政府のエネルギー政策・環境会議は9月14日、「30年代に原発稼動ゼロ」との戦略目標を決定。さらに①40年運転制限を厳格に適用②原子力規制委員会の安全確認を得た原発のみ再稼動③原発の新増設はしない――の3原則を掲げた。
民意によって動いた画期的戦略
朝日新聞15日付朝刊で編集委員が「日本のエネルギー政策が初めて民意によって動いた。目標を達成するには多くの課題があるが、世界3位の経済大国日本の脱原発宣言は世界に強いメッセージを与える」と、脱原発指針を評価していた。当初逡巡していた野田佳彦首相が世論の動向もにらんで、画期的戦略を提示した意義は大きい。
全ての国民の力を結集せよ
東京新聞15日付社説は「新戦略の推進には『全ての国民の力を結集することが不可欠である』と政府はうたう。これまでエネルギー政策、特に原子力政策は、『原子力ムラ』と
呼ばれる狭い世界の中で、人知れず決められていくきらいがあった。新戦略に曖昧さが残るのも、経済への影響を恐れる産業界や、日本の原子力技術の衰退が、安全保障に影響を及ぼすことなどを憂慮する米国への過剰な配慮があるからだ。だがこれからは、新戦略を具体化するにも、市民参加の仕組みが何より大切になるだろう。原発ゼロを達成するということは、社会と暮らしをさらに変えるということだことだ」と述べていた。
核燃料サイクル維持に矛盾残るが…
政府内の調整は難航した模様で、「30年代に原発ゼロ」を打ち出したものの、具体的戦略の矛盾点を指摘せざるを得ない。その最たるものが、核燃料サイクルの継続を容認したことだ。「原発ゼロ」目標とは明らかに矛盾しており、きっぱりプルニウム再処理工場や高速増殖炉「もんじゅ」稼動打ち切りの方針を示さないと辻ツマが合わない。現在50基の原発で稼動しているのは大飯原発の2基だけ。将来的に廃炉にどう取り組むかを、今後の政策目標にすべきである。青森県などの反発、海外の批判を緩和する狙いがあったと推察されるが、原発ゼロが進めば核燃料サイクルを続ける意味がないことは明らかだ。
在京6紙の論調は真っ二つ
朝日・毎日・東京3紙の論調は「原発ゼロへ国民全体が覚悟を持とう」と政府の戦略を前向きに捉えていたが、読売・産経・日経3紙の論調は「原発ゼロは戦略に値しない。具体策なく矛盾点も多い。選挙対策だ」「原発ゼロ対策は即時撤回して『25%超』に。世界で孤立し責任を果たせぬ。日本を沈没させる空論だ」「国益を損なう『原発ゼロ』には異議がある。日米同盟に影を落としかねず、国際関係への思慮を欠く」などと、政府を真っ向から批判している。特に読売社説は「日本が核燃料の再処理を委託している英仏両国も、日本企業が持つ原発技術に期待する米国も、強い懸念を示している。米国は日米原子力協定に基づく特別な権利として、日本に使用済み核燃料の再処理を認めている。『原発ゼロ』を理由に、日本は再処理の権利を失いかねない。米国が、アジアにおける核安全保障政策のパートナーと位置づける日本の地位低下も心配だ」と批判していた
いずれにせよ、世界を震撼させた「3・11福島原発事故」当事国として、世界に原発の恐怖を訴え、クリーンエネルギー開発の先頭に立ってほしいと思う。
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