安倍首相が突然「閣議決定のための与党論議を13日に開始したい」と言い出した。安倍は「集団的自衛権」の解釈改憲の閣議決定を6月22日までの国会会期中に強行しようとしている。
これに対して公明党北側一雄副代表らは「わざわざ『集団的自衛権』を使わなくても個別的自衛権で十分対応できる」という論理で抵抗しようとしている。だが「個別的自衛権で対応できる」という論理には、危うさが潜んでいる。6.10の与党協議で論議されたという「朝鮮半島有事」の事例では、こんな論議になっている(6.11朝日新聞):
事例1(平時)公海上で自衛艦が米艦に給油活動中に米艦への攻撃があったという事例について、政府の主張は①日本は攻撃されていない、②自衛隊法改正で米艦を守れる。北側氏の主張は①米艦への攻撃は日本への攻撃とみなせる、②法改正で米艦を守れる。
事例2(周辺事態)日本近海で日米が警戒・監視にあたっているとき、米艦への攻撃があったという事例について、政府主張は①日本が攻撃されたとみなせる事態はきわめてまれ、②集団的自衛権を使わないと対応できない。北側氏の主張は①米艦への攻撃は日本への攻撃とみなせる、②個別的自衛権で対応できる。
事例3(日本の有事)日本領海で米艦が日本の有事に関連して動いているとき米艦への攻撃があったという事例について、政府主張は①日本が攻撃されていない状況も考えられる、②集団的自衛権を使わないと対応できない。北側氏の主張は①米艦への攻撃は日本への攻撃とみなせる、②個別的自衛権で対応できる。
奇妙なことが起きている。さまざまな状況下での米艦への攻撃について、政府ができるだけ「日本への攻撃ではない」と主張したがっているのに対して、公明党・北側氏はできるだけ「日本への攻撃だ」と主張したがっている。「日本への攻撃だから、個別的自衛権の行使で対応できる」というわけだ。
これでは「集団的自衛権」に反論しようとしてかえって個別的自衛権の行使――自衛隊の武力出動――をあと押しし、拡大してしまうことになる。
朝日新聞の記事も、自民党・政府がここにつけ込んで公明党を「集団的自衛権」容認に引きずり込むのではないか、と危惧している。
公明党ウェブサイトの「Q&A 集団的自衛権<上>」では「自衛権は自衛という条件の下で例外的に行使が認められている。」と個別的自衛権の「例外性」を強調しているのに、である。
https://www.komei.or.jp/news/detail/20140602_14119
「個別的自衛権も行使せず」という戦後日本の「平和主義」(憲法9条)国際公約は、国際政治の現実に目をつぶった理想主義ではない。きわめて現実的な安全保障政策である。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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