朝日新聞は、今日、ようやく、「皇室制度のあり方 女性・女系将来の道閉ざさずに」を掲載した。社説で「皇室制度のあり方」が論じられるのは、昨年の5月7日以来である。これで、全国紙3紙と産経、東京(中日)新聞の社説が出そろった。産経は別として、読売新聞の女性・女系天皇容認を論じた記事や社説は、保守系の「読売」がと話題にもなった。以下の当ブログの記事もご参照ください。
皇室情報氾濫の中で、見失ってはならないもの: 内野光子のブログ
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朝日新聞は、与野党協議の結論にはまだ至ってないが、中間報告についてまとめ、所見を述べているので、やや長文となっている。中間報告では、①秋篠宮の長男までの皇位継承の流れ、にはおおむね賛同、②女性皇族の結婚後も身分を保つ、 には共通認識があり、③皇統に属する男系男子を養子に向かえる、には積極論も反対論もある、とまとめている。②については、本人の選択を尊重する、にはおおむね一致したとする。一方、女性皇族の配偶者と子供の身分については、意見が分かれている。男系男子を主張する自民は皇族の身分を与えてはならないとし、立憲は、身分を与えないと政治的な中立性など保てないとする。
社説としては、②の本人の選択を尊重した点を評価、③の配偶者に皇族の身分付与する道を閉ざしてはならない、としている。また、旧宮家の男系男子を養子にする案は、幅広い国民の理解を得ることの困難と門地による差別にもあたるとしている。
ただ、今回の社説で、他社と若干異なるのは「根本の論理深めたい」としている点である。これまでも、朝日の紙面では、識者等による、同様の論調はなされてきたが、社説として以下のように述べていることである。
象徴天皇制と、「個人の尊重」や「法の下の平等」など憲法全体に流れる「人類普遍の原理」と。憲法には異質なものが同居しており、完全に整合させることは難しい。
新しい制度が、その不整合を逆に大きくしないか。国民統合の象徴としての天皇を支えるためのよりふさわしい方向なのか。現憲法のもと培われてきた現代社会の価値観に合致するのか。根本的な論点を、深めてもらいたい。
なんとも慎重な、まどろっこしい文章に思えた。 「女性・女系将来の道閉ざさずに」という新しい制度が実現したとしても、その「新しい制度」が、「その整合性を逆に大きくしないか」という問いかけこそが、みずからの社説への問いかけではないのか。
産経を除いた他紙の社説も、「国民の総意」や世論調査の結果などを盾として「女性・女系天皇」へと傾いているが、「国民の総意」「世論」ほど作られやすいものはない。日本の戦時下のメディアの翼賛体制、安保闘争報道における1960年6月15日直後の「在京七社共同宣言」などから学んでは来なかったのかと、振り返るのであった。
初出:「内野光子のブログ」2025.5.28より許可を得て転載
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