こいのち通信(世田谷こどもいのちのネットワーク通信) 2021年7月

 梅雨がいつの間にか終わっていて、連日30度以上の猛暑。それに加えて台風まで・・・。もちろんコロナはずっと居座り中。なんでもありのこの国で、オリンピックが始まってしまいましたね。「福島はアンダー・コントロール」との大嘘で始まったオリンピック招致でしたから、最初から呪われていたようです。直前までなんでもアリで、次から次へと問題噴出。最悪の環境のところに来させられた選手たちがかわいそうです。一方のコロナ。大方の予測のように、増え続けているようです。こんな状況で、本当にオリンピック、続けるんですか? 勇気ある撤退はあってしかるべき。戦争をやめられなかった日本軍のことが、頭をよぎります。決めることができずにズルズルと行くところまで行ってしまうのでしょうか・・・。ちなみに私はもともとオリンピックには関心ゼロで、テレビも観ないから、いたって静かな日々を過ごしています。
 さんざん書きましたが「学徒動員」か、と言われた子どもたちの「オリパラ連携観戦」の話。教育委員会の傍聴に行ったら、その場で淡々と中止の通知がされました。そもそも無観客で行われるのだから、観戦できるわけもないのですが、この会の前に、教育委員たちの間で論議がなされた気配はなかったです。委員の何人かが、コメントしただけでした。こどもの「いのち」にかかわるような重大な問題なのに、教育委員が話し合いをしない、というのが教育委員会なのか、と改めてビックリしました。教育委員会という制度、なんなんでしょう。これも、この間ずっと精力的に動いてきた「世田谷の教育を考える会」とつながりながら、こいのちで大いに議論していきたい大きな課題です。
 月が終わろうとする時期に「こいのち通信」を出さなきゃと思うと、もう一か月経ってしまったのか、と呆然とします。7月は報告することが結構山積みでした。なんといっても「総会」がありました。小さな、なんの法的な裏付けもない任意の団体ではありますが、コロナも手伝ってか、通信をちゃんと読んでくださる方も多く、会員が増えているのはありがたいことです。会費をいただいて通信を出せているのですから。ズームが主流の世の中にあって、でもたまには人に直に会いたいよね、とボランティアセンターに集まってこられた方々も何人もいらして、それはとてもうれしいことでした。議案の表決が終わり、新年度に漕ぎ出す時に、いつもなら手作りの料理とビールなどで親睦のひと時をもち、会員が直接に知り合い、語り合ういい機会になっているのですが、コロナのせいでそれもならず・・・。画面上で一人ひとりが簡単な自己紹介をし、つながることができました。早く、同じ釜の飯を食べる時が来てほしいものです。総会のことはのちほど報告します。
 総会に先立って「GIGAスクール構想・第二弾」という記念のトークを行いました。4月30日の会の続きですが、今回は、区が主催するオンラインに関するオフィシャル・セミナーでも保護者として大いに発言していらっしゃる吉澤卓さんに加わっていただきました。いろいろな角度から、さまざまな立場の方が語ることによって、前回からまた広がりが出てきた感じです。これは続けなくてはならないね、という思いを多くの参加者が共有したことと思います。吉澤さんはじめ、世田谷中でPTA会長をしている「キャピキャピギャル」(!?)の渡辺馨さんなど、事務局の一世代下の人たちが元気に加わってくれそうな予感がうれしかったです。ああ、25年続けててよかった、と感慨。こいのちのGIGAの学習会にはなくてはならない存在となった坂井岳志先生。コーディネートはさることながら、私たちが弱い技術面でもフォローしてくださっています(坂井さん、あきらめてね)。坂井さんからのメールに「異なる意見の存在とその調節が大切かと思います。(…)常に状況は動いています。必要がありましたら書かせていただきます」とあり、なんと頼もしいこと! 動いている状況に、こいのちもヨチヨチとでも伴走していきたいと思っています。(星野弥生)

