バルセロナの童子丸です。
欧州での難民問題は今から欧州諸国に大きな政治的・経済的・社会的混乱を引き起こすことが予想されます。
スペインにもこの11月に1万5千人ほどがやってくることになっていますが、現在のところ、反対運動などは起こっておらず、国民は平静に受け止めているようです。
というか、カタルーニャ独立問題と年末選挙で「それどころじゃない」ということなのかもしれません。しかしじきにここでも様々な軋轢を産む可能性があります。
今回は、この10月20日にモスクワを訪れたシリア大統領バシャール・アサドとロシア大統領ウラジミール・プーチンの会談を報道するRTニュースの和訳(仮訳)を中心に、中東での動乱と難民の問題に突っ込んでみたいと思います。
お読みになって意義があると思いなら、ご拡散をよろしくお願いします。
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http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/Assad_and_Putin_at_Moscow.html
アサド‐プーチン会談:RT報道の和訳付き
難民たちが故国に戻れる日は来るのだろうか?
シリアで破壊と殺りくを恣(ほしいまま)にしてきたテロリスト集団に対するロシアの空爆が続く間に、今までの西側(米国とNATOの側に付く諸国、諸勢力、諸団体)による誤魔化しに満ち満ちた中東戦略が次々と薄汚い素顔を現してきた。プーチンとロシアの毅然とした電撃的な行動が、その仮面を剥ぎ落としたのだ。
ペンタゴンと米国政府自ら、シリアの反アサド「穏健」派への支援作戦が「間違っていた」ことを認め始めた。彼らが「穏健」派と称する(主要にアルカイダ系テロリスト)集団に大量の武器を与えてきたのだが、それがISIS(イスラム国)の手に「渡っていた」と白状せざるを得なくなったのだ。6億ドルをかけた「穏健」派テロリストへの支援計画が失敗に終わり、オバマは「最初から懐疑的だった」と言い訳に大汗をかいている。今まで西側は、それらの全てを「独裁と戦う民主主義」と主張してきたのである。
ロシアの空爆は、軍事同盟を結ぶシリアからの要請で国際法規に沿って行われている。しかしその以前のおよそ1年の間に、西側は、一切のシリア政府の了承なしでシリア領空内に軍用航空機を送り込むという、国際法と国連憲章に対する最大限の違反を繰り返した。しかも彼らはその理由をイスラム国と戦うためだ… と主張し続けた。ところが実際には、その間にイスラム国はますますその勢力を拡大させた。一方で同じ時期に膨大な数の難民たちがトルコから欧州に押し寄せてきた。
シリアへの爆撃は、イスラム国には言い訳程度の損害を与える(それも怪しいものだが)、米国民の税金をペンタゴン契約企業の懐に大量に注ぎ込む兵器の大量消費でしかなかった。大々的に公開されて出た人質の斬首ビデオやローマ遺跡の破壊は、そのための理由作りだったのではないか、とすら疑いたくもなる。その爆撃の一方で、英国と米国の空輸によって大量の兵器が、またトルコ国境を通して膨大な量の兵站物資が、湯水のようにイスラム国に注ぎ込まれ続けたのである。
こんな西側の大嘘と誤魔化しは今に始まったことではない。シリアでの「内紛」が始まった当初から延々と続いている。その必然的な結果として現われてきたのが膨大な数の戦争難民であることは、いまさら言うまでもあるまい。下記の記事を参照のこと。
世界を大動乱に導こうとする悪魔ども
現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機
プーチン:国連総会の演説で、難民危機の元凶「民主主義革命の輸出」を糾弾
いま大勢の人々がクロアチアやスロベニアの原野と畑の中で、警察と軍隊に囲まれて、冷たい雨に濡れ泥まみれで震えながら、ドイツや英国に向かう順番を待っている。こちらのテレビではその様子が連日のように報道されるのだが、迫りくる東欧の冬の極寒の中で、おそらく相当の数の凍死者や餓死者、病死者が出るのではないかと案じられる。これらの難民たちが棄ててこざるを得なかった自分たちの故国に戻ることができるのは、いつの日になるのだろうか。
