「除染」から「被曝量自己管理」へ(許されない政府の原発事故被害者対策)

著者: 田中一郎 たなかいちろう : ちょぼちょぼ市民/原子力資料情報室会員
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別添PDFファイル4つ(添付できませんでした)は,昨今の国による「直轄除

染」と,政府や行政の原発事故被害者への対応に関する記事を若干集めたものです。

以前より申し上げている通り,福島第1原発事故後の政府の被害者への対応はあまり

にひどく,看過できない重大な人権侵害,かつ国家的犯罪が展開していると言ってい

いと思いますが,下記は,その具体的な様子をマスコミ報道に見るものです。

かつて日本は水俣病において,被害者の切捨てと加害者企業チッソの救済という,

人倫にもとる行為を繰り返しましたが,それに対する反省もないままに,今度は福島

第1原発事故後における対応において,再び同じような被害者切り捨てと多くの悲劇

を巨大なスケールで繰り返そうとしているようです。

脱原発とは,脱被曝であり,また,「被害者完全救済」を求めるものでなくてはな

りません。日本の市民運動は,福島第1原発事故後の脱原発運動の第二ステージに突

入し,賠償・補償と「原子力事故による子ども・被災者支援法」の実施を含む「被害

者完全救済」に向けて,全力で取り組む必要性が高まっています。

なお,賠償・補償と避難区域の再編については下記の第一東京弁護士会のレポート

を,また,それらを含む全般的な情勢については,下記サイトをご参考にして下さ

い。

*避難区域等の再編について(第一東京弁護士会:2013年3月19日)

http://www.ichiben.or.jp/shinsai/data/hinankuiki.pdf#search=’%E8%AD%A6%E6%

88%92%E5%8C%BA%E5%9F%9F%E5%86%8D%E7%B7%A8+%E8%B3%A0%E5%84%9F%E5%9F%BA%E6%BA%

96′

*福島 フクシマ FUKUSHIMA 【論考】区域再編、中間貯蔵施設、賠償問

題をめぐって~フクシマの現局面~

http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-59.html

(このサイトの文章の仔細までは目を通せていませんので,ご覧になる時は批判的な

観点をお持ちになってご覧ください)

<別添PDFファイル:添付できませんでしたので図書館等でご覧下さい>

(1)再除染応ぜず,被曝量自己管理せよ(朝日新聞 2013.6.29)

(2)福島・伊達の小国 「避難勧奨」解除から半年(朝日新聞 2013.6.24)

(3)福島・田村 「解除準備区域」除染完了(朝日新聞 2013.6.24他)

(4)高市氏発言,原発事故被害の全調査こそ(柳田邦男:毎日新聞 2013.6.22)

(1)再除染応ぜず,被曝量自己管理せよ(朝日新聞 2013.6.29)

http://blog.goo.ne.jp/pe-chang/e/cd81e5b8c4b14ede45043eb062c489d1

(記事を抜粋してみると)

朝日新聞が入手した録音記録によると、住民から「目標値まで国が除染すると言って

いた」と再除染の要望が相次いだが、政府側は現時点で再除染に応じず

説明会を主催した復興庁の責任者の秀田智彦統括官付参事官は取材に「無尽蔵に予算

があれば納得してもらうまで除染できるが、とてもやりきれない。希望者には線量計

で一人ひとり判断してもらうという提案が(政府側から)あった」と述べた。

除染で線量を下げて住民が帰る環境を整える従来の方針から、目標に届かなくても自

宅へ帰り被曝(ひばく)線量を自己管理して暮らすことを促す方向へ、政策転換が進

む可能性がある。

環境省は取材に対して説明会での同省の発言を否定した。録音記録があり、多くの住

民も証言していると伝えたが、明確な回答はなかった。

(以上,抜粋引用終わり)

できもせん除染を出来るかの如く言い,被害者住民には,政府が全力で除染すれ

ば,事故前と同じように故郷に安心して安全に居住できるようになるかのごとく幻想

をふりまいてきた政府,その嘘八百の化けの皮がはがれ始めている。放射性セシウム

134は半減期が2年だから,放っておいても2年たてば放射性セシウム134の量

は1/2になる。仮に福島第1原発事故で各地域に降下した放射性セシウム134と

137が半々だったと仮定すれば,2年後にはおよそ1/4の放射性セシウムは消え

てなくなるわけだ。しかし,政府が主導している除染活動は,その放射性セシウム1

34の減衰に,わずかばかりの放射能の低減をもたらしただけで,大半は「もとのも

くあみ」である。除染した場所も,しばらくすると,森から飛んできた放射能や,引

き続き福島第1原発から今も放出されている放射能で,除染した分が「おじゃん」に

なってしまう。まるでアリ地獄か積み木崩しのぐるぐる回りのような様相である。

こうなることは初めから分かっていた。分かっていて,被害者への賠償・補償を徹

底的に切り詰めるために,あるいは,被害者の移住や避難を断固として阻止し,放射

能汚染地域に引き続き定住させるために(愚かな自治体ともグルになって),あるい

は,除染を請け負うゼネコンなどの業者の事業利権を温存するために,あるいは,こ

れからの原子力推進・「原発過酷事故との共存」体制を確たるものにするための「放

射線安全神話」を定着させるために,あるいは役人達の事なかれ主義のために,住民

無視・軽視の政策をやめようとはしない。

無駄であることが分かり切っていた「除染」に巨額の財政資金が投入され,アリバ

イ行為が繰り返された。除染作業の出鱈目さ加減も繰り返し報道されたが,そもそも

除染は「住民のため」に行われたのではなく,関係者の歪んだ思惑から,別の目的を

持ってなされていたと見るべきだろう。こんな無駄なことは,さっさとやめて,被害

者住民を安全な場所へ一刻も早く移住・避難(一時的を含む)・疎開させる必要があ

る。貴重な財政資金は,出鱈目な「除染」にではなく,被害者への賠償・補償や「原

子力事故による子ども・被災者支援法」の具体化の中で使われるべきである。

(2)福島・伊達の小国 「避難勧奨」解除から半年(朝日新聞 2013.6.24)

