由来と責任が「東電」にあることを明らかにして、逃げ得を許さない。倒産してでも責任を持たせる。でなければ、原子力発電事業者総体の真摯な反省などありえない。

すると、国民の広汎な希求となった「全ての原発廃炉」への思いも、北海道知事の裏切りのように、あるいは、最初の突破口と目されたのが「玄海」(九州)であったように、ゾンビのごとき黄泉帰りをゆるし、裏切られてしまうだろう。

そのような意味で、科学的な支援(22年産に限定された福島県産「有機米」の販売など)ではない、ムード的「福島応援物産展」などは、放射性物質の全国拡散でしか無く、その帰結=全国民的被曝は犯罪である。それが如何にボランティア精神から発せられていようとも、いわば善意の犯罪である。

■<私たちの要求・提言>

Ⅰ.福島県等の汚染状況下で、今なお人々が暮らしている現状を放置している政府及び汚染原因者「東電」の無作為を糾弾する。
 0.5μSv/時 環境からの避難の実現と、避難者の生活再建のための完全な支援を要求する。
 避難と生活再建の責任は汚染者「東電」にあり、「東電」が避難者の生活再建までの補償の義務を持つ。

Ⅱ.避難地域住民の内、50歳以上の農業者の残留は農地再開準備のために認められるべきである。
  この残留者への清浄な飲食物の供給と行政・医療サービスは確保されなければならない。
 農地浄化のための表土・菜種・向日葵・牧草などの浄化作物の全体収穫は放射性廃棄物として「東電」が責任を持って回収・密閉処理保管しなければならない。
 この回収に際しては、その農地規模の農産物生産に見合う金額での買い取り補償が必要である。

Ⅲ.現在の食品「暫定基準値」には一切の法的正当性は認められない。 
  食品汚染への許容度は、各市民の自発的引き受け意志による。

 有意な汚染(10Bq/kg以上)が認められる食品は、放射性廃棄物として汚染原因者「東電」により買い取り補償されなければならない。

Ⅳ.放射能汚染震災瓦礫や汚染農水産物の移動は汚染の拡散であり、一切認められない。
 すでに地域外へ放散された放射性物質は責任を持って回収されるべきであり、上記瓦礫をはじめ、各地の下水汚泥や焼却灰・スラッジ・腐葉土・堆肥。そして明らかに汚染された農水産物・食品等は放射性廃棄物として、汚染原因者「東電」によって回収され、発生地である
 「福島第一原発」敷地内に戻され、再度の汚染原因にならないように密閉処理・管理されなければならない。

Ⅴ.市民の正常な判断を妨げる産地ロンダリングの禁止
 名神自動車道滋賀県内瀬田でのミルクローリー横転事故で発覚した東日本の産地県の生乳が地域を越えて運搬され、遠方府県乳業工場で産地県を明かさずに製造販売されること。
 あるいは、東北地方太平洋岸漁場で捕獲された水産物を静岡県や三重県など、遠隔都県漁港水揚げで産地を隠蔽するなどの産地ロンダリングは認められない。
  正当性のない「暫定基準値」以下の放射能汚染食品を、家族に食べさせたくない、食べたくないとする市民の判断を容易にするため、産地は正確に表示されなければならない。  

 (以上、転載終わり)