むちゃくちゃな維新の対共産議員懲罰動議 ー 見えてくる維新の本質

(2022年2月18日)
 今通常国会の予算審議が、はや大詰め。2月15日に衆院予算委で中央公聴会が開かれ、これが異様な進行となった。正確に言えば、公述人の一人の発言が異様だった。その公述人の名は原英史、国家戦略特区ワーキンググループの座長代理である。一般民間人ではなく、安倍政権の規制緩和路線を支えてきた人。安倍の行政私物化と言われる加計学園獣医学部設立認可にも、責任を負うべき立場の一人なのだ。公述人として推薦したのは、自民党ではなく日本維新の会。

 原は冒頭、「今日は、国会における誹謗中傷の問題に絞ってお話ししたい」と切り出し、どう幅広く解釈しようとも今年度予算案とは無関係の発言に終始。その内容は、加計学園の獣医学部設置にからむ国家戦略特区疑惑について報道した「毎日」記事や、これに関連した野党合同ヒアリングのあり方を問題とし、「毎日」や野党議員との間の訴訟についての自分の主張を読み上げたもの。さらに、映画「新聞記者」のストーリーが間違っているとの見解についても述べられた。とうてい、予算審議の公聴会における公述としてふさわしいものとは考えがたい。

 この異様な公述について、共産党の宮本徹が原英史を批判した。「自らの抱える案件について私的な反論をとうとうと述べられた。公聴会の在り方としてふさわしいのかという点で言えば、甚だ疑問だ」という趣旨。公述人として推薦した維新の「責任も問われる」とも述べた。私もこのときのビデオを見たが、宮本の発言は穏やかでまったく違和感は感じられない。この発言で紛糾した事実もない。

 このとき、宮本は原に対して一問だけ質問している。ワーキンググループが加計学園の獣医学部設置に関して特別扱いをしたのではないかという疑惑を前提に、要となるピンポイントの質問。「平成30年4月開学という重要条件が加計学園にだけ知らされ、競合する京産大には知らされなかった。そのため、最も有力視されていた京産大は断念に追い込まれた。いったい誰の指示で『平成30年4月開学』という重要条件が付け加えられたのか」。原はこれに答えず、明らかなはぐらかしに終始した。宮本から「質問にはお答えにならない。ですから、国家戦略特区とは行政私物化につながる仕組みになっていると、私たちは申しあげているわけです」と釘を刺されている。

 この公聴会に出席していた維新の議員は足立康史。原の面目が潰されたとでも思ったのか、日本維新の会は17日この中央公聴会での宮本発言を、「院の品位を著しく毀損する」ものとして、懲罰動議を提出した。これでは、議論が成り立たない。

 日本維新の会側の懲罰動議の理由は、同日(2月17日)藤田文武幹事長が記者会見でこう語っている。
 「15日の衆院予算委員会の公聴会で維新の会推薦の公述人に対する宮本氏の発言を巡って、大変、失礼な発言があった。推薦した、わが党の責任を問うようなことをおっしゃられた。宮本議員の方が反省すべき、撤回すべきだ」

 また、維新の馬場伸幸共同代表は、「一般の方の意見への誹謗中傷は社会人としておかしいのではないか。度重なれば公述人が意見を正々堂々と述べることに臆する場面も出てくる」と説明している。原を「一般の方」と同列に置いての立論である。

 宮本の「弁明」は以下のとおり。

  「中央公聴会は以下の衆議院規則にのっとって運営されるべきです。
 衆議院規則第76条 公聴会は、議員又は議長から付託された議案の審査のためにこれを開くことができる。
 同第83条 公述人の発言は、その意見を聞こうとする案件の範囲を超えてはならない。
予算委員会の公聴会の案件は、いうまでもなく、新年度予算案です。
公聴会の朝の理事会で、『国会における誹謗中傷について』と題する原公述人のペーパーを見た理事から、公聴会の趣旨にそってなされることを期待するという、旨の発言がありました。しかし、朝の理事会で表明された期待のようには、公聴会は、運びませんでした。様子は、衆議院のインターネット配信でご覧になれます。
そこで、私は、議会人としての責任を果たすべく、公聴会での質疑に際し、
・予算委員会での公聴会は、予算案について国民の意見をきき、その後の審議にいかす場であるということ
・原公述人の公述は、自らの抱える案件について私的な反論をとうとうと述べられるものであったということ
・予算委員会の公聴会のあり方としてふさわしいのかという点でいえば、甚だ疑問に感じていること
・推薦した会派の責任も問われること
を述べました。
原公述人の公述後の予算委理事会でも、あらためて宮本から、原公述人の公述について、予算委員会公聴会にふさわしくないと、前代未聞の事態ではないかと指摘しました。予算委員会ベテランの理事からも、長い間予算委員会をつとめてきた経験から、予算委員会の公聴会の性格について、大事な指摘がなされました。一方で、維新会派の理事の方からは、宮本の発言は公述人に失礼であり抗議すること、推薦会派への言及があったので議事録を精査して対応する旨の発言がありました。
その後、16日、17日と予算委員会理事会がひらかれましたがその場で、この問題について、維新会派からは発言がないままでしたが、突然、本日、17日、維新会派のみなさんから、宮本徹への懲罰動議が提出され驚きました。
公聴会のあり方としてふさわしいのか、宮本の問題的を受けとめないばかりか、逆に、威圧的に懲罰動議をだし、自らへの批判を封じようとするやりかたは、いかがなものでしょうか。」

 以上が、昨日までの話し。本日(2月18日)の赤旗を見て少し驚いた。維新と、原とのつながりの深さにである。新自由主義・規制緩和路線は、自民党や安倍政権の専売特許ではない。維新も大きく積極的に関与してきたのだ。維新の会が、原が主宰する会社に、政党助成金から毎年数千万円もの資金を提供し、その額は16~20年の5か年分で、1億5000万円にものぼるという。以下、その抜粋である。

  日本維新の会が、15日の衆院予算委員会中央公聴会で陳述した原英史氏(維新推薦)が代表取締役を務める政策コンサルティング企業「政策工房」(東京都)に対し、税金が原資の政党助成金から毎年数千万円もの資金を提供していたことが、総務省が公表した政党交付金使途等報告書でわかりました。

  原氏は現在、大阪府・市の特別顧問。2011年に橋下徹大阪市長、松井一郎府知事が立ち上げた府市統合本部の特別顧問に就任するなど、維新と深いつながりがあります。また、13年に安倍晋三内閣のもとで設置された国家戦略特区ワーキンググループでは発足当初から委員に就任し、17年以降、座長代理を務めるなど安倍元首相ともつながりのある人物です。

  16~20年分の使途等報告書によると、日本維新の会が「政策業務委託料」として、政策工房に毎月200万~300万円を提供。16年分の総額は3888万円、17年分は3564万円、18年分は2916万円、19年分は2608万円、20年分は2640万円で、5年間の合計は1億5616万円にのぼります。

 分かり易い。維新とは、こんなにも深く新自由主義路線に取り込まれ、こんなにも親密に国家戦略特区ワーキンググループとも結びつき、結局のところ安倍国政私物化政策ともつながっていたのだ。今回、はしなくもその一端を印象づけられることとなった。

 それにしても、維新の懲罰動議はむちゃくちゃである。こんなことを許してはおけない。議会制民主主義の健全化は、世論の監視の成否にかかっている。維新が、何をしても許されると勘違いして暴走するとき、議会制民主主義が壊れていくことになる。多くの国民の目と耳とで維新の本質を把握し、きちんと批判しなければならない。手遅れにならぬうちに。

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.2.18より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=18588
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion11768:220219〕