こいのち通信(世田谷こどもいのちのネットワーク通信) 2021年5月

 梅雨入りの声を聞くころとなりました。目に青葉、山ホトトギス、初ガツオ、ですね。本当に木々の緑が美しいです。世の中、何が起こっていても、自然の営みはそのまま続き、私たちを感動させてくれます。いくら「外にでるな、家にとどまれ!」と命じられても、季節の恵みとともにいる時間はつくりたい。一年前には、一年あとにまさか同じ事態、さらにひどい事態が待っているとは思いませんでしたが、相変わらず、私たちは、場当たり的なもぐらたたきのような政権、為政者の無策の中で翻弄されています。もういい加減、ただ従うのではなく、自分で判断して決めませんか?と言いたい(こいのちにつながるみなさんにいうことではないですけど)。ワクチンしかり、です。ワクチンがいきわたれば、コロナは制圧できる、オリンピックも問題なく開けると、ひたすらワクチン頼みのようですが、問題が多いのも次第に明らかになってきています。壮大な人体実験という感じでもあります。受けるか、受けないか、これも自分で決めたいことです。
 緊急事態宣言が5月末まで延長され(その後もわかりません・・)、公共の場所は一網打尽的に使えなくなり、不便しています。なにも一律に使えなくすることはないだろう、と。自らの健康を維持するため、心をやすらかにする文化活動を続けるため、人との大切なコミュニケーションをするためにも欠かせない日々の活動がストップさせられています。その一方で、オリンピックは強行する、というのですから。どこからみても、オリンピックを開催できる状況ではないのは明らか。反対、というか、できないだろ?と誰もが思っています。お金、これが一番の強行の理由でしょうね。選手にしてみれば、これからを決める一大チャンスでもあるのでしょうし。スガは壊れたテープレコーダーのように「安心安全の大会開催」とお題目をいうばかり。あとはIOCに決めてもらいましょうということなのでしょう。外国の選手から、行くべきでないのでは、の声も聞かれはじめているようです(スペインの友人情報)。選手が不参加になれば出来ないのだから、世界中で声をあげてほしいですね。
 オリンピックといえば、5歳以上の園児、小中学生に対する「オリンピック観戦」がいまだに予定されています。2020年のオリンピックを前に、2019年にこの方針が出された時には、コロナはありませんでした。コロナがなくとも、酷暑の夏にそんなことをさせてたまるか、と反対でした。一度決めた方針は取り下げない、というのが行政の原則なのか、コロナによるダブルパンチのこの期に及んでもそのまま取り消しにもなっていない、というのが不思議で恐ろしいです。コロナ禍、熱中症の心配のある酷暑の中、電車での移動、炎天下での観戦・・・。どう考えてもあり得ないです。「世田谷の教育を考える会」で、中止にしてほしい、との要請書を作って、区に提出することになりました。
 「こどもいのちのネットワーク」ももちろん賛同団体となっています。こどものいのちの問題ですから。要請書も、みなさんに共有していただきたいと思います。コロナ禍により、戦時中のような社会の様相がそこここに垣間見られていますが、これではまるで「国家総動員」ですね。
 4月30日に「GIGAスクール構想」の学習会を、初めて!ズーム・オンリーで開催しました。慣れないこと故、出だしでトラブりました。URLの通知が届いていない!という何人かからの問い合わせが間際に。前日に送ったつもりだったものがいくつか漏れていたようです。その場で対応できた方はよかったのですが、間に合わなかった方もいらして、ご迷惑をおかけしました。講師がITに強い坂井さんだったのが幸いしました。「こいのち」にはデジタルは似合わないのでしょうか・・・。ズームなんてできないとおっしゃるHさんは、我が家で一緒にパソコン見ていました。GIGAスクール構想は、今の時代、ある意味で必然ではあるのですが、まだまだ解決しなくてはならない課題も山積、と思います。とくに、現場の声や問題提起をしっかりと受け止め、双方向で話し合いを深めていってほしいと願います。坂井さんのお話はとてもわかりやすく、ナゾに包まれたGIGAの正体が少しわかりかけました。保坂さんが目いっぱい思いの丈を語ってくれました。日本の「学校」「教育」が旧態依然で変わっていない、ということもよくわかります。でも何が何でも進めなくてはならない、という上からの指令では困ります。5月15日には、教育委員会主催のGIGAスクールに関するオフィシャル・セミナーがオンラインで行われました。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平さん、東京学芸大附属小金井小学校の鈴木秀樹さん、渡部教育長が語り、保護者二名が質問する、というものでした。こういうプロセスを保証していきながらの丁寧な対応が望まれますね。
 6月、7月はさまざまな組織にとって「総会」の季節。こいのちは、一応7月11日を予定しています。GIGAの学習会の内容をもう少し深め、こどもたちがデジタル社会をどう生きていくのかをさまざまな視点から考える機会を持ちたいと思っています。坂井先生、保坂区長も交えて、より具体的に語ることができれば、と願っています。詳細は次号にてお知らせします。    (星野弥生)