今月のNorio漫画です。タイトルは「放映料」。彼のコメントには、「バッハ会長という人は、アスリートや日本人のいのちをなんと考えているんでしょうか」とありました。まったく!「やっとオリンピック反対の記事が「ウェブ論座」に載りました」とも。開会直前になって!4月から書いていたのにね。「フランスでは、私は漫画をボツにされた経験がありません。No-rio個人の意見として、尊重して漫画を載せてくれます」
それは民主主義の基本だと思いますけどね。

★こいのち 2021年度年次総会がおわりました。
 今年は、記念企画の「GIGAスクール構想を考える・第二弾」が、講師の都合上早めの時間になったので、総会が後になりました。リアルとズームの二刀流で開催。ボラセンでは、職員の近藤さんがワザを発揮してくれて、ズームのごたごたを解決し、大きな画面で見れるようにスクリーンを配置してくれるなど、縁の下の力持ちの協力でした。感謝! 参加者10名、委任状32名、事務局メンバー7名の計49名で総会は成立(会員はほぼ100名なので)。
 コロナ禍にあっても、2020年度は、9月の総会に始まり、「多様な学びの場から~楽ちん堂訪問」、4月にオープンした世田谷児童相談所の現場を知る「こどものいのちを守るということ」というタイトルでの土橋所長と保坂区長のトークと対談、今年4月の「GIGAスクール構想とはなにか」など、回数は少なくても、大切な内容のあるプログラムが組めたと思っています。なによりも、一回きりで終わるのではなく、継続して発展的に取り組んでいこうということが、参加者の思いだったと思います。2020年度の活動報告が承認され、その後2021年度の活動方針の提起へ。基本の柱「こども・原発・憲法」を据えて、自前の学習会をしていきます。
〇「多様な学びの現場」を取り上げる 〇GIGAスクール構想を引き続き学習、検証していく。それとともに世田谷の教育をどう変えていけるのかを考える。〇少年法改悪の問題点を知る 〇子どもの権利条約、児童虐待 〇こどもの成育環境の大切な場としての公園の役割をとらえなおす 〇昨年40周年を迎え、リーダーハウスの立て替えなどで活気のある羽根木プレーパークを「こどもの権利保障」の観点からとらえなおす 〇グリーンピースとのコラボ企画で、切実な環境問題を学ぶ 〇「婚外子差別」が見られる世田谷区に働きかけ、「人権」が真に守られる区にしていく。などなど。…後略…

★GIGAスクール構想 第二弾! ほんのさわりですが・・・

 記念イベントとしてのGIGA第二弾は、坂井岳志さん、保坂展人さんのご常連に加え、若林小の保護者であり、「世田谷公教育におけるICT利活用を考える会」代表の吉澤卓さんを急遽ゲットし(前日に連絡とる、なんていう無謀さを許し、快くお引き受けいただき感謝)、少しずつGIGAの霧が晴れてきたようでした。とくに録音はしなかったので、当日のメモ書きを頼りにそれぞれの発言を少し振り返ってみます。まずは坂井さんの問題提起から。                          

