「私たちの目の前の子供たち以上に団結を大切にしよう」 キューバ革命65周年でラウル・カストロ前議長が演説

 キューバ共和国は今年1月1日、革命65周年を迎えた。これを記念して、この日、同国のサンティアゴ・デ・クーバでラウル・カストロ前国家評議会議長(国家元首)兼閣僚評議会議長(首相)=フィデル・カストロ氏の弟=が演説を行った。以下は2日付のグランマ紙に載った全文の日本語訳である。訳者はラテンアメリカ現代史研究者の新藤通弘氏で、中見出しも同氏による。
 前議長の演説について、新藤氏は「現在の困難な状況を切々と訴えている」と述べているが、そこでは、現在のキューバの現況が率直に語られており、その中で、前議長は国民に対し「革命は危険に満ちた困難な事業」として、「団結こそ、私たちの主要な戦略的武器」「前進するためには革命的堅忍不抜の意志を持て」と呼びかけている。

(革命は危険に満ちた困難な事業)
 同胞の皆さん、
 社会主義革命の勝利から 65 周年を迎えました。多くが、挑戦と課題であり、それらに、 私たちは、ここに至るまで直面しなければなりませんでした。しかし、困難の中にあっても、革命の事業とその社会的成果は、その追求する価値があり、それを裏付けるものでし た。フィデルにとって、サンティアゴ・デ・クーバは、この歴史的な記念式典において、特に ここ、彼の不滅の遺骨を大切にする英雄的都市サンティアゴ・デ・クーバにおいて、また、 祖国の独立を達成し、維持するという崇高な目的のために倒れたすべての人々にとって、 この街は、キューバ人について、最初に考えるところです。 フィデルが 1959 年 1 月 1 日、この広場にその名を刻む「祖国の父」カルロス・マヌエ ル・デ・セスペデスによって 1868 年 10 月 10 日に開始された、キューバに存在した唯一 の革命の勝利を宣言した同じ場所に、私たちは集まっています。

 歴史の逆説によれば、当時誕生したばかりのヤンキー帝国は、1899 年 1 月 1 日にキュー バの軍事占領を完了しました。したがって、キューバに対する完全支配は、ちょうど 60 年間続いたことになります。 当時の占領軍の最も恥ずべき非道な行為の一つは、カリクスト・ガルシア少将が指揮する 解放軍の軍隊の入城を阻止したことです。カリクスト・ガルシア少将の行動がなければ、 無能な侵略者で、あらゆる点で傲慢なスペイン人は、打ち破られることはなかったでしょ う。だからこそ、フィデルは、サンティアゴの城門にいたとき、ラジオ・レベルデでの演 説でこう言ったのです。「今回、マンビサ独立解放軍は、サンティアゴ・デ・クーバに入場するだろう…95 年前 の歴史は、繰り返されないだろう」と。

 私は、1959年1月1日の忘れられない夜を覚えています。多くの人が知っているように、 最高司令官の決定により、私は数時間前にサンティアゴに到着し、海軍の主力部隊に加え、 この街にいた約 5,000 人のモンカダ兵舎の守備隊の降伏を確実なものにするという任務に ついていました。また、この広場で集まった群衆の一人でもありました。
 フィデルは、私を見つけると、私に壇上に上がってその場にいた人々に話すように命じま した。私は、ほんの短い言葉を述べただけで、その言葉は残されていませんが、それは重 要なことではありません。重要なのは、フィデルの言葉で、その時、私たちにこう警告し ました。「革命は、今始まる。革命は簡単なことではなく、革命は危険に満ちた困難な事 業となるだろう」。その 8 日後、首都ハバナに凱旋したとき、彼はこう主張しました。 「喜びは、ものすごく大きい。しかし、依然としてやるべきことが沢山ある。これから先、 すべてが簡単になる、恐らくこれから先すべてはより簡単になる、と錯覚しないようにし よう」と。

 成功を過大評価せず、より困難な選択肢に直面する準備をしなさいというのが、彼の初期 の警告であり、その正しさは、事実によって証明されました。私たちが歩んできた道は、 決して容易なものではありませんでした。敵の恒常的で凶悪な攻撃に直面しなければなり ませんでした。敵は、軍事侵攻、テロリズム、世界の圧倒的多数の国々から非難されてい る冷酷で残酷な封鎖にさえ訴えました。しかし、敵は、私たちの革命を破壊し、すべての 人に平等な機会を与え、公正で人道的な社会を築くことは可能であるという、他国民への 刺激的な模範を消し去ろうとしましたが、失敗したのです。
 米国政府の恒常的な敵意と封鎖政策は、わが国経済の困難の主な原因です。たとえ敵がそ れを隠すために何百万ドルもの資金と多大な労力を費やしたとしても、この現実を疑わな いでください。利益のため、あるいは単に奉仕の精神からであれ、自分自身の祖国に反対 して行動する人々が、敵を支えています。また、敵の嘘に惑わされ、日々の苦難に疲れて、 無意識のうちに敵に踊らされている者もいます。この最後の人々に対しては、私たちは、 忍耐を失ってはなりません。彼らの話を聞き、私たちの味方である、真実という強力な武 器で彼らを納得させるまで説明しなければなりません。

