「離島という言葉は島差別の用語ではないか」/『新版 日本の島事典』 が昨年12月に刊行されました

コロナ禍の中で3年間かかりきりで執筆・編纂していた『新版 日本の島事典』

が昨年12月に刊行されました。

この事典は日本という国を見る上で、右から左までさまざまな角度から多様な評

価が浴びせられると思いますが、解説文を担当した私の思いから特徴を言うと「島の本でもっとも“離島”“本土”という言葉が少ない本」ということになります。

すなわち、島の外から見たり、島に来てほしいという発信ではなく、島の歴史と民俗、島に暮らす人間そのものの記録を中心にしたということです。

島の人間にとって自分の島は決して“離れ島”や“外地”ではありません。

生活の中心そのものです。

そもそも離島という言葉は離島振興法成立以後に一般化した新しい言葉なのです。

「離島という言葉は島差別の用語ではないか」と言った人もいます。

日本政府は「国境離島」を指定し、岩にも形式的な島名をつけ、領海を確保しようとしています。この事典では’その実態も見ることができます。

事典で、国土地理院の地図から数え上げた日本の島嶼数を「1万5,528島」としたら国は敏感に反応し、今年になって「1万4,125島」という数字を発表しました。(島嶼の定義が微妙に異なるのでこの程度の数の差は許容範囲です)これまで30数年間も「6,852島」としてきた公式数値を変更したのです。

この事典は単に島嶼学分野に留まらず、国の在り方を議論する際にも貴重な資料

になると考えていますので、ご注目ください。

全国の図書館などに入れて頂き、予想以上の高い評価を頂いています。

『新版 日本の島事典』共同監修・編著者 渡辺幸重(三交社、税込7万7千円)