我が家の愛猫・とらは、運動能力が尋常ではありませんでした。 猫じゃらし等の猫用玩具で遊んでやる時も飼い主が本気で相手をしないと遊んでくれませんでした。 何でも飼い主が操る癖を見抜くように直ぐに捕えるのでした。 飼い主が、不規則に玩具を操りとらの興味を引くように猫用玩具を操らねば飽きるようでした。
中でも驚いたのは、玩具を天井に向けて操ると、飛び上がって、空中で頭を下に向けるように飛び変えて姿勢を変えるのでした。 そして空中で玩具を拝み取りしました。
これには、本当に驚きました。 武道、中でも合気道では、投げられて空中で姿勢を変換して受け身を取ることがありますが、其処までです。 空中で姿勢を変えて何かを掴み取りして両脚で立つことは出来ません。 人間の体は、猫のようには柔軟性が無いのです。 従って、猫には、合気道の関節技は無効です。 猫の体はそれ程に柔軟なのです。
以下は、この猫にしてこの飼い主と題した字数300字の小話です。
「うん。 この仔は可愛い。」と獣医さん。 「でしょう?」と自慢げに由里。
ここは、とある獣医院。
「健康状態には、問題がありませんので、予防注射をします。」と獣医さんが注射器を手に取った途端、愛猫・とらが由里の手を離れフーと鶏冠を立てて怒りの様相。 慌てる獣医を傍に、バッと空中に舞い、診察室と待合室の境目にあるカウンターを飛び越えた。
途端にその後を追い、左手を前に出した由里がカウンターを頭から飛び越え、待合室の床に左手をつき丸く回転して受け身。 立ち上がり様にとらが飛びついた窓枠に飛び、両手を出して確保。
待合室に居た犬猫多数と飼い主さん達が見入る中、愛猫を抱え颯爽と診察室に戻る由里。
期せずして大拍手あり。