【坂井】日本の教育は富国強兵の時代から変わらず、注入主義であり、上からの教科主義。詰め込み教育で競争激化し、中曽根内閣時の臨教審から、ゆとり教育へ。受け身だった学習を能動的学習にしていくことが求められました。GIGAは、学校では「How to~」(どうやって使うの?)の次元で、そこには学力観、学びの変革が見えず、今までの学びの中に端末が入っただけという状況。導入が遅れたため、理念が共有できず、自治体がそれぞれの解釈をし、全体の統一はありません。保護者は、個人情報漏洩を心配し、視力低下などの健康不安を訴えます。支配していく勢力に対して、私たち自身がどういう武器を持ち、力をつけ、情報を扱えるようしていくのか。日本をどういうところにもっていこうとしているのかが見えません。みなさんの意見をききながら考えていきたい。
【吉澤】2020年3月の全国一斉休校措置により子どもたちが学校に行けない状況になり、デジタルの波に学校が乗り遅れていたことが露呈されました。5月に保護者へのアンケート活動を行い、端末を活用したいと思うかと問うと、ほぼ100%がそうしたいと回答。その声を教育長、区長に届けました。今、教育現場は面白くなっていて、イエナプランの学校や、チャータースクールもできています。でも僕は地域の学校、地域の公教育の現場が変わるのがいいと思っています。学校に行かない人にとって、プラットフォームが整備されることは「個別最適化」です。自分がありたいと思うところに使える「武器」です。学校と地域の連携と言われていますが、現場は実態がありません。そこでデジタル・プラットフォームが力を発揮します。防災訓練に学校のネットワークを使うなど、地域防災のあり方も変わると思います。学校側が汎用性に気づくことで、地域社会を動かしていくようになればいい。
【保坂】GIGAスクールがどういう変化をもたらすか? 教育問題に区長としてどう取り組むか、ということですが。オランダにリヒテルズ・直子さんを訪ねて、イエナプラン教育を見てきました。オランダは300人の親が望めば学校を作らなくてはならないということになっています。世田谷では、希望ヶ丘中学の跡地に「ほっとすくーる希望ヶ丘」を作り、若林中学校の跡に教育総合センターを作ります。来年4月には不登校特例校をつくり、また演劇など芸術を学べる公立学校をぜひ作りたいと思っています。2020年3月の一斉休校で現場は大混乱。何とかしなくちゃだめだよ、と1500人の署名が届きました。教育に関する変革要求は、ほぼすべて経済からやってきます。期待される人間像。工業化社会に適応した人間を作る。その結果、指示にしたがう、オリジナリティや批判精神の全くない若者が育ちます。学校関係者は、「起立、礼、着席!」と昔からの一斉授業から全く変わっていません。GIGAスクールが一斉授業を変え、新しい教育を作っていく可能性もあるのではないか。一斉授業ではなく、自分で自分のプログラムを作ったり、学校の外に出て、チームで取り組むことができるチャンスにもなるのでは。でも、日本社会全体が縮んでいき、総合的な力量が衰えている今、GIGAスクールがそこに飲み込まれていく危険性もあります。
現状は?
【坂井】こどもたちはうまくつかいこなすので、任せられます。ほとんどの場合先生の許可のもとで使用しているのが現状。クラウドも広がりを持たず、区内の他の教師とのつながりもない。
【保坂】教室の中で姉妹都市の子どもたちとつながることもできる。時差があまりないアジアの複数の国々とつながったり、日本語を学ぶ学校とつながったり、と可能性はあります。
【吉澤】日本中で新しい学びに接しているこども、プレゼンをしたいこどもたちもいます。こどもが自分で学びたいことを、先生がコーディネートし、サポートしていくのがいいのではないか。
【保坂】吉澤さんたちの署名が、教育行政の背中を押しました。2019年11月に、桜ケ丘中の西郷校長(当時)、尾木ママ、吉原毅さんと私の4人でシンポジウムをした時には、世田谷の学校をこう変えてほしい、というアンケートが500通も集まりました。
【坂井】端末を校長などの管理職、教育長ももっていない。専科の先生も持っていないので、日常の業務には役立っていません。セキュリティーの問題が優勢になっています。学校の先生の考えは変わりません。一斉教育の延長に端末があり、学ぶことの感覚が変わらず、注入主義的な傾向は変わらないのです。
【吉澤】先生にタブレットをうまく使って、と期待せずに、子どもたち自身、そこにつながる大人たちに期待した方がいい。学校って何?という時に、子ども第一に考える。学校を変えていかなくては。
【保坂】上からでなく、真横から子どもをサポートするのがいいですね。学校の役割を縮め、生活指導を廃止し、先生が過労死するのを防がなくては。先生には、ぜひとも市民としての時間を取り戻してほしい。市民として生きていない教員に、どうしてシチズンシップ教育ができるでしょうか。教師の自己解放が必要です。タブレットを通過して、現実の中にどう入っていくのか。リアルと絡み合わせていくことが大切でしょう。
【坂井】ICTを選ぶかどうかはこどもに任せましょう。ICTを進めているのではなく、自立して学ぶ姿勢が生きる力になるのです。指導するのはおかしい。学びを自らの手に、何を使うのかは本人が決める。学校でシャーペンや鉛筆を使うように、道具として使う。自分の主人は自分自身です。