GIGAスクール構想とはなにか? 坂井岳志先生x保坂展人区長
【会は、坂井先生によるGIGAスクール構想の概要のプレゼン、坂井さんと保坂さん、参加者からの質問や意見、という三部構成で進められました。Zoomの画面を追いながらのメモから印象に残ったことを少し記しますが、脈絡ないです・・・。録画データを坂井さんが提供してくださいますので、希望される方はご連絡ください(必聴!です)4月号に掲載した坂井さんのレジメもご参考に。これを出発点として論議が広がっていくことを願います】
(保坂)世田谷区で一人一台のタブレットを配布することが急に決まりました。経産省、文科省、総務省の打ち出したものです。一年前の今頃、学校が突然の臨時休業となって二か月、三月には終業式、卒業式、入学式も行われず、区長のところには「学校から何の連絡もない」とのとまどい「学校は何をやっているんだろう」という声が寄せられました。学校には電話が二回線しかないのです。すべての家庭に電話をするのは物理的に無理。私物の電話を使ってはいけない、という規則もあります。親たちはショックでした。「なぜICTを使わないのか」と。ユーチューブはアクセス不可能だったので、そこで世田谷版のユーチューブをあわててつくって配信をはじめました。授業は双方向性、インタラクティブなものだから、そういうのができないかと、ロイロノートをはじめました。
(坂井)ロイロノートというのは、先生とこどもの学習を結びつけるパターンのもので、カードを書いて、その上にテキスト、動画、音声をはりこんで先生に送り、先生がコメントする、というような非常に便利なものです。
(保坂)役所はインターネットを制限つきでしか使えない。学校も役所も今の時代から遅れています。メール一本送るのに準備に5分とか。なぜこんなに遅れたのかを十分検証しなくてはならない。OECDで最も遅れている、というのもよくわかります。セキュリティの問題で使えない、と。
(坂井)学校の先生用のメールアドレスが一つしかないのです。セキュリティが厳しくて、一律に網をかけるフィルタリングが子どもたちの学習意欲を妨げています。
(保坂)教育再生会議でも、学力観の転換が必要という議論がされています。学校は時代から思いっきり取り残されている。個別最適化というのは難しいスローガンですが、学びのパラダイムシフトをしなくてはならない時期に来ています。チャンスにしなければと考えています。
いま、若い世代が学校には多いですね。先生はやることが多くて、セブンイレブン状態の過労死ライン。探求する、深く考える時間もない。どうやって、探求的で深い学びができるのでしょうね。
(坂井)若い教員の方がむしろ保守的で、新しいことに挑戦しないで、指導教官に言われた通りにやろうとする。ロイロノートを、こどもが家に持ち帰りだした時に、先生たちがそれを使って子どもたちとやりとりを始めました。日常の授業の様子を記録する方法も取っていました。良さを他の先生に話していたのが印象的でした。
(保坂)教師は学習の中身、材料を用意するのが理想ですね。(坂井)先生すべてをやる時代は終わりました。私も子どもたちから教わりながらやっています。理科でマニアックに昆虫などに詳しいこどもたちがいる。ともに学ぶという姿勢がないとこれからの先生はやっていけない。
(保坂)それはいいことですね。インターネットで検索できる以前は、わからないことは先生に訊いて、という時代でした。教員が全能の神ではなくて、伴走者として学びのコーディネートをする。子どもと水平に並ぶというのは大きな変化です。800人の不登校児に対して学習の機会を保障しなくてはならない、「教育機会確保法」は、学校以外のところで学びの場があることを認めたものです。(坂井)一般の先生たちがそういう変化の状況を知らないし、受け止める時間もないので、変えようという動きになかなかつながらない。でも、書けないけれど、タイピングならできるというこどもも増えているので、変化をもたらすきっかけになるとも思っています
(保坂)どんな子にも学びの場を保障していくというのが必要なので、さまざまな文化を表現できるアートスクールも世田谷にできると思いますが、教育特例校だけではなくて、大多数のこどもたちが通う学校をなんとかしなければならなですね。
(坂井)中学校は受験によって縛られているということも考慮にいれなくてはならないですね。
(保坂)コロナのせいで、ICTが20年一気に進みましたが、明治以来つづいてきた学校という空気感が変わるのは大変です。何事もなく無難にやりたいという校長も多いので、上からの教育改革は難しい(・・・)デジタル情報は残ってしまうので、それにどう対応していくのかというのも課題です。
(坂井)トラブルがあったときに、普通の学校の先生は対応できないし、時間もないから、学校にITの専門家が常駐している必要があります。文科省もGIGAのサポーター予算はとってあります。外国では地域の人が手伝っていますが、学校と地域との関係が作れているところは日本では少ないです。すべてを学校がやる、という時代は終わっています。
(坂井)担任以外の先生がタブレットをもっていないのは困ります。創作活動にも支障がでます。
(保坂)教育委員会が意地悪をしているわけではなく、予算がかかるので、先生方の分も遠慮している。国が4分の3負担するといってもすごいお金。iPadで授業するなら担任以外に渡さなくてはならないことは、しっかり言っておきます。これは今日のシンポジウムの具体的な成果ですよ。
(坂井)それはよかった!
(保坂)オンラインだと家で親が授業をわきでみて品評をする、という危惧は確かにあります。親が見るのは禁止、他の目があったらこどもも見れない、としたらどうでしょう。
坂井さんが先ほど言われたように、子どもには自己決定で学習するという立ち位置があります。シチズンシップ教育というのは、こどもは小さな市民であり、親であっても介入してはいけないということを教える。学びの時間はこどもが見るものです。親の意識も変えなくてはいけません。今の巣ごもり状態の中では世田谷でのオンラインの授業も考えられます。親が凝視することもあるかもしれない。これまでの密室だった教室から、見られているというのは教員にとってはいやかもしれせんね。情報の取り扱いも、どういう民主主義のルールを作るかが問題ではないかと思います。
(坂井)授業方法が変わると思っています。先生だけが語る授業は変わります。これまでは先生の演説会でしたから。目指すは子どもたちが活動する場を意識した授業をどう展開できるか。
(保坂)ICT教材に国境はない。国際交流もそれぞれの国で使う教材を使うとかできるでしょう。オリジナルな教材、こどものプレゼン、など広がっていくと思います。固い頭をどうマッサージして、主体的、対話的な深い学びを実現していくか。
(坂井)GIGAだけでなく、世田谷の教育をどうしていくのか、保坂さんに展望を伺いたい。
(保坂)日本社会自体が日々沈没しています。偏差値でなんとかなる時代はとっくに終わっています。いきなり創造的になれ、といっても無理です。進路も日本の学校社会は単線ですから、複線的に選ばざるを得なくなると思います。GIGAスクールと外で遊ぶプロジェクトは表裏一体と思っています。悪循環を断ち切りたい。中学二年くらいから考えて予測不能な人生をえらんだ私に、ようやく時代が追いついてくれたかなあ、と。大いになってみたいです。私がやるのではなく、これを聞いているみなさんが、何よりもこどもたちがやるんだと思います。
(この対談、とてもよかったので、ぜひ全容をお伝えしたいです。動画はぜひごらんください)
 
