環境問題…果たして
地球環境問題。異常気象による災害や食物への影響。日常が脅かされるようになって、ようやく最近話題に上るようになってきた。
私の環境問題との最初の出会いは、弟のアトピー(によるもの)だった。1960年代、インスタント食品が出始め、食品は添加物に溢れるようになった。母は安全な食品を求めて、スタートしたばかりの生協を利用するようになった。高価な漢方薬をずいぶん試すも弟の症状は悪くなる一方で、空気の良い一戸建てを求めて郊外に引っ越したのだが、もう一人の弟の喘息が始まってしまった。霧が深い土地だったのも要因の一つかもしれないが、今思うと、建てたばかりの家は初期のプレハブ住宅。木材はベニヤ板や合板ばかりで、床は樹脂タイル。初めての「アルミサッシ」で、ひどい「結露」を見た。食品添加物や精製された食物、住居については後の活動で室内汚染というものを知ることになる。
結婚してからは妊娠にも備えて食品に気をつけるようにしていたが、娘が生まれた1ヶ月後、チェルノブイリ原発事故が起き、母乳やミルクについて右往左往してしまった。3階建てに建て替えてから数年後の、吉田寮(※)に引っ越してのミニマムな暮らしでは、いかに溢れるモノに囲まれエネルギーを意識せず暮らしてきたかを思い知った。
学校や親から学んだものは役に立たず、それからは衣食住を暮らしに直結する問題として手探りで模索し始めた。食品だけに留まらないアレルギー、食でよく言われる「身土不二」や「一物全体」が、そのまま衣や住のありようにも当てはまることに気づいてから、それらの摂理(仕組み?)がエネルギー問題やコミュニティなどとも密接に関係し、全て繋がっていると考えるようになった。住環境や衣類による人体への影響に留まらず、原発問題も気がつけば取り返しのつかない事態になっている。もう、「一人ではどうしようもない」。地球環境に至っては本当に間に合わない。だけれども、身近な家族ですら、その理解には遠い。
私が京エコロジーセンターに携わっていた頃はほとんどの人が知らなかった「地球温暖化」。今では毎日メディアで流れ、普段の生活にも支障が出始めているのに、生活の実態が変わらない「変えようとしない」のは何故なのだろう。これでもまだ、人ごとなのか。(はるみ)
――中 略――
🎵こんな本いかが?
中学生から知りたい パレスチナのこと 岡真理・小山哲・藤原辰史著 ミシマ社
イスラエルによるガザ・パレスチナの人々への攻撃は2023年10月7日に始まったのではない。ジェノサイドであり、近代500年の植民地主義によるもの。ハマスの攻撃は脱植民地化を求める抵抗だと岡さん。グローバルな植民地支配の結果、「人種」が発明されレイシズムが生まれ、近代以前は信仰を理由に差別されていたユダヤ教徒が人種として差別されるようになった。ガザのジェノサイドを見た時、日本は自国の「植民地主義」を想起できているかという岡さんの問いが心に刺さる。藤原辰史さんはナチスによる虐殺はアウシュビッツが中心になり過ぎ、ソ連兵をわざと飢えさせ300万人を殺した事実やユダヤでない何十万ものロマの犠牲者についてなど、研究者もナチズムと充分向き合えていないのではと指摘。戦時における飢餓、現在の投機マネーがもたらす飢餓、その残酷さ。食糧は戦略に組み込まれ、食糧によって他国を支配し、敵となれば意図的に餓死させる。食と農を通じた暴力に目を向ければ、ナチスもそれと同様の暴力をふるっているイスラエルも、今の私たちと無関係でないことに気づかせてくれる。西洋史・ポーランド史研究者である小山哲さんは様々に絡み合う西洋の歴史を紐解き、シオニズムの観点からイスラエルによる蛮行とロシアによるウクライナ侵攻とのつながりを読み解く。・・植民地主義の罪深さ、根深さは元より、戦時に限らず飢餓の恐ろしさが身に迫ってくる。そして日本の食と農へのノー天気さに愕然とする。中学生以上の人はぜひ読んでおきたい一冊。(合わせて「中学生から知りたい ウクライナのこと」小山哲・藤原辰史著 も!)
≪編集後記≫
お米が高く量も少なく買えない。小泉進次郎さんが農水大臣になり「とにかく米価を下げろ」と、備蓄米を随意契約で売る、農協などに忖度しないなど、威勢のいいことを言ってマスコミはヨイショ。農協悪者説の声も大きくなっていますが、ちょっと待って!何か危険なニオイがします。東大名誉教授の鈴木宣弘さんによると日米合同委員会から「JAを株式会社化しろ」と年次要望書が出されているそうです。農協の金融部門の資産は貯蓄100兆、資産運用50兆円で、株式会社化すればこれを狙っている外資の餌食に。農協は金融の黒字分で農業支援をしており、株式会社化されれば農業支援はできなくなって日本の農業は壊滅的になるでしょう。郵政民営化後の今、郵便局はどうなったか。金融と郵便を切り離した結果、ゆうちょのお金は海外投資に回され、赤字の郵便事業が危うくなっています。郵政民営化で利を得たのは外資で、日本で暮らす人々のためではなかった。農協についても大切な日本の資産が奪われないよう断固守ってほしい。
そして農業。マスコミはやたら大規模化やスマート農業を推奨し、中小農家は淘汰されて当然のように喧伝していますが、大規模化やスマート農業は農薬やタネの管理を多国籍企業に依存することになり、結果的に自立型農業が崩壊する危険大です。世界では中小農家による有機農業への転換が進められています。税をデジタルメーカーや多国籍企業に流すのでなく中小を問わず農家を直接支援し、米や大豆の国内生産を維持するためにお金を惜しまないことが不可欠。米不足は農家だけでなく私たちの問題。今、農政の方向を誤ると大変なことになります。米価だけでなく持続可能性こそ重視して!と叫びたい思いです。 (きくこ)