「集団的自衛権」容認の法案を危惧

安倍晋三内閣は5月15日、集団的自衛権の行使を前提にした武力攻撃事態法改正案、国際平和支援法案案など11法案を国会に提出した。分野別にみると、集団的自衛権の容認、後方支援の拡大、国連平和維持活動(PKO)の武器使用権限・任務拡大の3つに分けられる。

米国の支援を拡大させる狙い

安保政権の法制大転換の背景について、毎日新聞15日付社説は「従来の日米安保体制は『片務的』である。集団的自衛権の行使により、米国が攻撃された場合に自衛隊が血を流す覚悟を示して『双務性』を高めなければ、いざという時に米国は日本を守ってくれないかもしれないという焦燥感。尖閣諸島をめぐって日中に不測の事態があった場合、米国に日本防衛義務を果たさせるため、集団的自衛権の行使や後方支援の拡大をする必要があるという事情が、今回の法制の大きな背景にあるのではないか」と指摘している。この点について、柳沢協二・元官房副長官も毎日紙上で「米国と一緒に行動することで『大国としての地位』を維持したいという政府の思惑がある。中国が軍事的、経済的に力を増していく中で、米国支援を拡大する見返りとして明言してもらい、虎の威を借りる形で日本の地位を守りたいということだ」とコメントしていた。

朝日新聞社説は「一連の法整備を前提とした『日米防衛協力のための指針』の改定を、ケリー米国務長官は『歴史的転換』と評価した。米軍などに弾薬を提供し、航空機に給油する。『後方支援』とはいっても、実態は軍需補給の『兵站』だ。米軍などと戦う相手から見れば、自衛隊は攻撃すべき対象となる」と危惧している。東京新聞も「専守防衛の原点に戻れ」と、社説で主張した。

読売、産経は安倍政権にベッタリ

これに対し、読売は「安保法案、的確で迅速な対応を」との社説を掲げ、産経社説も「安倍首相の認識は極めて妥当」と賛意を示した。日経社説は「具体例に基づく法制論議を」と慎重審議を求めていたが、読売・産経の安倍政権ベッタリの主張に驚かされた。

野党各党は11法案の1本ずつを再提出するよう要求、慎重審議を求めた。審議は入り口で対立、折り合いがついていない。

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