「福島県民健康管理調査」の結果について

著者: 田中一郎 : ちょぼちょぼ市民/原子力資料情報室会員
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(2013年6月5日付「福島県民健康管理調査検討委員会」資料)

1.2011年度,2012年度の甲状腺検査結果概要

検査対象の子どもの数 約37万人

一次検査終了子ども数 約18万人

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年度            2011年度     2012年度     合 計     前回公表

一次検査結果確定者①  40,302   134,074   174,376

B・C判定        ②    205      935       1,140

(②/①)           (0.5%)     (0.7%)    (0.6%)

二次検査実施者 ③      160      223      383

悪性(疑い含む) ④       12       16       28     10

(④/③)           (7.5%)     (7.2%)    (7.3%)

うち確定               7        5       12      3

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2.コメント

(1)子ども甲状腺ガン急増:恐ろしいことが起きている?

検査終了はまだ半分(しかも初期被曝懸念が大きいいわき市がほとんど未了)

前回公表時の悪性は 3人,疑いは 7人 計10人

今回は 悪性は12人,疑いは16人 計28人

一次検査結果確定者の約0.6%が二次検査を受け,そのうちの約7%が悪性

ここから,今後確認するであろう悪性の子ども甲状腺ガン(疑い含む)を推定すると

二次検査未了の子ども約757人×7%=53人

一次検査未了の子ども約18万人×0.6%×7%=76人

今回までの確認28人との合計で,2013年5月までに約156人の子どもが悪性甲状腺ガンと推定される (76人×37万人/18万人=156人)

更に,時間の経過とともに発見数は増大し,その増大速度も増加の可能性

(2)この数字は福島県の子ども達だけの数字である

福島県の大人,福島県以外の都道府県の大人・子供・妊婦(胎児)を入れると更に数字は大きくなっていく(推定で156人×5=780人)

上記は甲状腺ガンだけの数字だが,甲状腺機能障害が無視されている

何故,福島県以外の都道府県でも甲状腺のエコー検査をしないのか

何故,山下俊一が甲状腺学会を通じて出した通知を回収・撤回しないのか 2

(3)政府・福島県・「福島県民健康管理調査検討委員会」のマンネリ説明

まず最初に「放射線被曝とは関係がない」がアプリオリの大前提で来る=アホダラ教

では「何故過去に比べて増えたのか」への彼らの答え

・比較するものがないから「多発」と言えるかどうかは分からない

・大規模な調査は今までなかった

・スクリーニングで早く見つかった

・スクリーニングの機器類の性能が良くなって発見数が増えた

(岡山大学の疫学の専門家・津田敏秀教授が上記の見解を誤りであると指摘:増えていることは認めるべきである ⇒ 問題は「何故増えてきているか」 ⇒ 予防原則)

(4)過去の数字と比べると

子ども甲状腺ガンは非常にまれな病気

10歳以上だと,100万人あたり3~5人/年程度

10歳未満だと,100万人あたりほぼゼロ(1千万人に1~2人/年程度)

平均有病期間を極端に長い10年だとしても,今回の数字は非常に大きい(10倍以上)

(参考)有病率=発生率×平均有病期間

(5)非ガンリスクに注目し警戒せよ

放射線被曝,特に恒常的な低線量内部被曝は,ガン・白血病や流産・死産だけでなく,人間に遺伝的障害を含む様々な健康障害をもたらす可能性が高い

<健康障害の事例:これがすべてではない>

極度の慢性疲労・倦怠感(いわゆる「ぶらぶら病」),各種臓器不全,消化器系疾患,免疫力低下・ホルモン異常,病弱化・虚弱体質,循環器系疾患・心臓病と突然死,神経系疾患,呼吸器疾患・ぜんそく,糖尿病,白内障,脳障害・知能低下,膀胱炎,生殖異常・遺伝病・奇形児,短寿命化他

3.提言:なすべきこと

(1)「福島県民健康管理調査」の抜本改革

福島県以外の都道府県でも実施

検査すべきは甲状腺ガンだけではない

(甲状腺エコー,尿検査,血液検査(染色体異常・エピジェネ異常他),心電図,

WBC検査,バイオアッセイ(検便・脱歯・髪の毛他:ストロンチウム,α核種)他)

全国でワンストップで全部やる=体制づくり

各検査の内容充実(甲状腺検査はスクリーニングではなく,いきなり本検査でいい)

検査頻度を増やす(受検者の状況に応じて3~12か月に1度)

検査結果の本人還元の徹底と検査結果やカルテを含む全記録類の永久保存

セカンド・オピニオンの利用充実とその活用

健康保険対象+補助金で受験者は無料化 ⇒ 東京電力負担 3

各検査について比較可能とするための西日本や北海道での疫学的大調査の実施

体制の抜本改革(政府が前面に出よ,「福島県民健康管理調査検討委員会」のメンバーの更なる刷新,医療関係者・団体の救国的一致団結,財政サポート他)

(2)放射線被曝の未然予防

まず避難,除染するにしてもまず一時避難

放射線管理区域指定基準(5.2mSv/年以上)は全員避難

1mSv~5.2mSvは避難の権利

子どもは集団疎開,大人も子供も「コミュニティごとの移転」

汚染地域に残る人にも「無用の被曝回避」のガイダンス徹底

飲食品の検査体制の抜本改善と,規制値の更なる厳格化,放射性セシウム以外核種

政府が前面に出よ:「原子力事故による子ども・被災者支援法」他

自然環境モニタリングの拡充(野生生物の変化をつかまえよ)

(3) 賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)

賠償・補償・再建支援が全く不十分で出鱈目=21世紀最大の人権侵害事件

原発震災被害者の賠償・補償請求権を民法上の時効の除外とせよ(特別立法必要)

賠償・補償・再建支援がきちんとならないと被害者はいつまでも救われない

① 全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

② 全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

③ 上記(2)再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

④ 2011年3月11日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる「遅延損害金」と同利率の「遅延損害金」が被害者に支払われること

⑤ 悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

⑥ (+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・事故責任者が万全にフォローすること

4.参考資料

(1)放射性セシウムの汚染されたスリッパの写真(警戒区域20km圏内)

(村松志門さんの写真アルバム:

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=465696666850180&set=a.289647771121738.70465.100002295539167&type=1&theater )

(2)福島県白河市で41,967μSv/時(6月2日16時50分)観測(ゆうなのブログ http://ameblo.jp/yuuna7777777/entry-11543322973.html )

以 上(異 常)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2278:130608〕