スカパーで何気なく映画を見ていたら、スタンリー・クレイマー監督作品『招かれざる客』を放映していた。スペンサー・トレイシーさんの遺作であり、それゆえ共演者のキャサリン・ヘップバーンさんは遂に見ることを拒否した作品だ。リベラルな新聞社主トレイシーさんの娘がシドニー・ボアチエさん扮する黒人青年と結婚すると宣言して、大いに狼狽するとのいう内容だ。しかもその黒人青年は世界的にも有名なお医者さんで、申し分のない分別のある立派な人物である。ゆえに益々狼狽してしまうところが滑稽に描かれる。ちなみに作品はアメリカ史上のベスト100フィルムの90何位かに入選しているはずだ。誰もが認める名画である。この作品は1967年の作品だからもう50年以上まえの作品だ。そのときには人種差別があったし、公民権運動も盛んであった。そしてベトナム戦争をしていた。ベトナム戦争時のアメリカ陸軍参謀総長であったウェストモーランド大将がベトナム人を人間とみなしていなかったのは有名な話だ。
そしてまたまたスカパーで『オックスフォードミステリ ルイス警部』を眺めていたらオックスフォード大学最後の女子大のパーティに出席していたジャーナリストが「わたしはレイシストではない」という記事を書いていた。これは2000年代の英国作品だ。
そして今回のアメリカでの白人警官による黒人故殺に端を発した全世界的な人種差別反対運動のうねりがある。
小生は、白人系外資企業に勤務した経験があるので人種差別の存在を全面的に肯定する。観光目的でゼニを落としてくれるお客さんだから愛想がいいのであって、一緒に仕事をする仲間としてみてもらえない。特にフランス人とイギリス人はその傾向が強かった。もちろん日本国民にもイヤな奴がいるのと同様にイギリス人やフランス人にもイイ奴は沢山いた。だが明らかに差別的な態度に出くわすことがしばしばあった。特にパリ駅で品のよさそうなご婦人にウソのバス乗り場を教えられたことは忘れ難い思い出だ。
白人系外資企業や欧州に留学していた人に聞くと人種差別的な扱いをされたことのない人の方が圧倒的に少ない。世界的に有名なロシア政治の研究者のS先生からも、当然人種差別されたよ、と聞いた。
そしていま思うことは、『招かれざる客』をベスト100フィルムに選定したことはある意味で願望、決してかなえられない理想だが我々は努力しているというアリバイ作りであり、『ルイス警部』の女性ジャーナリストの台詞は我々の中にはレイシストがちゃんといますよという宣言である。
翻って我々ニッポン人はどうもアジアの民ではなく、白人として扱ってもらいたい臭いプンプンである。だがそれはどうしてもかなわぬ夢である。だって相手は人種差別しますよと開き直っているのである。特に厄介なことは我が国の上層部にその傾向が強いことだ。それは嫌韓や嫌中と時として背中合わせのことがあり、本当は憂うべき危険な問題をはらんでいる。
かつて経済学者の森嶋通夫先生が「東アジア共同体」を提唱したときに、それを冷笑した経済アナリストの輩がいたが、口だけならなんだって言えるわな。
植木等さん流に言わしてもらおう、「みっともないからおよしなさい もっとでっかいこと なぜ出来ぬ」である。差別の種は数多あるが、どうやらヒト種って奴は優劣という概念がお好きらしい。
そんなことしていると本当にOn the Beachみたいなことになっちまうよ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9892:200630〕