どうする!<天皇制>~イギリスの君主制が手本?

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5月6日「NOT MY KING」などを掲げ、
トラファルガー広場に集まった人々、多くの人が黄色いものを身に着けている。戴冠式も英国国教会の教義を守ることを宣誓する宗教的儀式であるが、全額国費でおこなわれ、約166億円と言われている。イギリスにおいても2018年の世論調査では無宗教が52%を占めているという。

ハフポストUS版によれば、5月6日、イギリスの戴冠式当日、デモの前やデモのさなかに50人以上が逮捕された。メトロポリタン警察の関係者は「我々は、関連する法律に従い適切に取り締まる義務があります。また、抗議が犯罪に発展し、混乱を引き起こす可能性がある場合に介入する義務もあります」と主張するが、その法律というのは、戴冠式に先立つ5月3日に施行された、警察による平和的なデモの取り締まりをより強固にする「公共秩序法」だったのである。
しかし、ロンドンのトラファルガー広場に集まった市民たちは、戴冠式反対、君主制反対のプラカードをかかげ、戴冠式が行われるバッキング宮殿へと行進した。

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バッキンガム宮殿に向かうデモ隊、大きなプラスターには「君主制反対」とあり、黄色い帽子の女性は「バッキンガム宮殿をホームレスのシェルターに」と訴えているではないか。右側の高く掲げられているプラスターの文字がはっきりしないのだが、下の方には「GENOCIDE PAST」上方には「CRUMBLING UNDEMOCRATIC HANGOVER」(反民主手的な遺物を粉砕?)と読める。写真の2枚は下記より借用https://www.huffingtonpost.jp/entry/anti-monarchy-group-slams-coronation-arrests_jp_64584bbce4b0452cee9e9428

 

日本での天皇代替わりの一連の儀式を思い出さないわけにはいかない。2016年8月8日の明仁天皇の生前退位表明以来、政府、皇族周辺が急にあわただしく動き出し、17年6月16日には“静かな環境の中で”議論したという「天皇退位特例法」が公布された。19年4月1日には新元号「令和」が発表された後の、出典が「万葉集」ということで、歌人まで巻き込むほどだった。19年5月1日に徳仁皇太子の新天皇即位前後の一連の儀式を経て、19年11月14・15日には「大嘗祭」が行われた。5月1日は「剣璽等承継の儀」は何やらあやしい「三種の神器」の受け渡しに始まり、即位後朝見の儀、10月に入って、即位礼正殿、三日にわたっての饗宴、11月22日祝賀御列の儀と続き、あの異様な雰囲気の中で進められる大嘗祭に至るのである。

しかし、これらの儀式に先立つ2018年10月1日、詩人や研究者、宗教家ら13人が、これら一連の儀式が、憲法の「政教分離」「主権在民」の原則に照らして多くの問題をはらみ、これらに対する国費、税金が支出されるのは明らかに違憲と考えられるので税金の支出の差し止め請求と違憲を求める訴訟を呼びかけた。呼びかけ人の一人、関千枝子さんから、原告になってくださいとの丁寧なお手紙をいただいた。関さんとは、その数年前、市川房枝記念会での講演会を聞きに伺ったとき以来、私の方から年賀状などを差し上げる間柄であった。私たち夫婦は、訴訟委任状に納税を証明する書類、源泉徴収票のコピーを裏に貼って、提出した。2018年12月10日、原告241人と13人の代理人弁護士は、東京地裁に「即位の礼・大嘗祭等違憲差止請求」訴訟を提訴した。その後原告は最終的に318人となった。提訴当時はさまざまなメディアで報じられたので、覚えていらっしゃる方も多いだろう。その後、差止請求が分離され、最高裁でも棄却され、終結してしまったが、現在は、即位・大嘗祭違憲訴訟の「国家賠償請求」分の口頭弁論が続いており、さまざまな曲折はありながら、2023年5月31日に第15回口頭弁論、6月21日に第16回口頭弁がなされる。弁護団は大部の準備書面を提出しているにもかかわらず、被告側の国の代理人弁護士は何もしない、何も言わない、という不誠実な対応が続いているという。東京地裁の裁判官は、原告の証人尋問は認めても、研究者らの証人尋問は「陳述書」で足りるとして、直接口頭での証言は必要ないという姿勢をとっているのが現況である。

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下記の「即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS」の最新号と一緒に届いたリーフレットである

 

なお、この代替わりの儀式に、いったいどれほどの国費が費やされたかというと、以下の表がわかりやすい。

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『東京新聞』の調査による。記事本文「皇位継承式典関係費133億円、当初予算より支出27億円減、18~20年度、概要などの公表なく」(2021年7月15日)。たしかに、2018年12月皇位継承式典事務局作成の「皇位継承式典関係(一般会計)予算額(案)」によれば、160億8500万であり、その詳細も分かる。なお、この「予算額(案)」では、昭和から平成の代替わりの折の予算額とも比較できる。
https://www.kantei.go.jp/jp/content/yosangakuan31_ichiran.pdf

 

裁判の進行は、「即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS」01号(2019年1月25日)から17号(2023年5月9日)によって知ることができるのだが、コロナ禍とも重なり、いまだ傍聴には出かけていない原告で、申し訳ない気持ちでいっぱいである。

原告になってと誘ってくださった関千枝子さんは、2021年2月に逝去された。「後期高齢者、人生最後の闘いになるかもしれません」などとお手紙にあったが、裁判所で出かければお目にかかれるものと思っていながら、私の怠慢が悔やまれるのであった。

初出:「内野光子のブログ」2023.5.25より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/05/post-891fc5.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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