くらしを見つめる会つーしんNO.235から  2024年12月発行

行政への情報公開請求

  万博工事現場でメタンガス爆発事故

 万博開催地の夢洲(ゆめしま:ゴミの最終処分場)は4つに区分されていて、万博は2区だけで開催予定でした。しかし2020年に大屋根リング計画が持ち上がり、夢洲1区にも拡大されました。この場所にはPCBやヒ素など危険な物が埋め立てられ有毒ガスも常時発生しています。立ち入り禁止区域であり、万博のような集客施設をつくってはいけない場所だったのです。恐れていたことが’24年3月28日に起こりました。万博トイレの工事中にメタンガスの爆発事故が起きたのです。100㎡に及び天井に穴があくほどの事故でした。
  夢洲を所有、管理する大阪市に公文書公開請求➡「不存在」
 こんな危ない夢洲1区をなぜ万博協会に貸したのか。意思決定過程が分かる記録、メモなどすべてを求めました。
 請求の結果、出てきたのは「土地の貸借契約書」だけでした。「立ち入り禁止」➡「万博で使用」には天と地ほど差があります。高いレベルでの話し合いがなければ、こんな大きな変更はあり得ません。不存在の決定に対し、「不服審査請求」を出せます。しかし係の人に尋ねると「審査待ちが180件ある。年間の処理件数が30件ほどなので、このペースだと6年かかる」と言うのです。万博が終わってからでは何の意味もありません。制度はあっても破綻しているのです。しかたなく、若干の文言を変え再請求しましたが、結果はやはり「不存在」でした。
  厳しいけれど、希望もある
 爆発事故の日に此花消防署が現場へ出動しています。その時の現場検証の状況を求めて住民のAさんが公文書公開請求されました。公開文書から、万博協会が報道発表していなかった2つのことが明らかになりました。消防署への連絡が4時間半後だったこと、爆発被害がトイレの天井にも及んでいたことです。万博協会の隠ぺい体質が暴露され、文書がSNSで拡散され、沈黙していたメディアの追及が始まり、運動にも勢いが出てきました。公文書公開請求がなかったら起こらなかったムーブメントです。
 私は今年4件の公開請求をしました。残念ながら役に立つ文書はほぼ出てきませんでしたが、Aさんの例に励まされ地道に続けていこうと思います。      (百姓のまーくん)

♬こんな本いかが?

『アメリカは内戦に向かうのか』 
   バーバラ9・F・ウォルター著 井坂康志訳 東洋経済新報社

 イラク・北アイルランド・インド・フィリピンなど過去に起きた内戦に関するデータから紛争が起きる条件や心理について分析。国家が民主主義(スコア+10)と独裁(スコア-10)の中間にある「アノクラシー」と呼ぶ領域(のスコア+1~-1)にある時、内戦は起きる。不安定化の要因は貧困や格差より、政治過程から弾かれていると不満を募らせ武器を持つ集団が発生することだという。また、(移民や少数者、民族や宗教的違いなど)敵を作って不安を煽る独裁予備軍と言えるリーダーが「脅かす存在から守ってくれる強いリーダー」として選ばれ、分断が深まっていく。さらにそれを助長するのがSNS。世界的な民主主義離れがネット・スマホ・SNSの普及期とほぼ一致。偽情報は青天井。暴力の連鎖は止まるところを知らず分断を深め、声のでかい者が各地で独裁者の支持を拡大させている。分断・差別・憎悪・暴力・脅迫などを煽るSNSを規制し、憎悪や偽情報の拡散を抑え込めれば民主主義の敵の音量は下がると著者。民主主義で重要なのは「法の支配」「言論の自由と説明責任」「政府の能力(公共サービスの質と公務員の独立性)」であり、内戦を防ぐためにも統治能力の質向上が不可欠だという。アメリカだけでなく、日本も欧州も世界中の民主主義国の統治能力が劣化している今、考えさせられる。

<編集後記>

 兵庫県知事選を巡っては、公職選挙法違反の疑いが多数指摘されています。斎藤さんを応援するためとして立候補したN党の立花孝志さん。ウソ・デマ・誹謗中傷をする彼の動画が何千万回も再生・拡散されたのに、この問題についてTVも新聞も「選挙中」を理由にほとんど報道しませんでした。まるでイジメの傍観者のように。ウソが垂れ流されているのに黙っていることは中立でなく加担です。マスコミは信用できないからとSNSに流れるのも、とりわけ安倍元総理以来、政権に忖度して通り一遍の報道しかせず「強者の論理」がまかり通っていったからではないでしょうか。
 米国大統領選でトランプさんが再選されたことと、斎藤さんの選挙などをなぞらえて「日本でもミニトランプ現象が起きつつある」と言う人もいますが、トランプ現象は既に安倍元総理の時から起きていたと思えます。最近の日本において、上記に紹介した本の中の「法の支配」「言論の自由と説明責任」「政府の能力」の質の低下は明らかで、法は、権力を持つ人によって歪められ、同じことをしても罪に問われる人と問われない人がいる。権力ある人は不問に付され、トカゲのしっぽ切りのような逮捕が少々あるのみ。今回も斎藤さんの知事選をSNS等で支えたとブログに公表したOさんの件で、公選法の疑いが極めて高いと指摘されている問題について、斎藤さんはOさんが  「盛った」と言ってOさんを切り捨て、自分は逃げ切ろうとしているように見えます。そもそもの辞職勧告の経緯を含め、このような人が行政トップにふさわしいのでしょうか。斎藤さんが無傷のまま知事を続けることになったとしたら、マスコミはまた忖度報道をし、弱い立場の人たちが踏みにじられていくことになるのでしょうか。例え小さくても理不尽なことにはNOを言い続けたい。選挙が終わったらオシマイでない民主主義の在り方ももっと考えていかなくてはと強く思った兵庫県知事選でした。 (きくこ)