獄中のイメージ イラワジ
本年6月、NLD政権のトップだったアウンサンスーチー氏は、一般住宅での自宅軟禁から首都ネピドーにある刑務所内の独居房へと移された。扇動、収賄、新型コロナウイルス関連の規則違反、電気通信法違反などまったくのデッチ上げの犯罪容疑で訴追され、予想される禁固刑の量刑は、累計で100年以上、最高で190年にもなるという。そこにスーチー氏を一生涯刑務所に閉じ込め、ジャバに出で民主化闘争の舞台に立つことを不可能にするという軍事政権の強い意思を感じ取ることができる。NLD政権で大統領を務めてきたウィンミン氏も、同様に刑務所内の特設独居房に移された。イラワジやミャンマー・ナウなどの地元メディアによれば、6月で77歳を迎えたスーチー氏は、生活環境が劣悪にもかかわらず、不満を漏らすことなく、前向きな姿勢を維持していると、担当弁護士が明らかにしたという―担当弁護士は、法廷内での動向をメディアなど外部に漏らすことを禁じられてはいる。しかし先日の出廷の際、弁護士がスーチー氏と苦楽を共にしてきたコ・ジミーら4人の死刑執行を伝えると、さすがに悲しみに深く沈んだ様子を見せたという。しかしその際も、「どうして法の下でそんなことができるの。なぜそんなことをするの。そんなことできようはずがない」と言い返したという。
伝え聞くところでは、ネーピードゥ刑務所のある地域は、立地条件が極めて悪く、夏暑く、冬寒いという。真偽のほどは確認できないが、周辺には藪があり藪蚊が多いという。熱帯地方の蚊の多さとしつこさは、温帯人には想像もつかないほどだ。かゆみに苦しみ、辟易して意気消沈してしまうほどだ。しかも最悪の場合、マラリア蚊という災厄に襲われる可能性もある。
これも未確認であるが、信じられないことにスーチー氏の独房は、雨風が吹き込むという。エアコンなし、6つある窓も最初カーテンが全部になく、スーチー氏の要求でやっとつけ加えたという。食事についても、食が細く、肉類はほとんど食べない食習慣に、軟禁中は専属のコックが対応していたが、今はどうなっているか不明である。先日は入浴中に倒れたという。髪の毛も抜け落ちているという。
そろそろ80歳に近づく高齢のミャンマー人にとって、自由がないことを筆頭に過酷な環境である。軍事政権は、外部との遮断と劣悪な待遇によって氏の抵抗精神を挫こうとしている。それは緩慢な死刑ともいうべきものである。残忍貪欲で、腐敗堕落し、自己中心的で視野の狭い高級軍人には、大義への忠誠と献身というものが、人間精神を高貴にし強靭にすることに思い至らない。
スーチー氏は、「国民に団結するよう(伝えて)」とメッセージをひそかに弁護士に何度か伝えているらしい。ミャンマー民主化闘争の成否は、ひとえに国民の団結力にかかっていること、このことについて指導者と国民はピッタリと意気が合っている。差別と分断を克服し、諸民族が団結し統一してこそ、近代的な国民国家建設の事業が成就しうること、このことの認識を自力で、多くの血の犠牲を払いつつミャンマー民主化勢力はいま勝ち取りつつあるのだ。そしてスーチー氏を生かして取り戻せるかどうか、それもまた民主化闘争の試練となっている。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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