米国の『Science(サイエンス)』誌と並び、科学誌で最もインパクトファクターが高く、わが国では論文が掲載されただけでも新聞紙面を飾ることがよくある『Nature(ネイチャー)』誌が、その最新号(オンライン版、2012年3月15日、http://www.nature.com/nature/journal/v483/n7389/full/483246a.html)において、編集部の声明「最終裁決:東北大学の長引く研究不正論争は解決されなければならない」を公表し、井上総長の研究不正問題、また二重投稿問題への東北大学の対応を厳しく批判しました。
ネーチャー誌はここで、井上総長の論文不正疑惑や、最近の二重投稿問題での東北大学の対応を、次のように厳しく批判しています。2007年春に始まる匿名投書(6通)の指摘に基づき、東北大学が設置した対応委員会(2007年の庄子委員会、2009年、2010年の飯島委員会)では不正疑惑が解決されず、2011年初に組織された有馬委員会と2011年のJST内部調査委員会(委員長:御園生誠東京大学名誉教授)の各報告でも、本質的な問題解決に至らず、5年もの期間が経過している。いずれの報告も、「井上論文の結果の再現性に対するより深刻な疑惑を調べなかった」、と断じ、その限界を厳しく指摘しています。また二重投稿問題で有馬委員会は第三者委員会を標榜したが、6編もの取り消しが出ているにもかかわらず、その裁定は懲戒を含まない「猛省」を求めるだけの「驚くべき軽さであった」と、委員会報告の公正・公平さに強い疑義を挟んでいます。学外では、留学生の研究不正で指導教授の辞任という事態も報じられていますし、また、本学では歯学研究科の助教の研究論文不正の処分(懲戒免職)と比べても、あまりにも浮世離れした裁定であったからでしょう。ネイチャー誌は本声明の末尾で、日本学術会議に必要な権限と再現実験を行う予算をつけるなどして、米国の研究公正局のような強い権限を与え、公平・公正な最終裁決を行うことを可能にすること、井上総長の研究不正問題をその最初の裁決対象にすること、を結論として提案しています。
なお、齋藤文良東北大学多元物質科学研究所教授(前同所長)とフォーラム世話人の大村泉同大学院経済学研究科教授は、3月16日付で、このネーチャー誌の声明を承けて、東北大学教育研究評議員に井上総長の即刻解任のための措置を講じることを要望する文書を送付しました。この文書も併せて公表します。
要望書(齋藤/大村)PDFの表示・印刷は右をクリック: 要望書(齋藤_大村).pdf
ダウンロードはここから
また、3月15日付の河北新報が報じているように、このネーチャー誌の批判に先立って、3月14日に、県政記者会で東北大学名誉教授の鈴木謙爾氏(同金属材料研究所元所長)、矢野雅文氏(電気通信研究所前所長)が連名で、東北大学教育研究評議員に対して、総長解任に向けた措置を講じることを要望する記者会見を開催されました。以下は、両名誉教授の要望書です。
要望書(鈴木/矢野)PDFの表示・印刷は右をクリック: 要望書(鈴木_矢野).pdf
東北大学名誉教授、鈴木謙爾金属材料研究所元所長と矢野雅文電気通信研究所前所長の記者会見がYouTubeにアップロードされました。ご紹介します。次のURLをクリックするとごらんになれます。
会見で記者から出た質問は、
1. 何故要望書を教育研究評議会に提出したのか?
2. 何故このタイミングで要望書を出すのか 井上総長は3月 末で退任だが
3. 今後の手続きはどうか
4. 何故改ざんが行われたのか
5. 有馬委員会の報告書についてどう思うか
6. 歯学研究科の助教は懲戒免職だが、井上総長はそうではない、どう思うか
などです。
初出:「井上総長の研究不正疑惑の解消を要望する会(フォーラム)」より許可を得て転載http://sites.google.com/site/httpwwwforumtohoku/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1873:120318〕