「異例な不確かさ」が続く世界経済の現状    EUのストレステストも不安払拭できず

著者: 早房長治 はやぶさ ながはる : 地球市民ジャーナリスト工房代表
タグ: , ,

 「米国経済の見通しには異例な不確かさが残ることを認識している」――バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の21日の上院銀行委員会における証言は世界にショックを与えた。米経済が2008年9月のリーマン危機から依然として抜け出していないことを、米国の金融政策の責任者が明言したものであったからだ。欧州銀行監督委員会(CEBS)が23日発表した主要91行のストレステスト(予想以上に景気が悪化した場合の損失発生状況を査定し、資本不足額を試算する調査)の結果も欧州を覆う金融不安を完全に拭い去るものではなかった。

 バーナンキ議長の議会証言のポイントは次の7点である。

1) 昨年半ばから始まった景気拡大は緩やかなペースで進んでいる
2) 住宅市場は依然として弱い
3) 雇用回復には長い時間が必要
4) 経済の見通しは異例なほど不確か(unusually uncertain)で、
異例の低金利を長期間維持することが妥当である
5) 注意深く回復状況を評価し、必要に応じてさらなる政策行動をとる用意がある
6) 米国は短期的に(日本が経験したような)デフレに陥るリスクはない
7) 欧州の金融不安の影響で、米国内で株価が下落し、リスクが拡大した

 バーナンキ議長の議会証言は米経済の現状を率直に語っている。それにしても、「米経済の見通しは異例なほど不確か」という言葉はあまりにも異例である。議長は何を恐れ、何を訴えようとしたのであろうか。

 ワシントンなどの消息筋によると、バーナンキ氏が最も恐れているのはデフレであるという。証言で「短期的には、デフレに陥るリスクはない」と述べているが、裏返せば、議長は中長期的には米経済がデフレに陥る可能性はかなりあると見ているのだといわれる。雇用回復の遅れに加えて、欧州金融危機などの影響で株価が再び低迷しているため、消費が伸びず、長期的な需要不足に陥る可能性があると、議長は深刻に考えているというのだ。

 また、議長は不況対策の負担が金融に過大にかかることは金融政策を歪める懸念があるとし、議会が今後も財政出動のための歳出増加を認めるように訴えているようである。

 欧州銀行監督委員会のストレステストの結果は、不合格は中小7行だけで、資本不足は35億ユーロ(約3900億円)に過ぎなかった。しかし、ギリシャなど財政赤字国のデフォールト(財政破綻)やリスケジュール(返済条件の緩和)の可能性を想定しないなど、査定基準の甘さが一部の専門家やマスコミから指摘され、金融不安がくすぶり続けると見られる。

 欧米の金融危機にピリオドを打つためには、かつて日本で行ったのと同様に、厳格なストレステストの下に金融機関の不良債権処理を徹底し、資金不足を補うために充分な公的資金を投入するほかない。不良債権処理を怠ったり長期化させれば、これまた日本の「失われた20年」と同様に、不況を長引かせるだけである。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion080:100731〕