「古関裕而生誕110周年記念・あなたが選ぶ古関メロディーベスト30」(福島民報社主催 2019年12月10日~2020年2月7日実施)は、古関裕而の長男正裕氏、日本コロンビアプロデューサー、古関裕而記念館館長が監修した110曲についての投票で、31位以下の曲目と投票数、および110曲の音源一覧は、以下のサイトに詳しい。https://koseki-melody.com/
この3月30日から始まった、NHKの朝ドラ「エール」のモデルは、古関裕而と喧伝されて久しいが、私は見たことがない。番組の紹介のコーナーhttps://www.nhk.or.jp/yell/、 では、コロナ禍の影響により6月27日までの放送で、ひとまず中止するとのお知らせが出ている。放送分は、各週のあらすじが記されているので、それを読んでいる。今後の放送分の進行で、どこあたりで休止するのかわからないが、たぶん、1940年前後以降は再開時の放映になるのだろうか。古関が、いわゆる「戦時歌謡」を数多く作曲した時代を、ドラマでは、どう描くのかを注視したいところである。いや、敗戦後もアメリカ占領軍の要請で、NHKは、新しい放送番組を次々と放送し始めたのである。あの「鐘の鳴る丘」も、GHQの検閲下において、CIE(民間情報教育局)の”積極的な指導”により成立し得たものだった。(『日本放送史(上) 日本放送協会編刊 1965年 746頁)
1947、8年ころ、私たち子どもの楽しみといえば、放課後、家の近くで、石けり、缶けり、チヨコレイト、スイライ・カンチョウ、ナワとび、ゴム段などの外遊びとお風呂屋さんの横丁にやってくる紙芝居だった。それでも、夕方になると、5時すぎから始まる「鐘の鳴る丘」のラジオを聞くために、大急ぎで家に戻ったものである。「緑の丘の赤い屋根、とんがり帽子の時計台、鐘が鳴りますキンコンカン、メイメイ小山羊も鳴いてます、風がそよそよ丘の上、黄色いお窓はおいらの家よ・・」のテーマ曲は、歌詞を覚えられない私が、今でも歌えるのだ。
「鐘の鳴る丘」は戦争浮浪児の物語なのだが、当時、空襲の焼け跡に建てた、店と六畳一間と台所というバラックに親子五人で住んでいた私などには、「緑の丘の赤い屋根、とんがり帽子の時計台」って、いったいどこにあるのだろう、まさに「あこがれ」にも思え、メルヘンの世界ではなかったか。この誰にも歌える「とんがり帽子」の作曲者が「古関裕而」だと知るのは、だいぶ後のことである。そもそも、このテーマ曲は「鐘の鳴る丘」だとばかり思っていたが、その曲名は「とんがり帽子」だったのである。そして、ハモンドオルガンのオープニングとともに、どこか重々しい語りで「そして、カガミシュウヘイ(加賀美修平)とリュウタ(隆太)は・・・」と物語が進んでゆくのに耳を傾けたが、詳細はすでに忘れている。あのナレーションの主が、巌金四郎であることも後で知る。1947年7月5日から放送は始まったが、そもそも、この番組の構想は、マッカーサーの招へいで日本にやってきたフラナガン神父の助言があったからという〈1950年12月29日まで790回)。こうした事柄を後で知るきっかけが何であったのか定かではないが、私が過去に口すさんだ歌、両親や7歳、14歳違いの兄二人がよく歌っていた歌のルーツ知りたくなったのではないか。私が、社会人になって間もない1965年~1970年ころで、いまもつぎのような本が手元に残っている。
①高橋磌一『流行歌でつづる日本現代史』音楽評論社 1966年10月(第4版)
②朝日新聞社編『東京のうた その心をもとめて』朝日新聞社 1968年8月
③古茂田信男ほか著『日本流行歌史』社会思想社 1970年9月
さらにその後、私自身が、短歌と天皇制について、戦中・戦後の歌人たちと天皇制との関係について、調べたり書いたりしている中で、戦中・戦後の表現者の戦争責任について実証的に書き続けている櫻本富雄さんの仕事に出会い、その労作の一つがつぎの本だった。古関裕而に多くの頁が割かれていた〈180~197頁〉。
④『歌と戦争 みんな軍歌を歌っていた』アテネ書房 2005年3月(5月に第2版)
「古関裕而記念館」のホームページによれば、古関は、生涯、5000曲以上もの曲を残している。このホームページの「作曲一覧」では、網羅的ではないらしいが、曲目・作詞家・歌手別に閲覧することができる。
⑤古関裕而作曲一覧
https://www.kosekiyuji-kinenkan.jp/person/composition/song-a.html
初出:「内野光子のブログ」2020.5.24より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/05/post-b98ede.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9779:200525〕