くらしを見つめる会つーしん NO.239から 2025年8月発行

令和の米騒動の行きつく先

安倍元首相が掲げた「世界で一番企業が活躍しやすい国」の完成に向けて、種子法廃止、種苗法改正(改悪だが)で、タネをバイエルなどの多国籍巨大アグリ企業に売り渡そうとしてきた。そして今、彼らは令和の米騒動をチャンスとして、攻勢をかけてきている。 乾田直播がそれだ。田植えの労力を省ける、水の管理をしなくて良いと盛んにアピールされる一方、タネが飛んだり、鳥に食べられないように、鉄や農薬をコーティングする機械、タネをまく農機具やドローンなど、初期費用が多くかかる。水につからないので雑草管理が大変で、農薬の使用量も多くなる。 

バイエルは遺伝子組み換え米の進出を目論みながら、今まで水田にはばまれてきた。遺伝子組み換え米のタネとセット販売される農薬のグリホサートは水に弱いのだ。 

田の水をはって、田植えをするから、輪作ができ、雑草を抑えられ、農薬を減らせ、 

田んぼがダムとなって水害を減らせる。政府が切り捨てようとしている効率の悪い中山間地は耕地面積、農家数、算出額のそれぞれ4割を占める。後継者不足のなか、ギリギリのところで水路や畔などが維持されているが、水田が無くなれば、当然水害が増える。農家は無償で国土全保全を担っているのだ。政府の進める大規模化、スマート農業は、値のはるF1種、高価な農機具など、エネルギ―消費量が大きく、相当な資金力がないとできない。世界的には家族経営など、小規模農家が生産量の8割位を占め、エネルギー消費量も少なく、農薬や肥料もその時の状態をみながらできるだけ減らす、土の力を活かすなど、環境にやさしい農業が推奨されている。 

政府の方針どおり、小規模農家が切り捨てられ、大規模化、スマート農業が推進され、乾田直播で水田が無くなれば、水害が増えるだけでなく、農家はバイエルや三井など大企業の小作人だらけになってしまう。インボイスと同じく、ひとりひとり独立した農家をなくし、モノ言えぬ雇われ人ばかりにされてしまう。 

そして、農家の協同組合である農協を解体し、外資に差し出し、国産銘柄米は輸出して外貨を稼ぎ、国民はアメリカ米や遺伝子組み換え米を食べさされる。そんなことが今、着々と進められている。 (池上素子)

……省略……

🎵こんな本いかが?

うねゆたかの田んぼの絵本③ 

田んぼの植物 草刈りしないといけないのはなぜ? 宇根豊 作 小林敏也 絵  

田んぼの草(の3割以上)が絶滅しそうになっている。多様な草はそれぞれの役割を持っていて8割は取らなくてもよいただの草。だけど、昭和30年代くらいから除草剤によってみんな除草してしまえ、という考え方が広まってしまった。稲は自家受粉作物。ミツバチが受粉しわずかな変化が起き新しい品種も生まれる。ミツバチは受粉して田の水を飲んで帰巣し夏は巣箱を冷やすので、ミツバチに影響のあるネオニコチノイド系農薬は使ってはいけない。彼岸花の話、草木の名まえと人の体の共通の名まえ(目⇔芽・歯⇔葉・鼻⇔花・など)についてなど、田の草、周りの自然がどんなに影響し合っているか、愛情に満ちたお話に、心がほっこりすると共に、現在、それらをどんなに痛めつけているかを考えさせられる。絵本なので気軽に手にでき、絵や写真で優しく学べる。(うねゆたかの田んぼの絵本は①田んぼの四季②田んぼの動物④田んぼの環境⑤田んぼの文化・・の5巻のシリーズ)

〈編集後記〉

7月の参院選で、参政党が大躍進しました。海外ではこうした政党を極右政党と言いますが日本のマスコミは言いません。憲法学者の木村草太さんが「まるで怪文書」と評した参政党の憲法草案。憲法は「権力を縛り、国民の権利や自由を保障する」ものなのに、この草案では国民主権さえ明記せず、細かい義務ばかりが書かれ人権規定はほぼ削除されています。排外主義的でナチスを彷彿とさせる参政党。参政党を支持する人は多様で、食の安全やワクチンの問題を考える人、生活が苦しく減税に共感した人、外国人が増えることに何となく不安を感じている人、勝ち馬に乗った人、そしてコアなところに旧安倍派・統一教会・日本会議などと深いつながりを持つ人たちが居るようです。

一方、参政党を批判する時、オーガニックを揶揄したり、「反ワク」は非科学的などと、ひとくくりにして見下げた物言いをする人もいます。参政党党首の神谷 宗幣さんは人々が興味を持ちそうな話題を巧みに織り交ぜ、ウソや誇張も交えた演説で聴衆を惹きつけているので、疑問に思うと全てがうさん臭く見えるかもしれません。けれど、食や医療の安全の問題は重要で、今まで大きく取り上げられなかったことからそれらへの関心の高かった層が参政党に飛びついた面もあります。日本は農薬や添加物の安全基準が緩く、遺伝子組み換えやゲノム食品など他国の人々が買わないものの「市場(処分場?)」にされているのが現状です。陰謀論の中にも事実はあり、全否定してしまうと思考停止になり、検証できません。何が事実で何が間違っているのか、事実を歪めることで誰が得をし、困るのは誰か。排外主義やファシズムの問題と共に、食や医療の安全、農の問題などとも丁寧に向き合い、改善を求めていきたいと思います。 

                                        (きくこ)