前回で「市民社会」の章を終え、今回から「国家」の章に入ります。優れた古典というものは、個々人の問題意識に応じて様々な答え方をしてくれるものなので、単純な割り切り方は禁物です。ただ学習の便宜のためという条件付きで、「市民社会」の章のおさらいをしておきます。市民社会という社会構造は、西欧に、とりわけ西欧近代に特有なものであり、東方に属する専制国家が、村落共同体に埋め込まれた家族や個人を直接支配・隷属させるものとは違っています。私的所有と自由営業という個人主義原理に依りながら、同時に一社会の再生産=存立に不可欠の公益性をどのようにして確保するのか、いわば「私」と「公」との矛盾の弁証法を内在的に市民社会において追跡し、国家という新しい次元への移行の必然性を証明することが、「市民社会」章の論旨にあたるのです。ヘーゲルが、市民社会における富の生産(=資本家的生産)に特有にして、かつ本質的な問題として挙げた貧困問題(=貧富の格差問題)と植民地問題(=周辺への矛盾の転嫁問題)は、今日なお地球的規模において未解決の問題です。それらの諸矛盾の国家による調整と緩和というコンセプションも、今日の福祉国家政策のなかで生かされてきたとはいえ、その行き詰りも露呈しつつあります。そうした現実を「表象として思い浮かべつつ」(マルクス―「経済学の方法」)、国家論の知的沃野に分け入っていきましょう。
記
1.テーマ:ヘーゲルの市民社会論
中央公論社「世界の名著」の「ヘーゲル・法の哲学」から
第二章 市民社会(§182~§256)を講読会形式で行ないます。今回は第三章 国家 §239からです。
★国内では数少ないヘーゲル「法(権利)の哲学」の専門家であり、法政大学などで教鞭をとられた滝口清栄氏がチューターを務めます。
1.とき:2024年7月27日(土)午後1時半より
1.ところ:文京区立「本郷会館」Aルーム
――地下鉄丸ノ内線 本郷三丁目駅下車5分 文京区本郷2-21-7 Tel:3817-6618
1.参加費:500円
1.連絡先:野上俊明 E-mail:12nogami@com Tel:080-4082-7550
参加ご希望の方は、必ずご連絡ください。
※研究会終了後、近くの中華料理店で懇親会を持ちます。