http://ameblo.jp/higashi-hiroshimashi/entry-11561574198.html

警戒区域から遅れること1か月以上たってから,計画的避難区域が指定され,更に

それに遅れること2か月余りで特定避難勧奨地点が指定された。この避難の地域や地

点の指定の経緯を見ても,あるいは,つい目と鼻の先の近所が指定されたりされな

かったりと,地域に分断と対立を持ち込んだ「地点」という指定の仕方を見ても,こ

れが住民のためのものでないことは明らかだった。

しかし今度は,その解除をめぐって,住民置き去りの許し難い「放射線被曝押し付

け」が始まろうとしている。政府の除染は終わったというが,空間線量は0.5mSv

程度までしか下がらず,危険な状態は不変である。地区内の小学校では新入児童がゼ

ロとなったり,除染廃棄物の仮置き場が決まらず庭に放置したままであったりしてい

て,とても安心して子育てや生活ができる環境にない。地域の産業である稲作も,ほ

とんどの人は始めようとはしない。

しかし国は,東京電力の損害賠償負担を少しでも減らしたいがためか,住民の声も

聞かず,住民説明会も開催せずのまま,避難勧奨地点を昨年12月に解除し,賠償金は

打ち切りとなった。伊達市もまた,住民を守るのではなく,避難に伴って措置してい

た住民向けの施策を少しずつ打ち切り始めている。行政の態度は,国も自治体も,

少々の放射線被曝など,気にしないで早く帰ってこい,というものだ。住民の不安は

消えることはなく,多くの家庭では家族は帰ってこない。こんな危ない放射能汚染地

域で,少なくとも子供を育てることはできないと考える人が多いからだ。

(3)福島・田村 「解除準備区域」除染完了(朝日新聞 2013.6.24他)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130624-00000012-asahi-soci

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130624-OYT1T00250.

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避難指示解除準備区域に指定されていた田村市の都路(みやこじ)地区について,

政府は除染が完了したことを明らかにした。しかし,ここでも線量値は下がらぬま

ま,平均で0.32~0.5マイクロシーベルト/時になり,場所によってはもっと高い値

のところもあるだろう。住民からは再除染の要請が出ているが,政府は拒否,再除染

に応じる気配はない。

そんな中,冨塚宥景市長は,避難指示区域の解除について,マスコミ取材に答え,

「農業に加え,宿泊施設などの営業を再開したいという市民もいる。住民の声を聞く

ことが前提だが,反対がなければ,国に早めの解除を求めたい」「(精神的損害賠償

については)いつまでと市が決めることはできないが,市民の要望は届けることはで

きる」などと答えている。

本当にこんな態度でいいのか。もう少し,放射線被曝の危険性や,福島第1原発の

再びの事故のことを考えてみたらどうなのか。あるいは住民被害の賠償・補償をもっ

と真剣に住民と一体となって取り組む必要があるのではないのか。田村市のこの地区

は,福島第1原発の真西・約20kmあたりにある。再び福島第1原発に大事故が起

きれば,この辺一帯はとんでもないことになりかねない危険ゾーンである。形だけの

除染を経て,つべこべ言わずに帰れ,というこうした行政の態度は,住民には受入れ

がたいものがあるに違いない。

国は,少なくとも1mSvという(法定された)「除染目標」が完璧に達成される

までの間は,住民の避難・移住・疎開に対して万全の支援を行い,住民の生活や経営

がつつがなく継続できるよう,いかほどの費用がかかろうがかかるまいが,手当てし

なければならないはずである。愚かな除染などやめて,避難・移住・疎開と住民生活

再建に,その費用を回せ。

(4)高市氏発言,原発事故被害の全調査こそ(柳田邦男:毎日新聞 2013.6.22)

柳田邦男の原発を巡る言動は,下記の米スリーマイル島原発事故を扱った『恐怖の

2時間18分』という著書を,もうかれこれ25年くらい前に読んで以降,何度とな

くお目にかかったが,これまで一度として納得して読み終えたことはなかった。常

に,何か物足りない,大切な何かが言及されていない,肝心なことが楽観視されてい

る,脇道の言って見ればどうでもいいようなことが,丁寧過ぎるくらいに説明されて

いる,そんな印象だ。

10年ほど前には,同氏は被害者救済の正念場に差し掛かっていた水俣病問題につ

いても,ある検討チームのメンバーとなって報告書を書いていたが,それも被害者完

全救済からは程遠い,中途半端で政府の横暴に対して妥協的であるように見えた。

しかし,この記事は違う。私は同氏が書いたもので,初めて他の人にも一読を勧め

ることができる文章を発見した,という印象を強くしている。中でも,水俣病での同

氏の経験から,早く被害者の全調査こそを政府が行って,福島第1原発事故で涙する

人が出ることのないように,万全の対策を打って行かねばならないとする方向での発

言は傾聴に値する。

(併せて,未だ一度もなされたことのない水俣病の被害実態調査の実施も,併せて強

調していただきたいものだ)

*柳田邦男著『恐怖の2時間18分』(文春文庫)

http://www.amazon.co.jp/%E6%81%90%E6%80%96%E3%81%AE%EF%BC%92%E6%99%82%E9%96%

93%EF%BC%91%EF%BC%98%E5%88%86-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%9F%B3

%E7%94%B0-%E9%82%A6%E7%94%B7/dp/416724005X

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1357:130703〕