「GIGAスクール構想とはなにか?」を聴いて。
 かつて文科省が小中学校の学習指導要領改訂案の目玉としていた「アクティブ・ラーニング」という言葉が、定義が曖昧な外来語で、法令に適さないとして2017年に公表された学習指導要領改訂案から消え、「主体的・対話的で深い学び」という表現に置き換えられた後「GIGAスクール構想」というこれまたつかみどころのない曖昧で実態の見えない言葉となり進められることに。 それでも小中学生一人ひとりに1台の端末を配布するということはわかっており、「アクティブ・ラーニング」ほどの丸投げ感はないにしても、現場の先生方にとってはそれを使って何を目指し、何を教育していくのか具体的に示されているわけでないのは変わらない。
 確かに今の子どもたちはスマホ片手に情報を取りに行く術は知っています。だから端末が授業に組み込まれても抵抗感はないだろうと思いますが、それをどう扱えばだれもが主体的に取り組み、ワクワクと想像力を掻き立てられるような授業にできるかは指導する先生に委ねられることになります。 そしてそれが不安にも期待にもなることを坂井先生の話を聞いて感じました。
 先生が行なっているタブレット授業の様子は、可能性を秘めていると感じる内容でした。文字をかけない子どもも参加できる、AIによって子供のレベルに応じた問題がそれぞれに出題される、それは画期的なことだと思います。またリモートで受ける授業も、多人数クラスで話す先生の話を自分に向けている言葉として受け取りにくい特徴を持った子どもにとって、モニターに映し出される先生の姿はまさしく自分だけに話してくれているように感じることができます。板書の苦手な子供にとってもキーボードは救いになるでしょう。 また先生が体制側と戦うためにも、武器として端末の活用、GIGAスクール構想が必要だという意見にもうなずけます。 このデジタルの流れが止められないのであれば、流れに乗る方法を考えるしかありません。 ですが「だれ一人として溺れないように」ということは難しいと感じました。
 国家が存亡をかけて予算投入するのも5年という限られた期間。5年後の個人がすべてデジタルの流れに乗っていればよいですが、流れに乗れない子どもやその船に乗り続けるチケットも買えない子どもが出てくることは想像に難くありません。そこに見え隠れするのは民間企業の存在です。 今回の一斉端末購入で、買いたたかれた企業にメリットはないように思われるかもしれませんが、将来の需要、端末の必要性が広まることの恩恵は計り知れないものがあります。この政策がコロナ禍という時期に前倒しできたまさにショック・ドクトリンを思わせるのも不安の1つです。 ですが保坂区長も語っていたように、やり方次第では新しい波にも可能性はあるのだと思います。学歴第一主義だった世界を変えることができる予感もします。不登校の子供が同じように学べるチャンスができることもその一つです。
 今回の学習会で坂井先生も保坂区長もデジタルの活用で遅れを取った日本を救おうとしていらっしゃるのがよくわかりました。 様々な問題や不安はありますが、戻れない道ならば、進む道に活路を見つけるしかないと感じた学習会でした。              (唐木郁子・会員)