もちろん、とりあえず今この人々が命をつなぐことのできる措置は必要だ。しかし私は、これらの人々は、故国のシリアやアフガニスタンなどに平和が確立されて再建が始まるまでの期間に限定した「一時避難民」であるべきだと思う。それも、彼らの国を荒廃させた元凶となる勢力が責任をもって引き受けるのが当然の筋道だと思っている。たとえば、その50%を米国が、30%を南欧と東欧を除くEU諸国(特に英国とフランス)が、そして20%をトルコが、それぞれ滞在場所を準備してこの人々を引き受けるべきだろう。そしてその費用の全額をサウジ王家と湾岸諸国支配者どもが負担すべきだろうと思う。
いま、難民問題を前にドイツやフランスなどで盛り上がる「極右主義」への非難と警戒が叫ばれている。しかしその中に、難民を作り出し続ける元凶を取り除いて彼らの故国の再建を助けようという声が挙がらないのは、いったいどういうわけだろうか。彼らがあくまでも「一時避難民」であり戦争と荒廃の原因が取り除かれて湖国の再建が始まれば国に戻る、というのであれば、排外主義も問題視されるほどには大きくはならないのではないのか。永住する「移民」になるから問題なのだ。しかし、西側マスコミはもちろんだが、「人権」を語る者たちからも、「排外」を叫ぶ者たちからも、そんな当たり前の筋道が語られることはない。
実際には、シリアに踏みとどまり過酷な状況の中でテロリストと戦うシリア国民こそが、その当たり前の筋道を最も求めている。そしてそれを率いるアサド大統領は、世界に対してその当たり前の筋道を語りかける。現在の軍事行動でテロリストを一掃し、それに続いて政治的なステップが踏まれ、国民が求める自国の未来作りが開始される…。彼は、「いったんテロリストたちが打ち破られれば、経済的・政治的にその国を再建するため、そして全員にとっての平和共存を確保するための、一致した努力が払われるだろう」という見通しを述べる。
以下に、2015年10月21日付ロシア国営RTの記事の和訳(仮訳)を掲げておきたい。これは2015年10月20日に、モスクワを訪れたシリアのバシャール・アサド大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領の会見と、その内容に関連する3人の専門家たちのインタビューをまとめた記事である。
Assad to Putin at Moscow talks: Terrorists would seize larger areas if Russia did not act (Published time: 21 Oct, 2015 06:32 Edited time: 21 Oct, 2015 09:25)
https://www.rt.com/news/319244-assad-putin-talks-moscow/
もちろんだが、戦争や外交に関するあらゆるマスコミ報道は常にある種のプロパガンダである。RTなどのロシアのメディアによるものはロシアのプロパガンダとなっているので、このような記事を読む場合にも我々には冷静さが必要である。しかし我々は、今まで何十年間も常に、西側メディアのプロパガンダに満ち溢れる大嘘・捏造・歪曲・事実無視等々、そしてそれに基づくいかがわしい主張に散々付き合わされ続けた。ベトナム戦争や湾岸戦争まで遡るまでもない。9・11‐アフガン侵略‐イラク戦争以後だけでも十分だ。
今回の「難民問題」一つをとっても、その元凶と解決までの筋道を明確に示すのは、残念ながらロシアの報道だけである。西側諸国で流布される上っ面だけか捻じ曲げただけの報道に基づいて、物事を判断しなければならない理由は、もはやいささかもあるまい。
なお、訳文中の斜体で【 】で囲まれた部分は、原文ではビデオや写真、ツイッター画面が挿入されている。英語の分かる人は原文でビデオをご覧いただきたい。原文に挿入された参照記事の案内は斜体にして原文のままで載せ( )内にその訳 を付けておく。また太文字強調斜体の部分は、原文では斜体で記されている発言内容の箇所である。
2015年10月23日 バルセロナにて 童子丸開
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【引用、翻訳、開始】
アサドはモスクワでプーチンに語る:もしロシアが行動しなかったなら、
テロリストはもっと多くの土地を奪っていることだろう
2015年10月21日06時32分 (編集:2015年10月21日09時25分)
【ビデオ: モスクワでアサドを迎えるプーチン】
ロシア大統領ウラジミール・プーチンと、シリア大統領バシャール・アサドは火曜日にモスクワで会談した。このシリア指導者は、ロシアの行動はテロリストたちが彼の国でより大きな土地を奪うことを阻止していると言った。