 これは決して、私たちが、私たちの欠点や過ちを否定することではありません。この 65 年間、革命の指導部は、その透明性と自己批判精神によって特徴づけられ、いかなる誤り も国民と話し合い、共に取り組んでこそ、それらを根絶することができるということを、 自覚してきました。 絶え間ない侵略にさらされている、貧しい国で社会主義を建設するという未知の道におい て、私たちは、独自の方法を創造することを余儀なくされてきました。これは、キューバ の革命過程が、常に計り知れない創造力によって特徴づけられてきたことの証左です。 今日、私たちは健全な誇りをもって、外部からの侵略も、自然からの打撃も、私たち自身 の過ちも、この 65 周年への到達を妨げなかったと言うことができます。私たちはここま で到達し、これからは、ここから出発するのです!(拍手)。

 このようなことが可能になったのは、第一に、私たちの英雄的な国民の、実証された抵抗 力と自信のおかげであり、キューバ革命の最高司令官フィデル・カストロ・ルスの賢明な 指導力のおかげであり、国民が指導者に託した信頼の立派な継承者となった党の存在のお かげであり、国民の団結のおかげです。 ディアス=カネル同志は、先ほど、この 65 年間にキューバ人が生きた叙事詩を振り返る 中で、この歴史に言及しました。この叙事詩を、今日のような日に真の勝利が達成される まで、モンカダ、グランマ、シエラや平原での闘争といった困難で忘れがたい瞬間にまで 辿りました。

(困難の克服には、団結が必要)
 そして、困難が大きければ大きいほど、危険が大きければ大きいほど、より要求も規律も 団結も要求されます。いくつかの代償を払って達成された団結ではなく、フィデルが 2008 年 1 月 22 日に非常に適切に定義した原則に基づく団結です。引用します。「団結 は、議論と検討を通じて到達した闘争、リスク、犠牲、目的、理念、概念、戦略を共有す ることを意味する。団結とは、併合主義者、売国主義者、腐敗した人々に対する共通の戦 いを意味する。これらの者は、革命主義者とは関係ないのです」。そして、中心的な考えをつけ加えました。「戦術的基準の巨大な海の中で、戦略路線を解消し、存在しない状況 を想像することは避けなければならない」と。
 私たちの団結は、このようなものです。これは、魔法によってもたらされたものではなく、 私たちが忍耐強く、レンガを積み重ねるように一緒に築いてきたものです。キューバ革命 には、不正と抑圧に立ち向かい、国民の利益のために働き、彼らの成果を守るという唯一 の条件とともに、あらゆる誠実な愛国者がいました。 このような行動と思想の鍛錬の中で、わが党は、権威主義や押しつけから無縁で、さまざ まな基準に耳を傾け、議論し、事業に参加する意思のあるすべての人々に参加を許しなが ら、鍛え上げられたのです。謙虚さ、正直さ、真実への固執、忠誠心、献身が鍵でした。 私たちの抵抗と勝利の能力は、社会主義とその事業、団結と革命的理念に基づいています (拍手)。

 団結は、私たちの主要な戦略的武器です。この小さな島があらゆる挑戦において勝利を収 めることを可能にしてきました。団結は、人類こそ祖国である、というマルティの格言に 従い、私たち国民の国際主義的使命と、世界の他の土地における彼らの功績を支えています。私たちの目の前の子供たち以上に、団結を大切にしましょう!私は、そうなることを 信じて疑いません。戦闘的な若者が、それを保証してくれると確信しています。 党、政府、大衆組織、全人民、そしてその一部である革命軍と内務省の戦士たちによって 形成される団結は、組織的な嘘の使用からテロリズムに至るまで、敵のあらゆる破壊計画 を再び粉砕する盾となります。
 今日、私は、キューバ革命が 65 年の歴史を経て、弱体化するどころか、ますます強くなっていることを、満足をもって言うことができます(拍手)。すでに10年前の今日のような日に、まさにこの場所で述べましたように、だれと 約束するのでもなく、国民と約束するだけです(拍手)。

