たんぽぽ舎から No.2089

たんぽぽ舎です。【TMM:No2089】
2014年2月14日(金)地震と原発事故情報 -3つの情報をお知らせします
転送歓迎
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★1.原発を「重要なベース電源」とする主張は誤り
「震災の教訓」の欠如、「未来への責任」の欠如(シリーズ その3)
(山崎久隆)
★2.新潟県知事定例会見(2月6日)から非常に重要な部分を抜粋します
・技術委員会で東電が示した「メルトダウン時の情報発信の在り方」
・原子力防災部会で出された広域避難行動指針<案>
★3.新聞・雑誌から
◇福島甲状腺がん、7人増加33人に    (2月8日 東京新聞より)
◇作業員「本音書けない」 東電アンケート 元請け経由回収
(2月12日 東京新聞朝刊より)
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┗■1.原発を「重要なベース電源」とする主張は誤り
│「震災の教訓」の欠如、「未来への責任」の欠如(シリーズ その3)
└────山崎久隆(たんぽぽ舎)

2月1日午前10時から、BS朝日の「激論クロスファイア」で「日本の原発
を今後どうする!?」と題して、京都大学原子炉実験所山名元教授と多摩大学
大学院田坂広志教授が議論をしていた。とはいえ、特に原発反対と賛成という
違いがあるわけではなく、原子力を利用する立場からの問題点の議論だった。
しかし論点の前提条件に大きな違和感を感じたので、何度かに分けて原発再
稼動への反論をする。

○原発が今止まっているのは何故か

2013年9月に原発が全部止まったのは、原発そのものの欠陥が原因だ。
地震や津波に耐えられない「安全基準」を作り、度重なる警告(人間からも
自然からも)を無視し続けた結果、福島原発震災を引き起こしたから止まった。
「原子力の欠陥」が原発を止めている。
これを解消しなければ動かせないわけだが、新規制基準でも原発の構造欠陥
を解決できていない。
原子炉水位や温度や圧力が正確に分からないまま、手探りで冷却を試みてい
た福島第一の教訓を生かすならば、いかなる事態でも正確に原子炉水位や温度
などを捉えられる機器類の開発がまず取り組まれるべきであるが、そんな気配
さえない。原理的に不可能だからだ。
原子炉内部の状態も分からず対応せよとのシビアアクシデント対策は、福島
以前は対策とは名ばかりの対処方法が書かれていないマニュアルだった。
いまもシビアアクシデント対策は電源車を追加して冷却材用の水を入れる入
口を作った程度のものだ。例えば地震に対する制御棒駆動系のシステムや配管
の脆弱性は、そのままである。
福島原発事故が停止の失敗では無かったので考慮する必要が無いとの判断で
あろう。だが地震による制御機能の喪失が次の原発震災かもしれない。そのよ
うな危機感をみじんも感じない。
また、使用済燃料プールの安全対策が十分ではないことも問題だ。単に注水
方法を多重化したのではダメである。冷却水を失う事態になっても燃料崩壊を
防ぐ対策を取らねばならない。極めて困難であるため、そんな対策は放棄され
ているが、シビアアクシデント時には燃料プールが必ず冷却できる補償などは
無いと考えるべきである。
原発が原理的に稼働できない欠陥を有し、日本は地震津波火山大国であるた
めに、その欠陥がさらに増幅される。原発が重要なベース電源どころか、原発
こそが電力供給を阻害してきたことを認識すべきだ。

○原発・電力供給を阻害

東電は発電量の2割ほどが原発だったが、関電は4割を超えていた。設備容
量も東電が2割程度なのに関電は3割近かった。(全国では2010年度で設
備容量は2割、7割弱の設備利用率で3割の発電量)
この結果、原発が全部停止した直後には電力供給に問題が生じた。それは事
実である。東電の場合は夏のピーク時ではなく震災直後のことだ。東京では計
画停電が実施された。ただし時期が3月中・下旬で年間を通じて電力需要の少
ない時期だったから、計画停電をしなくても大停電にはならなかったと考えら
れる。
夏のピーク時であれば広域停電に至った可能性もあった。
関電は、その年の夏に広域停電の恐れが生じた。大飯をはじめいくつもの原
発は動いていた。この時の危惧は、電力需要がピークを迎えているときに若狭
湾周辺で地震が発生し、原発が全部停止する事態を想定してのことだ。東北地
方太平洋沖地震の発生により、日本各地で地震が起きやすい状態になっていた。
若狭湾も例外ではない。その結果、大地震ではなくても原発を止める震度5程
度の地震が起きていただけで、関西広域停電が起こりえたのである。
電力需要の多くを原発に依存していれば、この程度で広域停電になる危険性
は全電力会社にある。
結局、原発をベース電源として位置づけ、それに依存し続ければ、原発停止
がただちに広域大停電の引き金になってしまうことを認識すらしていない主張
を何時までもし続ける人たちの意見は聞くべきものは何もない。
<次号へつづく>

