【直前掲載】8.29(土) 青山雫「世界恐慌とパクス・アメリカーナへの移行」 オンライン・フォーラムのご案内

  • 主催 世界資本主義フォーラム
  • 日時 2020829日(土) 午後130分~4(ZOOM接続開始 1時)
  • ZOOMによるオンラインで行います。
  • 報告 青山雫
  • テーマ 世界恐慌とパクス・アメリカーナへの移行

※報告要旨は、この案内の最後に、掲載してあります。

アメリカは、第2次世界大戦後、世界資本主義のリーダーとなり、資本主義の戦後体制の中軸となって秩序を作り、またその発展を主導してきた。しかしそれはたんに、連合国としての主戦勝者としての地位によるのではない。やや逆説的だが、第2次世界大戦に帰結した世界大恐慌にその端緒が生じていた。

世界大恐慌は、アメリカ発の大恐慌が世界的に波及した。表層的にはそのように語ってもあながち間違いではないが、その実際の過程は錯綜を極めている。

第1次世界大戦後、アメリカ資本主義は、生産力においても、金を含む外貨準備の分厚さにおいても、資本主義世界の圧倒的首位に立つ。そこに空前絶後の恐慌が襲い、アメリカは、資本主義国中最も深刻な打撃を受ける。同時に、恐慌は、当時の世界資本主義中のもう一つの中心・イギリスの国際収支の脆弱性を介し、貿易、対外投資関連の収縮を通じて、世界的に波及した。それがまた二重三重に相互反射することで、未曽有の世界大恐慌にいたった。いわゆる「資本主義の自動回復力」が喪失し「自己崩壊」が顕現した。当時の通貨体制である、国際金本位制は完全に崩壊し、世界資本主義は分断と対立の時代に突入、第2次世界大戦を惹起したのである。

アメリカを基軸とする世界資本主義の再編成は、こうした世界大恐慌と第2次世界大戦という、2段構えに生じた、文字通りの体制的危機を経過した戦後の時点で推し進められたのである。「パックス・アメリカーナ」と総括される戦後世界資本主義秩序とは、この戦後世界資本主義の再編体制を集約して表現している。

今回の報告では、主として侘美「世界大恐慌」に依りつつ、世界大恐慌の原因・過程・帰結を大胆に圧縮して提示し、併せて世界大恐慌の分析の今日的な意義まで言及するところまで目指したい。そこには現代資本主義をめぐる主要なテーマがほとんどすべて包含されているからである。

  • 参考文献

宇野弘蔵「経済政策論」(弘文堂)、「恐慌論」(岩波文庫)

大内力「国家独占資本主義」(東京大学出版会)

吉富勝「アメリカの大恐慌」(日本評論社)

侘美光彦「世界大恐慌」(御茶ノ水書房)

河村哲二「パックスアメリカーナの形成―アメリカの「戦時経済」システムの分析」(東洋経済新報社)

林敏彦「大恐慌のアメリカ」(岩波新書)

M.フリードマン・A.シュウォルツ「大収縮」(日本経済新聞出版)

C.キンドルバーガー「大不況下の世界 1929-33」(岩波書店)

P.テミン「大恐慌の教訓」(東洋経済新報社)

B.Eichengreen 「Golden Fetters」(Oxford University Press, 1992)(金の足かせ)

B.バーナンキ「大恐慌論」(日本経済新聞出版)

 

  • 参加方法

どなたも参加できます。

参加申し込みは、829日午前10時まで、矢沢 yazawa@msg.biglobe.ne.jp宛に、メールで申し込んでください。

829日正午頃、(参加申し込みに使った)メールアドレス宛に「招待メール」を送ります。正午すぎても招待メールが届かなかったら、再度矢沢宛にメールください。

午後1時から「ミーティング」に入れます。午後130分開始です。

 *ZOOMは、パソコンを使用している方なら、だれでも使えます。こちらから送ったURLをクリックして、指示に従って進めば、接続できます。ZOOMをあらかじめインストールする必要は、ありません。ZOOM使用が初めての方は、矢沢まで連絡ください。接続の予行をします。

 

  • 参加費500円(あと払い) 

 