【GIGA構想、二回いろんなお話を伺い、少しずつ見えてきたものもあります。ITかアナログかなんて問題ではないし、坂井さんのいうように、「学びを自らの手に、自分の主人は自分」、そのためのGIGAスクールでなくてはなりませんね。経産省主導ではなく、自分たちでいい方向につかんでいくこと、これをこれからの課題にしたいと思います。世田谷方式を作り出し、学校を変えたい!と切に願います。まだまだ続けていきましょう。次号で、今回書ききれなかったみなさんからの質問や感想文を載せたいと思います。参加された方、ぜひお考えをお寄せください】 (文責・星野弥生)

★なくそう戸籍と婚外子差別 の集会に参加しました
通信で何度も触れている「婚外子差別」をめぐり、世田谷の窓口で不適切な対応があった2016年からもう5年。区の地域行政部長、戸籍課長との7月21日の話し合い、7月25日に武蔵境で行われた講演会に参加してきました。28日には区長室でも話しました。「差別がわかっていない」「職員に人権教育ができていない」という声ももっともですが、この件に限らず、教育委員会でもそうですが、行政の縦割りの弊害が根底にあるな、ということ。横の情報共有がまるでできていない。ここを打破しない限り、保坂さんのいい区政も色あせてしまう、とつくづく感じました。このことはまた追って報告します。                           (星野弥生)

          * * * いろいろ告知板 * * *
★「もっと語ろう不登校 part. 259 9/4(土)2pm~ @フリースクール僕んち
ZOOM参加もできます。 fsbttofu@yahoo.co.jp までご連絡ください。8月はお休みです。
★羽根木プレーパーク リーダーハウ建て替えのためのクラウドファンディング開始!
つうしん6月号でお知らせし、一部の方には超カッコいいチラシを同封した、クラウドファンディング。控えめにゴールは300万円とありましたが、またたくまに到達。400万円ほどが集まりました。だれでも応援したくなるプロジェクト。まだ締め切りまで余裕があります。ぜひお力を!
https:motion-gallery.net/projects/leaderhouse1991_2021  ちなみにこのチラシを作り、羽根木プレーパーク世話人代表の荒木直子さんはこいのちとは切っても切れない縁。お世話になってます!30年の間、子どもたちを見守り続けてきたリーダーハウス。みんなのプレーパーク、みんまだまだ応援しましょう! どんなリーダーハウスになるのでしょうか。
★保坂展人と政治学者・中島岳志さんの共著『こんな政権なら乗れる』(朝日新書)の出版を記念したトークイベントhttps://www.youtube.com/watch?v=5Up2K6KENvg ぜひ観てください。本も売れてます!
★星野弥生の気功教室:毎月第二、第四金曜5時半~7時20分(経堂)、毎月第二、第四日曜日の10時~12時(代々木公園)などでの、誰でもできる気功です。よかったら元気になりに来て下さい。(問合せ 070-5554-8433 星野弥生 気功学習室ブログに案内があります。)
★日曜科学クラブは、原則として月の第一日曜日の午後、ボラセンで開いています。小学生から大人まで仮説実験授業を、平林浩先生と楽しんでいます。お問い合わせは星野弥生まで。

世田谷こどもいのちのネットワークの仲間になってください。つうしん、お知らせが届き、講演会などの参加費が無料になります  年会費3000円 郵便振替口座00100-9-396998
(こいのち事務局)連絡先:星野弥生 Tel&Fax 03-3427-8447 070-5554-8433            email:marzoh@gmail.com