こいつぁは春から縁起がいいわぇ ― 南北に対話の萌し。

韓国・平昌での第23回冬季オリンピック・パラリンピック(平昌五輪)が問題を抱えたまま目前となっている。来月(2月)9日開幕で、25日までの17日間の日程だという。ドーピング問題でのロシア選手団の問題だけでなく、隣国北朝鮮が参加の可否を態度表明しないまま推移して暗い影を落としている。韓国の文在寅大統領は、かねてから「オリンピックの成功が朝鮮半島の平和と安定につながる」と表明してきたが、北朝鮮は態度を保留したままだった。

突然に事態が変わった。北が平昌五輪への参加の意図を表明し、南がこれを歓迎する声明を発表した。これをきっかけに、南北対話の進行までが期待される。

昨日(1月1日)北朝鮮の国営放送「朝鮮中央テレビ」が放映した金正恩朝鮮労働党委員長の「新年の辞」の中で、金正恩は平昌五輪についてこう語ったという。

「新年はわが人民が共和国創建70周年を祝い、南朝鮮(韓国)では冬季オリンピック競技大会が開かれることで、北と南にこのように意義のある年だ」「平昌冬季オリンピックは、民族の地位を誇示する良いきっかけとなり、私たちは大会が成功裡に開催されることを心から願っている」「北朝鮮も代表団の派遣を含めて必要な措置を執る用意がある」

「私たちは民族の尊厳と気概を内外に知らしめるためにも、凍結状態にある北南関係を改善し意味深い今年を民族の歴史に書き加える年に輝かさなければならない
「何より南北間の先鋭的な軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境から用意しなければならない」「北と南の情勢を激化させることをこれ以上してはならず、軍事的緊張を緩和し、平和的環境を用意するために共同で努力しなければならない」

明らかに、平昌五輪をきっかけとする南北対話の意図の表明として影響は大きい。ぜひ、実現してもらいたいものと思う。

当然に、「北朝鮮の戦術」という見方は出てくるだろう。「国連安保理決議による制裁の影響が大きく出てくる前に、友好ムードに切り替え、これ以上の制裁を避けるための方策」という読みだ。だからといって、せっかくの対話のチャンスを逃してはならない。オリンピックも役に立つこともある。うまくことが運べば、オリンピックの大手柄だ。

この金正恩のテレビでの呼びかけに応じて、韓国大統領府は、直ちにこれを歓迎する声明を発表した。声明は「韓国大統領府は南北関係の改善と朝鮮半島の平和に関連する事案であれば、時期、場所、形式にこだわらず、北朝鮮と対話に応じる用意があると明らかにしてきた」とし、北朝鮮が提案した選手団派遣に向けた南北間協議に応じる方針を明らかにした、という。

また、韓国大統領府の朴洙賢報道官が、「平昌五輪が『平和五輪』として成功すれば、朝鮮半島と北東アジア、世界の平和に寄与する」と期待感を示したことが報じられている。

文政権からしてみれば、「遅かりし由良之助」「待ちかねた」と言いたいところだろう。幸いなことに間に合いそうなタイミングではないか。「米・韓」対「北」のチキンゲームに終止符を打って、平和の協議への第一歩とならんことを、切に願う。

まだ、十分に成算の見えた話ではないが、明らかに風向きが変わった。
トランプやアベには、思惑外れ。とりわけ、北朝鮮の危険を最大限利用して、9条改憲を目論むアベには面白くない展開。

ようやく訪れたこの風向きの変化に、言いたくもなる。
「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」
(2018年1月2日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.1.2より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=9711

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/

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