これが国連特別総会の人道的休戦決議の日本語訳全文 グローバルサウス諸国が中心となって作成

 10月27日、国連第10回緊急特別総会で、決議「敵対行為の停止につながる人道的休戦」が、圧倒的多数で可決された。日毎に緊迫度を増すパレスチナ・イスラエル問題の今後を展望する上で画期的な決議だが、その日本語訳全文はまだ外務省や国連広報センターから発表されていない。そんな中、10月31日、ラテンアメリカ現代史研究家の新藤通弘さんから、日本語訳全文が発表された。

 新藤さんによると、決議案「敵対行為の停止につながる人道的休戦」は40カ国により共同提案され、賛成121カ国、反対14カ国、棄権45カ国、欠席14カ国で可決された。米国、イスラエルなどが反対し、日本政府は、「ハマスのテロ行為に対する強い非難がなく、バランスを欠いている」として、棄権に回った。
 新藤さんによると、各国の決議の投票動向は、下記の通りだが、この決議案は、いわゆるグローバルサウス諸国を中心に作成され、よく吟味されており、合理性と説得力があり、フランス、スペイン、ノルウェー、ベルギーなどのNATO諸国も賛成に回ったという。
 この総会決議に従い、パレスチナ・イスラエル戦争を、国際法に基づき、人道的休戦を実現し、早急に終止して、これ以上の大規模な人命の損失を避けなければならない、と新藤さんはいう。

決議「敵対行為の停止につながる人道的休戦」
■国連総会での投票行動
共同提案国=40カ国
バーレーン、バングラデシュ、ベリーズ、ボリビア(多民族国)、ボツワナ、ブルネイ・ダルサラーム国、コモロ、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、ジブチ、エジプト、エルサルバドル、インドネシア、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、マレーシア、モルディブ、モーリタニア、モロッコ、ナミビア、ニカラグア、オマーン、パキスタン、カタール、ロシア連邦、セントビンセント・グレナディーン諸島、サウジアラビア、セネガル、ソマリア、南アフリカ、スーダン、トルコ、アラブ首長国連邦、ベネズエラ(ボリバル共和国)、イエメン、ジンバブエ、パレスチナ

賛成=120力国
アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アルゼンチン、アルメニア、アゼルバイジャン、バーレーン、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボツワナ、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、コートジボワール、キューバ、朝人民共和国人民共和国、コンゴ民主共和国、ジブチ、エジプト、フランス、ガボン、インドネシア、イラン、アイルランド、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、クウェート、レバノン、リビア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、マレーシア、モルディブ、マリ、マルタ、メキシコ、モンゴル、モンテネグロ、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニュージーランド、ニジェール、ナイジェリア、ノルウェー、オマーン、パキスタン、ペルー、ポルトガル、カタール、ロシア、サウジアラビア、セネガル、シンガポール、スロベニア、ソロモン諸島、ソマリア、南アフリカ、スペイン、スリランカ、スーダン、スイス、シリア、タイ、東ティモール、トルコ、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ベトナム、イエメン、ジンバブエ

反対=14力国
オーストリア、クロアチア、チェコ、フィジー、グアテマラ、ハンガリー、イスラエル、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パプアニューギニア、バラグアイ、トンガ、米国

棄権=45力国
アルバニア、豪州、ブルガリア、カボベルデ、カメルーン、カナダ、キプロス、デンマーク、エストニア、エチオピア、フィンランド、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハイチ、アイスランド、インド、イラク、イタリア、日本、キリバス、ラトビア、リトアニア、モナコ、オランダ、北マケドニア、パラオ、パナマ、フィリピン、ポーランド、韓国、モルドバ、ルーマニア、サンマリノ、セルビア、スロバキア、南スーダン、スウェーデン、チュニジア、ツバル、ウクライナ、英国、ウルグアイ、バヌアツ、ザンビア

無投票=14力国
ペナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、エスワティニ、ジャマイカ、リベリア、ルワンダ、サモア、サントメ・プリンシペ、セーシェル、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラ(ベネズエラは、共同提案国だが、国連分担金が未納で、投票権ない)

<決議の日本語訳全文>
占領下の東エルサレム及びそれ以外の占領下のパレスチナ地域におけるイスラエルの非合 法的行動

バーレーン、バングラデシュ、ベリーズ、ボリビア(多民族国)、ボツワナ、ブルネイ・ ダルサラーム国、コモロ、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、ジブチ、エジプト、エル サルバドル、インドネシア、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、マレー シア、モルディブ、モーリタニア、モロッコ、ナミビア、ニカラグア、オマーン、パキス タン、カタール、ロシア連邦、セントビンセント・グレナディーン諸島、サウジアラビア、 セネガル、ソマリア、南アフリカ、スーダン、トルコ、アラブ首長国連邦、ベネズエラ (ボリバル共和国)、イエメン、ジンバブエ、パレスチナ:

民間人の保護と法的・人道的義務の遵守

総会は、国際連合憲章の目的と原則に導かれ、パレスチナ問題に関する関連決議を想起し、 1949 年 8 月 12 日のジュネーブ条約第 1 条に基づき、あらゆる状況において国際人道法を 尊重し、その尊重を確保する義務を再確認し、
安全保障理事会の以下を含む関連決議、1967 年 11 月 22 日の決議 242(1967)、1973 年 10 月 22 日の決議 338(1973)、1979 年 3 月 22 日の決議 446(1979)、1979 年 7 月 20 日の決議 452(1979)、1980 年 3 月 1 日の決議 465(1980)1980 年 6 月 30 日の 決議476 (1980)、1980 年 8 月 20 日の 決議478(1980)、1994 年 3 月 18 日の決議 904(1994)、2002 年 3 月 12 日の決議1397(2002)、2003 年 11 月 19日の 決議1515(2003)、2008 年 12 月 16 日 の 決議1850(2008)、2009 年 1 月 8 日の 決議1860(2009)、2016 年 12 月 23 日の 決議2334 (2016)を想起して
子どもと武力紛争を含む、武力紛争における文民の保護に関する安全保障理事会決議も想 起して、
2023 年 10 月 7 日の攻撃以来の暴力の最近のエスカレーションと、この地域、特にガザ地 区と東エルサレムを含むその他のパレスチナ占領地およびイスラエルにおける状況の深刻 な悪化に重大な懸念を表明して、
すべてのテロ行為および無差別攻撃、ならびにすべての挑発行為、扇動行為、破壊行為を含め、パレスチナおよびイスラエルの市民を標的としたすべての暴力行為を非難して、
敵対行為の遂行において、区別、必要性、比例性、予防措置の原則を堅持する必要性を想起して、
国際人道法および国際人権法に従い、民間人が保護されなければならないことを強調し、 この点で、民間人の多大な犠牲と広範な破壊を嘆き、
また、説明責任を追求する必要性を強調し、この点で、国際基準に従って独立した透明性 のある調査を確保することの重要性を強調し、
ガザ地区における壊滅的な人道的状況と、主に子どもたちを含む民間人に対するその甚大な影響に重大な懸念を表明し、完全かつ緊急で、安全で、妨げのない持続的な人道的アク セスの必要性を強調し、
事務総長の努力と、ガザ地区のパレスチナ民間人の最も基本的なニーズに応えるため、人道援助の即時かつ無制限のアクセスを求める同事務総長の呼びかけに対する強い支持を表 明し、食糧、水、医薬品、燃料を持続的かつ大規模に供給する必要があるという事務総長 のメッセージを強調し、この点でエジプトが果たした重要な役割に感謝の意を表明し、
また、敵対行為の即時停止を達成し、民間人の保護を確保し、人道援助を提供することを 目的とした、地域および国際的なあらゆる努力に対する強い支持を表明し、

1 敵対行為の即時停止につながる、永続的かつ持続的な人道的停戦を求める;
2 すべての当事者に対し、国際人道法および国際人権法を含む国際法の下での義務、特に民間人および民間対象物の保護、人道要員、非戦闘員、人道施設および資産の保護、なら びにガザ地区で必要なすべての民間人に必要な物資およびサービスが届くよう、人道的ア クセスを可能にし、促進する義務を、即時かつ完全に遵守することを要求する;
3  また、ガザ地区全域の市民に対し、水、食料、医療品、燃料、電気を含む、またこれら に限定されない、必要不可欠な物資とサービスを即時、継続的、十分かつ妨げずに提供す ることを要求し、国際人道法上、市民が生存に不可欠なものを奪われないようにすること が不可欠であることを強調する;
4  国連パレスチナ難民救済事業機関、その他の国連人道援助機関およびその実施パートナー、赤十字国際委員会、その他人道主義を堅持し、ガザ地区の市民に緊急援助を提供する すべての人道援助団体に対し、即時、完全、持続的、安全かつ妨げのない人道的アクセス を求め、人道回廊の設置および市民への人道援助提供を促進するその他のイニシアティブ を奨励し、この点に関する取り組みを歓迎する;
5  また、占領国イスラエルが、パレスチナ市民と国連職員、人道医療従事者に対し、ワ ジ・ガザ以北のガザ地区全域から避難し、ガザ南部に移転するよう命じたことを撤回する よう求める。また、民間人は国際人道法の下で保護されており、どこにいても人道支援を 受けるべきであることを想起し、繰り返し表明するとともに、民間人、特に子どもの安全 と幸福を確保し、その保護と安全な移動を可能にするための適切な措置を講じる必要性を 改めて表明する;
6  パレスチナ民間人の強制移動のいかなる試みも断固として拒否する;
7  違法に拘束されているすべての民間人の即時かつ無条件の解放を要求し、彼らの安全、 幸福、そして国際法に則った人道的待遇を求める;
8  また、この地域の武力紛争において、病院やその他の医療施設、その輸送手段や設備、 学校、礼拝所、国連施設を含むすべての文民・人道施設、ならびにすべての人道・医療要 員、ジャーナリスト、メディア関係者、関連要員を、国際人道法に沿って尊重し、保護することを求める;
9  武力紛争が、難民や避難民を含む女性や子どもたち、また、障害者や高齢者など、特定 の脆弱性を持ちうるその他の民間人に与える影響が特に深刻であることを強調する;
10 同様に、国際法および関連する国連決議に従い、パレスチナ民間人の保護を確保する 仕組みを緊急に確立する必要性を強調する
11 さらに、国際連合施設とすべての人道的施設の保護を確保し、支援隊が妨げられるこ となく移動できるようにするため、人道通報メカニズムの重要性を強調する;
12  同地域における暴力のさらなる不安定化と拡大を防止することの重要性を強調し、こ の点に関し、すべての当事者に対し、最大限の自制を求めるとともに、影響力を有するす べての者に対し、この目標に向けて努力するよう求める;
13 イスラエル・パレスチナ紛争の公正かつ永続的な解決は、関連する国連決議に基づ き、国際法に従い、二国家間解決に基づく平和的手段によってのみ達成されうることを再 確認する;
14 10回緊急特別総会を一時休会し、直近の総会議長に対し、加盟国の要請があれば総会を再開する権限を与えることを決定する。
(1) 国際連合条約シリーズ 75 巻 970-973 号。
(新藤通弘 仮訳)

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