生徒のオリパラ観戦中止を求める要請書を区長・教育長に提出しました

【区内の10団体で、5月25日に以下の要請書を提出しました】

オリンピック・パラリンピック 「学校連携観戦」の中止を求める要請書
区長におかれましては、日ごろより世田谷区民の安心、安全、暮らし向上、そして子ども達のいのちと教育のために尽力されていることに心より敬意を表します。
 東京都では緊急事態宣言が延長され、新型コロナウイルスの感染者は依然として減少していません。専門家は増えてきている変異株のウイルスは従来のウイルスよりも若者や子どもに感染する力が強まっていると警告しています。
コロナ禍で学校は子ども達の生活が大きく制限され、子ども達が楽しみにしている学校行事にも支障が出ています。教職員は子ども達の感染予防に全力で取り組んでいます。
この様な状況の中で、世田谷区では5歳以上の幼稚園児と小中学生に「東京オリンピック・パラリンピックの観戦」が実施されようとしています。観戦が予定される期間は猛暑の時期にあたり、外での活動は熱中症のリスクが極めて高く、二重の危険性があります。どうか、世田谷の子ども達のいのちを危険にさらさないで下さい。
子ども達のいのちと安全を最優先に考え、区長はオリンピック・パラリンピックの実施の有無にかかわらず、子ども達の観戦を即刻中止すべきです。区長には子ども達のいのちを守る責任があります。私たちは、子どものいのちを最優先に考える区でありたいと考え、以下を要請します。

1,オリンピック・パラリンピック「学校連携観戦」の中止を求めます
2,オリンピック・パラリンピック「学校連携観戦」の中止を東京都(知事と教育長)へ働きかけてください           連絡先 名谷 和子 世田谷の教育を考える会事務局 Tel 090-7218-59

                  いろいろ告知板
★こいのち総会+記念学習会(予定)7月11日(日)2時~ 
「デジタル社会に囲まれたこどもたち 」
 講師:坂井岳志さん、保坂展人さん(予定)
  いつどこで、どんな形で行うか、不確定要素がいっぱいですが、実施の方向で考えています。4月30日の学習会をさらに深めたいと思っています。詳細は追って。
★「もっと語ろう不登校 part.257」
6/5(土)2pm~ 参加費300円 ZOOM参加希望の方は、前日までに以下に、メールを。
高橋:fsbttoru@yahoo.co.jp  佐藤:yurinoki11513@gmail.com
★「なくそう戸籍と婚外子差別・交流会」7月25日集会
 こいのちで情報共有している世田谷での「婚外子差別」事件を解決するためにも、ぜひご参加ください(ラシを同封します)世田谷からも連帯の発言をする予定。
★「少年法」の改悪、少年犯罪は激減しているのに、なぜ? こいのちにとっても大いに考えてみたい大問題。現場からの声を聴く会をぜひ、と考えています。これも次号でお知らせします。
★星野弥生の気功教室:毎月第二、第四金曜5時半~7時20分(経堂)、毎月第二、第四日曜日の10時~12時(代々木公園)などでの、誰でもできる気功です。よかったら元気になりに来て下さい。コロナには、まず免疫力をつけることが一番。詳しくはインターネットで「気功学習室」をごらんください。(問合せ 070-5554-8433 星野弥生)

世田谷こどもいのちのネットワークの仲間になってください。つうしん、お知らせが届き、講演会などの参加費が無料になります  年会費3000円 郵便振替口座00100-9-396998
連絡先:星野弥生  Tel&Fax 03-3427-8447 070-5554-8433 email:marzoh@gmail.com