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┗■2.新潟県知事定例会見(2月6日)から非常に重要な部分を抜粋します
│○技術委員会で東電が示した「メルトダウン時の情報発信の在り方」
│○原子力防災部会出された広域避難行動指針<案>
└────(福島原発事故緊急会議MLから)

2月6日の新潟県知事定例会見から、原発関連で非常に重要な内容を抜粋で2点
紹介します。 定例会見の全文は新潟県HPからご覧ください。
2月6日会見全文 http://chiji.pref.niigata.jp/2014/02/post-9231.html

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○「技術委員会」で東電が示した資料「メルトダウン時の情報発信の在り方」
について。いつまで嘘をつき続けるのか、全く反省のない東京電力。
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【Q】先日行われた県技術委員会の課題別会合において、メルトダウンに係る
情報発信について新たにまとめられた資料が東京電力側から提出されました。
(中略)資料に対する知事の受け止めを伺います。
【A知事】まとめたことにはなっていません。例えば、官邸という人はいま
せん。誰から誰に話があったのかは全く明らかになっていないので、空気だと
か組織の名前を挙げても説明したことにはなりません。情報を正しく出さなか
ったというところに(話を)持っていきたがっていますが、以前から申し上げ
ているとおり、(東京電力は)私のところで嘘をつきました。3月14~16
日頃だったと思いますが、技術系の人に来てもらったのです。「ジルコニウム
を8時間も空炊きすれば当然溶けているでしょう」という話をしたときに、
「確かに知事のおっしゃるとおりでジルコニウムは溶けています。しかし、中
のペレットが縦に繋がっているのです」という説明をしました。これは解析で
きる、できないという話ではないのです。そもそも8時間も空炊きしておいて
解析しないとメルトダウンしたかどうかわからない組織であれば、一番基礎の
基礎を知らないということですから原発を運転する資格はありません。(東京
電力は)本当に嘘をつき続けるのですか。メルトダウンというのは一番真ん中
から熱がこもって(燃料棒が)溶け落ちてくるのです。これはJNES(独立
行政法人原子力安全基盤機構)の教育訓練用ビデオにもあるのに、そういうこ
とも知らない人がいるのです。また、福島第一原発と繋げて行われたテレビ会
議において、当時、武藤原子力・立地本部長が「メルトダウンでいいですね」
と確認をしたところ「結構です」と答えたやり取りが公開されています。そう
した中で空気だとか情報がよくわからなかったという説明で通ると思っている
のであれば、それはあまりにも馬鹿にした話なので全く評価していません。
—–
○「原子力防災部会」で出された広域避難行動指針<案>についてのコメント
—–
【Q】避難計画に関しては、広域避難行動指針の第1案が先日行われた新潟県
防災会議原子力防災部会で明らかになりましたが、県の方としても、まだまだ
今の段階では未熟なものだというような評価もあったようです。今後(フィル
タベント設備との)整合性をとっていく上で、県の避難計画をどのように作り
上げていくのかについてはどのようにお考えですか。
【A知事】(中略)例えばギロチン破断が起きたときに、早いタイミングで言う
と2時間でメルトダウン起きて放射性物質の放出が始まるわけです。夜中の2
時、3時頃で、雪が降っている中で全員が避難できるのかと。あまり伝えてい
ただけなかったようですが、今度の指針(案)の中には、いわゆる核シェル
ターに避難し、一時待機するということも含んでいます。5km圏の人の全員
について、車で外に避難するということだけで対処できるとは考えていません。
実際のシミュレーションを踏まえてどう対応するのかを考えていく必要がある
と思います。ちなみに20km圏、30km圏というところで見たときに、米
国の基準だと人口が多すぎて柏崎刈羽原発は設置不可となります。そのような
場所ですので、避難計画と整合性をとらないフィルタベント設備のオペレーシ
ョンは考えられないのではないでしょうか。田中委員長からは相変わらず返事
がないのですが、規制委員会は住民の生命と安全を守る気があるのかどうかと。
(中略)

