あたしは社畜とか呼ばれている会社員である。それなりに真面目に働き、細腕繁盛記を地で行き血の汗をかいている。一応国民の三大義務に漏らさずお応えしてきたし、いまもってお応えしている。人気スポットのファッショナブルな大学ご出身で、しかも某鉄鋼メーカーに短い期間ながらも勤務してきたことを自慢している三世政治屋さまをトップに頂いてしまった国の立派な納税者さまである。まああの方は事務職だから現場にいたとしても所謂、工程物流畑しか居場所がなかった筈だ。これで、「オレは現場を知ってる」とか言ったら、それこそ本物の現場のオッチャンたちに馬鹿にされるのが落ちだろう。実際、鉄鋼メーカー勤務の頃に仕事で関わった某知人が言うところによると、「そのときから威張ってたぜ」だったそうである。どうやら俗にいう“嫌な奴”に分類される方であったようだ。
いま嫌韓とか嫌中とかでっかく書かれた本が平積みで売られていたりする。あたしは学生時代に韓国や中国から来た優秀な留学生に接し、(中にはいかつい顔をして“おいしい”しか言わないヘ~ンな留学生の友達もいたが、今では韓国の立派な大学教授さまである。)企業に入ってからも尊敬に値するアジアの技術者たちに出会い、切磋琢磨してきた。あたしは、彼らはみな“いい奴”と思っている。
反面、それらしいことを言って税金を無駄遣いしまくり、生きながらえば将来頂戴できるであろうあたしの年金を少しでもケチろうと画策している輩もいる。この人たちはおそらく全て日本人。山口瞳の『江分利満氏の優雅な生活』の中に、「学生野球に熱中している間に戦争になってしまった。・・・美しい言葉で若者を釣った奴、美しい言葉で若者を誘惑することで金を儲けた奴、それで生活していた奴。・・・これは許さないよ。みんなが許しても俺は許さないよ、俺の心の中で許さないよ。」という厳しい文章が綴られている。あれっ、これって何かに似てやしませんか。「AKB48やサムライジャパンに大声援を送って大騒ぎしている間に、安保法案が通ってしまった。」ってなことになりそうな気配が濃厚だ。こんなことしてるのも韓国人でもなきゃ中国人でもない、きっとこれも100%日本人だよ。
こんな人たちをあたしは“嫌な奴”と呼ぶ。“いい奴”と“嫌な奴”には国境も民族も国家もないんだ。きっと最後はこんな極めて個人的なレベルに還元されて行くのではなかろうか、実はかなり以前からそう思っているのよね。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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