(革命的堅忍不抜の意志をもとう)
 同志の皆さん:
 私は、今日、わが党と政府、そしてわが社会の他の組織や機関において、最高位の地位か ら戦闘の最前線にいる何万人もの基礎組織の指導者に至るまで、指導的責任を担っている 人々に対する信頼を再確認することで、歴史的世代の感情を表現していることを知ってい ます。非常に困難な状況の中で、彼らの大部分は、現在の困難を克服し、人民とともに前進するために必要な革命的堅忍不抜の意志を、行動で示してきました。 能力不足、訓練不足、あるいは単に疲れているなどの理由で、今求められている任務に耐 えられない人は、その任務を引き受ける他の同志に席を譲らなければなりません。
 私たちのすべての幹部に、毎日、信頼と同胞の模範的な支援を得るためには、何をしなけ ればならないかを考えるように、また、多くの必要なことがある中においても、無知にも 勝利至上主義にならず、官僚的な対応や日常的で無神経な表現を避け、空から何かが降っ てくると夢見ることなく、今あるもので現実的な解決策を見出すように、呼びかけます。 同様に、日々の多くの仕事や課題の中で、克服するための時間を見つけることです。知識 は常に不可欠な武器であり、現在では、なおさらそうです。 現在の課題や困難が、大きなものであるならば、敵の悪意に対する最良の、そして反論の 余地のない防御を構成する革命の事業は、より大きなものです。その事業は、物質面、精 神面においてキューバの隅々で見られます。
 革命は、キューバとキューバ人に尊厳を与えました。政治がエリートの領分でなくなり、 すべての国民が自分たちの運命の主役となったとき、権力の概念そのものが新たな次元を 帯びました。だからこそ私たちは、貧者による貧者のためのこの革命を守り、前進させな ければならないのです。 諦めと敗北主義の行き着く先は、歴史が示しています。抵抗に満足しないでください。私 たちが常にそうしてきたように、戦うことによってこの難局を切り抜けようではありませ んか!(拍手)。

 バラグア、モンカダ、グランマ、ヒロンと同じ決意をもって、そして最高 司令官によって教えられた確固たる信念をもって難局を切り抜けましょう。 今日、このことは、より懸命に働くこと、そして何よりも、より良く働くことを意味しま す。これこそが、祖国の栄光の歴史に対する私たちの約束であり、戦没者への最高の敬意 なのです。
 つい数日前、マヌエル・マレーロ首相が、人民権力議会で明確に説明したように、複雑で 予断を許さない経済戦闘においては、現在の状況から脱出し、発展することができるよ うにする条件を作るためには、何らかの犠牲を含みますが、生産性、秩序、効率性を高める ことが不可欠です。 これらの困難への対応策を見出すことは、すべてのキューバ革命家の避けられない義務で す。このような重要な日にあたり、私は、祖国が今日要求しているこの努力に、私たちの 国民に、これまでと同じように、意識的かつ責任を持って参加するようお願いする次第で す。
 2010 年 8 月 1 日に国会で述べた確信を繰り返します。「私たちキューバの革命家にとっ て、困難は、私たちを夜も眠らせません。私たちの唯一の道は、楽観主義と勝利への揺る ぎない信念をもって戦いを続けることです」(拍手)。
 この最高の課題において、革命の忠実で確かな守護者である革命軍と内務省は、断固とし て参加します。昨日、反乱軍の勝利の腕から、自由で、美しく、力強く、無敵な新しい祖 国が生まれたのであれば、今日、私は、いかなる脅威や弱点に直面しても、その戦闘員が、 党とともに、革命の魂であり続ける義務を放棄することはないと断言することができます (拍手)。

 親愛なる同胞の皆さん、
 30 年前、キューバ革命戦士会が結成されたときのメッセージで、最高司令官は次のように述べた。「……革命に世代間の矛盾がないのは、ある単純な理由からである。それは、その 子息の間に権力に対する嫉妬も切望もないからだ」「私たち古参の闘士は誰も地位にしがみつくことはなく、祖国に奉仕したからといって、 自分たちが祖国の債権者であると考えることもなく、私たちに力が残っている限り、それ がどんなにささやかなものであっても、与えられた地位に就くだろう」
 こうした非常に重要な日に、言えることは、私たちの最大の誇りと満足は、喜び、憤り、 悲しみのどの瞬間にもフィデルと共にいたことです。また、団結の決定的な重要性を彼か ら学んだこと、敵の強力な障害や危険がどんなに大きく見えても、勝利への平静と自信を 失わないこと、あらゆる挫折からそれを勝利に変えるまで学び、力を引き出すことを学ん だことです。 彼の教えと模範に忠実に、私たちは、ここにいます!英雄的なサンティアゴ・デ・クーバ から、私たちは鐙(あぶみ)に足をかけ、山刀で突撃する準備を維持することを再確認し、 国民とともに、またもう一人の戦闘員として(拍手)、敵や私たち自身の過ちに対して、 独立の闘士、マンビの叫びが常にこの地に響き渡ることを確信しています。
 自由キューバ万歳!(「万歳!」の歓声)。

初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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