【Q】広域避難行動指針(案)を発表するに当たって、まだ国から回答をいた
だいていないと言いますか、課題を解決していただいていない部分が多々ある
というような報告も県側からありました。その点については、国に対してどの
ように対応する考えをお持ちですか。
【A知事】せめて米国並みの対応をすぐに行うべきだと思います。法改正もし
ない、指揮命令系統の調整もしないということで、何も行っていないのではな
いでしょうか。(中略)例えば福島第一原発の4号機は線量が高くて入れなかっ
たわけです。水素爆発がなければ使用済み燃料プールでメルトダウンしていた
わけです。そうすると格納容器がありませんので、ダイレクトに放射性物質が
拡散されることになります。高線量の中で誰が行って措置するのでしょうか。
何も決めないでおいて、また違法行為を求めるのか、それとも決死隊で行くぞ
とやるのでしょうか。米国は制度が決まっているのに、(日本は)何もやって
いないという状況だと思います。

○会議資料は次のURLからダウンロードできます。
「技術委員会」(2月4日開催)の資料
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356773832365.html
「原子力防災部会」(2月3日開催)の資料
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356777508851.html

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┗■3.新聞より
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◆福島甲状腺がん、7人増加33人に
(2月8日 東京新聞より)
東京電力福島第一原発事故による放射線の影響を調べている福島県の「県民
健康管理調査」の検討委員会が七日、福島市で開かれ、甲状腺がんと診断が
「確定」した子どもは前回(昨年十一月)の二十六人から七人増え三十三人に
なった。「がんの疑い」は四十一人(前回は三十二人)。(中略)
しこりの大きさなどを調べる一次検査で約二十五万四千人の結果が判明し、
千七百九十六人が二次検査の対象となった。
「確定」と「疑い」に、手術の結果「良性」と判明した一人を含む計七十五
人のうち二十四人について、原発事故が起きた二〇一一年三月十一日から四カ
月間の外部被ばく線量も公表。一ミリシーベルト未満が十五人、一ミリシーベ
ルト以上二ミリシーベルト未満が九人だった。
国立がん研究センターなどによると、十代の甲状腺がんは百万人に一~九人
程度とされてきた。(後略)

◆作業員「本音書けない」 東電アンケート 元請け経由回収
(2月12日 東京新聞朝刊より)
東京電力が、福島第一原発で働く作業員の待遇面など労働環境改善のために
実施しているアンケートを、元請け企業を通じて回収していることが分かった。
作業員たちの話では、下請け企業の中には、作業員の回答を提出前にチェック
したり、回答の内容を指示したりするところもある。作業員からは「こんなや
り方では実態は分からず、改善につながらない」という声が上がっている。
アンケートは、東電が事故後に福島第一原発で働く作業員を対象に始めた。
作業員の立場は弱いため、回答者が特定されないよう、匿名で、通常は所属会
社や元請け、年齢なども記載しなくていい。
東電はアンケートの記載内容に配慮しながら、回収する段階では元請け任せ
に。回答用紙は「作業員→所属する下請け→上位下請け→元請け」というよう
に会社を通して回収。東電へは元請けからまとめて郵送されるという。
作業員が特定される恐れを小さくするためには、作業員が線量計を借りに立
ち寄る東電の管理施設に、回収箱を置くなどして直接回収をする方法も考えら
れる。
ある作業員は「(上位下請けから)下手なことを書くなというプレッシャー
がある。従業員の書いた内容を全部確認してから封筒に入れ、提出させられ
た」と話す。線量計の不正使用を目撃しても見なかったと書くよう指示された
作業員もいたという。
東電の担当者は「回答用紙は作業員が記入して封筒の封をする。中身は(元
請けなどに)見えないようになっている」と回収方法は適切だとする。
東電は作業員を安定的に確保するため、昨年十二月の契約分から元請けへの
支払いを増やし、日当をかさ上げすると発表。作業員に適切に行き渡っている
かどうか、今後アンケートで確かめるという。
だが、作業員からは「会社にチェックされているかもしれないと思うと、変
なことは書けない」との声も上がっている。

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