クレムリンの報道官ドゥミトゥリー・ペスコフは「昨日の夕方、シリア大統領バシャール・アサドは職務目的の旅行でモスクワに到着した」と語った。「(プーチン)大統領はシリア大統領から、シリアの国情とその長期計画についての情報を得た。」
両首脳は長時間をかけて交渉を行ったが、それはロシアの政府高官たちの出席の下で続けられた。
【写真: https://cdn.rt.com/files/2015.10/original/56274344c46188a6228b45c4.jpg】
【写真説明: クレムリンでの会議で、ロシア大統領ウラジミール・プーチン(右から3人目)とシリア大統領バシャール・アサド(左から2人目)。右から国防相セルゲイ・ショイグ、外相セルゲイ・ラブロフ。© Alexei Druzhinin / RIA Novosti】
ウラジミール・プーチンは、シリア国民は膨大な死を耐えしのびながら何年間も「実質的に独力で」 テロリストたちと相対してきたと語った。そして、最近になってこの戦いで重大なかつポジティブな戦果を達成していると付け加えた。
ロシアは、中東情勢を不安定化させようと試みるテロリストたちに、深い関心を持つこととなった。「不幸なことに、彼らの中の少なくとも4000人を占める旧ソヴィエトの諸共和国出身者が、シリア軍と戦っている」からだと、ロシア大統領は言った。「当然ですが、その者たちが、そのあらゆる戦闘経験と浸り続けた政治的洗脳を用いてロシアの領土に現われるような事を、我々は許すわけにはいきません。」
【ツイッター: http://twitter.com/RT_com/status/656607539992379392/photo/1】
【上記のツイッターから接続するRT記事:‘Too many aircrafts in Syrian airspace’: MoD posts video with Russian jet approaching drone (「あまりにも多くの飛行物体がシリア領空にある」:無人機に近づくロシアのジェット戦闘機のビデオを国防省が投稿)】
シリアはロシアの友好国であり、モスクワは、テロと戦うだけではなく、他の世界と地域の勢力と協力して、シリアに平和な政治状況をもたらす準備を整えている、とプーチンは述べた。
「疑いようも無く、シリア国民だけが決定力のある言葉を所有しなければならないのです」とプーチンは強調した。
READ MORE: Russia, US sign cooperation deal on Syria airstrikes (参照: ロシアと米国はシリア空爆の協力協定に調印)
バシャール・アサドは、主権と統一のための戦いでシリアに提供した支援に対して、ロシアに感謝を述べた。
「もしロシアがいなかったら、テロリストたちはずっと多くの領地を占領していたことでしょう」。アサド大統領はこのように語り、政治的なステップが軍事行動に続くことになる、と付け加えた。「我々全員の唯一の目的は、シリア国民が自国のための未来として求めるものでなければなりません。」
READ MORE: ‘Assad doesn’t have to leave tomorrow, can be part of transitional process’ – US State Department (参照: 「アサドは明日去る必要はなく、移行プロセスの一部となることが可能だ」―米国国務省)
いったんテロリストたちが打ち破られれば、経済的・政治的にその国を再建するため、そして全員にとっての平和共存を確保するための、一致した努力が払われるだろう。このようにアサドは結論付けた。
「ロシアが国際的な場面で主導的な役割を果たすのを我々は見ています」。地政学のアナリストであるパトリック・ヘニングスンはRTに対して語り、西側のイスラム国を打ち破る努力は「何の明らかな結果も出せないままずるずると続いて」 いると述べた。
(ビデオ: パトリック・ヘニングスンへのRTのインタビュー)
ロシアは「4年の間続けられてきた秘密パーティーに文字通り押し入った」のだと、ヘニングスンは言った。「米国、トルコ、ヨルダン、そして英国やフランスといったNATO同盟国は今まで暗闇の中で作戦を展開できました。ロシアがまさしくそこに割って入り、灯りのスイッチを入れて、パーティーは終わったぞ、と言ったのです。」
