ご家族にお悔やみ申し上げます-フランシスコ・トレド氏追悼

Mi mas sentido pesame para su familia.

昔々若いころ,シティからバスでオアハカを通ってアカプルコへ抜けたことがあります。オアハカ市では大聖堂だけを見た覚えがありますが,写真は撮らない,下調べはしない方針でしたので今となっては後悔するばかりです。単なる通り一遍の旅行者ではだめで,住んでみないと芸術や文化に十分触れることができないと,若気の至りで考えていたからです。
 故加藤周一は「生きている古代-メキシコ峡谷で」(日本の内と外,文芸春秋,1977版)で『-現代メキシコは文学に貧しく,音楽に豊かならず,造形美術(狭い意味での芸術)において,もっとも活発な国なのである。昔のメキシコは――そこにも大学があり,音楽もあったにちがいないが,今日掘りだしてながめることのできるものは,いうまでもなく建築・壁画・彫刻・陶器の類にほかならない。』と記しています。
 スペインの植民地支配から抜け出て苦難の道を歩んできたメキシコ。最近はその中でも新自由主義による多国籍企業の進出により大いに揺らいでいる。その中でメキシコ(中・南米)を代表するF.トレド氏がマクドナルドのアアハカ市への出店に反対したという。地方の文化を護らずしてその国の文化を守ることは難しいだろうと思う。
 美術を専門としていないのでうまく表現できないが,マヤ・アズテクの彫刻と成都の三星堆の仮面は独特である,と思う。メキシコへは今度が3回目の訪問となるが,F.トレド氏から三星堆の仮面について一度お話を聞きたかった。ご冥福をお祈りしたい。