サンパウロの外山尚之日経特派員によれば,今月16日だと思うが,国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は経済混乱で食料や医薬品不足が深刻化するベネズエラに支援物資を搬入した。
これは伊高浩昭氏が指摘していた通りである。国際機関・国連を通してなんぼでも援助できる。なぜアメリカは単独でコロンビアからべネスエラに支援物資を運び込もうとしたのであろうか。しかも以前に送られた支援物資の中には機関銃や通信機器などが入っていた。べネスエラ国内を政情不安定にする意図が見え見えである。
ペンス副大統領はプラジルの副大統領らの武力侵攻絶対反対に対して「(トランプ大統領には)テーブルの上にはあらゆる選択肢が載っている」と言った。しかしこれは「脅し」ではなくて,「捨て台詞」である。間違えてはいけない。米州機構のほとんどの国々が軍事侵攻に反対なのでペンスはそれを諦めたのである。
他方,トランプ大統領と省内高官(ネオコン派)の考えは異なる。例えば国務省は暫定大統領グアイドを教育したが,教育したのはブッシューオバマ政権の官僚たちである。また確かにトランプは一方的だが,北朝鮮の金委員長と2回も会った。我が国の首相ができない相談であるが米高官が望んでいたことなのであろうか。
ところで,初稿のP.C.ロバ-ツ氏によれば「トランプ大統領はボルトンによってハメられつつある」という。もしこれが本当ならば,トランプと補佐官・省内高官との意見の対立はいよいよ明らかである。
話を戻すと,マドゥロ大統領は16日「ベネズエラへの支援は国際的な対話に基づいたものだ・・」と述べたという(上掲・日経)。国連と対話を通して国際的に援助する枠組みが動き出しと言える。また外山特派員の「支援物資の到着はベネズエラ国内の人道危機を緩和する一方、人道支援をテコにマドゥロ政権の退陣を迫っていた米国や野党陣営は戦略の修正を余儀なくされそうだ」という記述は省内高官たちの政策変更を表していると思う。すなわち,トランプに武力・軍事侵攻の考えはない。
最近,ポンペオとボルトンの喧嘩が絶えないという。その真偽を知らないが,ポンペオがロシアのソチでプーチン大統領と会談した。そのこともまたトランプにべネスエラ・イラン侵攻の意思がないことを意味するだろう。
しかしトランプによるイランへの経済制裁は,石油を買ってはダメだというものであり,ロシア-ドイツ間の天然ガスパイプライン建設を止めよというトランプの口出しも恐れ入る。
以上のように見てきたとき,伊高浩昭氏の指摘される「米帝国主義」がべネスエラやイランそしてドイツにも現れていると見るのが自然であろう。