「彼らはワシントンで大いにうろたえ、ロシアがとんでもないことをやりやがったと言いながら、いまだに癇癪を起し続けているのです」。 ヘニングスンはこう言って、米国はロシアが新たなアフガニスタンにいるのだというように激しく思いたがっている、と付け加えた。
しかしながら、シリアでのロシアの軍事作戦は「アフガニスタンとは全く異なっています」。ロシアが「正当な民主主義によって選出されたダマスカスの政府によって招待されて」 いるからだ。
【ツイッター http://twitter.com/RT_com/status/654596350894411776/photo/1
#Putin:I don’t get how US can criticize Russian op in Syria if it refuses dialogue(プーチン:私は、米国が対話を拒むのなら、シリアでのロシアの軍事作戦をどのように非難できるのか、理解できない。】
ヘニングスンは、もし西側が本当にテロリストの脅威への対処を真剣に考えているのなら、彼らは、地上軍と現地での最大規模の情報組織を持っているアサド政権と共に作業していただろう、と述べた。
「それはいまロシアがやっていることです。ロシアは中に入って行っただけであり、共に作業すべきキー・プレーヤーと一緒に作業をしているのです。」
READ MORE: ‘Let Russia defeat ISIS, its destruction more important than overthrow of Assad’ – Kissinger (参照: もしロシアがイスラム国を打ち破るのなら、その破壊はアサド放逐よりも重要だ ― キッシンジャー)
ヘニングスンは、最近13ヶ月間に西側の反ISIS連合がイスラム国に落とした22000の爆弾をもってすれば、イスラム国はとうに消滅していなければならなかったはずだ、と付け加えた。
中東研究の専門家であるウィリー・ヴァン・ダンメは言った。米国は「苦境に陥っており、その仲間である西側全勢力‐トルコ‐サウジの同盟は全面的な混乱の中にいて、自分たち自身の内側で議論を続けています。彼らはお互いを信じておらずそれぞれがみな自分自身の考えを持っているのです。」
(ビデオ: ウィリー・ヴァン・ダンメへのRTのインタビュー)
彼は次のように続けた。「シリアを分割したがる者たちがおり、また他は、フランス人のようにシリアを支配したがっており、トルコ人はシリア北部を“スルタン”エルドガンのある種のオスマン帝国に併合したがっています。」
平和運動家でNATO研究の専門家ダニエレ・ガンサーは、イスラム国に対して戦い同時並行的に反アサド武装集団を支援するというペンタゴンの戦略が機能していないと言った。
READ MORE: Putin: MidEast terrorists recruit fighters from ex-Soviet states, seek to expand into other regions (参照: プーチン:旧ソヴィエト諸国から送り込まれた中東のテロリストたちは、他の地域に広がろうとしている)
「ペンタゴンはいつもこう言います。『我々はイスラム国にいかなる武器をも投下することを望まなかった』と。そして彼らはいつも、アサドの過激な敵を支援してはいないと言います。『我々はアサドの穏健な敵を支援する』んだと」。ガンサーは語った。「これにはいつでも区別することの非常な困難さがあります。何年も前にイラクに現われ出た者たちがいて『英国と米国によって投下された武器がある』と言いました。そしてそれらの武器はイスラム国に渡されました。」
(ビデオ:ダニエレ・ガンサーへのRTのインタビュー)
米国は「いつでも次のように言いながら情報の非常に奇妙なごちゃ混ぜを作りました。『そう、我々はアサド政権を転覆させたいと望む』、そして『同様にイスラム国と戦うことを望む』と」。彼は言った。「これは常に、あらゆる平和運動家や、この状況を調べる歴史学者を困惑させてきました。私は、彼らがシリアでの明らかな戦略を持っているとは思っていません。」
【引用、翻訳、ここまで】
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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