「美しい日本」と相模原の反人間的テロ行為

26日未明に相模原の障害者施設で起きた殺人事件は、世界各地で頻発している政治的テロ事件よりもさらに重大で深刻な反人間的なテロ行為である。重度障害者などは「いなくなればいい」と、その抹殺を意図したこの殺人事件は、弱者、障害者を含み込み、彼らを支えながら社会生活を成立させている人間社会に対するテロ行為である。これはもっとも悪質な反人間的なテロ行為である。

この事件を犯人の身勝手な思い込みといった個人的心理的動機に還元しては決してならない。日本の現代社会がこのような反人間的なテロ行為を生み出すようなものとしてある、そのことをこそわれわれは深刻に考えねばならない。

安倍政権という反人類史的な歴史修正主義者の政権が成立して以来、日本社会における反知性主義の瀰漫がいわれている。だがむしろ日本社会は安倍政権とともに道徳的に甚だしく劣化したのではないか。安倍と日本会議がいう「美しい日本」とは、ナチスの優生学的な民族主義的スローガンと同様な、経済的・政治的・民族的・社会的、そして身体的な強者のためのスローガンである。まさしく相模原の反人間的テロ行為の実行者は“beautiful Japan”をツイッターに書き込んであの犯行に及んだというではないか。

(16年7月27日)

初出:「子安宣邦のブログ・思想史の仕事場からのメッセージ」2016.07.27より許可を得て転載

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