  • 問合せ・連絡先 矢沢 yazawa@msg.biglobe.ne. jp  携帯090-6035-4686

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  • 青山報告「世界恐慌とパクス・アメリカーナへの移行目次

0. 50年前を振り返って ワンスアポンナタイム

高度成長末期ながら、世界大恐慌を最後に、資本主義は安定成長を維持。

総需要管理政策によって、資本主義は、恐慌なき安定成長と完全雇用を達成できた。

サミュエルソンに代表される新古典派総合=アメリカケインジアンの「現代資本主義は自由放任を超えた混合経済体制なのだ」という見解が席巻。

 

1. 現代資本主義をめぐる、大内・岩田説の対抗

大内力:自動回復しない恐慌はない。大恐慌は長く深かったゆえ社会主義の対抗上、管理通貨制度による経済過程への国家の介入=恐慌回避体制への移行が必然となった

 

岩田弘:20世紀は総力戦の時代であり、そのための国家の経済過程介入による戦時動員体制が基本。ソ連社会主義もその亜種たる国家資本主義に過ぎない。大内説はケインズ商会の受け売りだ。コミュニズムへの変革の本流は、コミューン革命にこそある。

 

2. 大恐慌研究の系譜

宇野派主流では、ロシア革命以降=社会主義過渡期の観点からアメリカ資本主義分析や世界大恐慌は等閑視。岩田弘とはもう一つ別の異端派・玉野井芳郎のブルッキングス研究所資料の読解を端緒とする大恐慌研究が起動。吉富勝~侘美光彦~河村哲二の流れ。

 

3. 侘美説の独自性

世界資本主義の第一次世界大戦後の恐慌形態変化の観点。

before:恐慌を結節点とする景気循環が世界資本主義の新陳代謝的蓄積を媒介的に実現

after:アメリカ資本主義における独占体の強化による市場機構の硬直化とドル・ポンド国際通貨体制の脆弱性が、「深く・長い」世界大恐慌の原因であり、世界資本主義は自己崩壊に至る。大内「自動回復」説への根本的批判。

 

4. 大恐慌の過程

4-0  国家は破綻する 貨幣収支体としての国民経済と金本位制の基本動作

4-1  第一世界大戦の衝撃 アメリカは圧倒生産力実現と最大債権国になったが

4-2  戦後インフレと20年恐慌

4-3  前期好況

4-4  後期好況とニューヨーク株式バブル

4-5  ドル・ポンド体制の成立と動揺

4-6  アメリカの大恐慌

4-7  世界農業不況~農業恐慌

4-8  世界大恐慌への発展

4-9  国際金本位制の崩壊~ブロック経済への移行

4-10 1937年恐慌

 

5. 大恐慌な面々

Reds 社会主義の内面化 ケンブリッジファイブ=体制エリートのソ連スパイ化

ダグラス・マッカーサー 社会主義の内面化=米国内暴動を国軍司令官として鎮圧

ジョセフ・P・ケネディ J.F,ケネディの父親。東海岸の顔役。F.ルーズベルトのタニマチ。

ヒャルマル・シャハト ライヒスバンク総裁。世界最高のバンカーにしてナチの信奉者。経済界のハイデッガーか?

井上日召 血盟団事件首謀者 日召は昭和の「昭」。財閥の円売りドル買いを「売国奴」よわばり。経済学無知のトンデモ観念右翼

高橋是清 軍事ケインジアンの先駆者。「財政の生命線」を唱えて2・26事件で暗殺

石橋莞爾 大恐慌の突破口目指して満州事変のウソ

 

6. 大恐慌とブレトンウッズ体制

ドル基軸の国際通貨体制の再建。ドルのみ金兌換性維持しアジャスタブルペッグ制。

通貨投機誘発する国際資本移動の制限。

 

7. 現代の国際収支危機

7-1 今でも金本位制??

7-2 ドル危機の可能性

7-3 新型コロナショックと新興国国際収支危機

 

 

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20209月以降の世界資本主義フォーラムの予定

■9月26日(土) 河村哲二「アメリカ戦時経済とパクス・アメリカーナの成立」

■10月 矢沢国光「資本主義国家の成立(2) 「東方問題」と第一次大戦」