アベノミクスとは何だったのか? まとめ③

 ところが,「異次元緩和」は円の対ドル相場下落(円安)と株式相場(代表的には日経平均)の上昇という成果を挙げたという考えもあるようだ。しかし,円安も日経平均のアップも,日本経済の拡大とはほとんど無縁である。日経平均は民主党の野田政権下で8,000円を割り込んでいたが,2013/5のピークまでにおおよそ倍の15,627円に跳ね上がった。これは,経済活動の拡大を反映した相場の変動ではない。服部成幸氏がいち早く指摘したように,自民党の総裁候補として再登場した安倍がデフレ脱却を旗印にしてこれまで以上の金融緩和を唱えてから始まった現象だ。ここでは、後に異次元緩和と称される金融緩和政策を時の有力政党総裁候補そして総裁の椅子を勝ち取り、自民党が宣教で対照し、総裁が首相に成り上がるという経過自体が、株式投資を強く促すお囃子効果を伴った。投機的な利益を追求する傾向の強い外国投資ファンドは、日本の広範な下微雨式投資家が「異次元緩和」お囃子に浮かれると読んで日本の株式市場、さらには外国為替市場で複雑・巧妙な市場操作で莫大な利益獲得を得るべく動いた結果なのである。もっとも、外為市場操作に関しては若干複雑な事情もある。単純化しいえば、円安は円売り(円の対外流出)であり、株高は円買い(外国投資ファンドがドルなどで円を買って株式を購入する)である。全く逆の動きである。伊東光晴氏は、日本の金融緩和を嫌って代わりに行けるような高金利の国はなく、国際的に円が日本から流出条件はなかった。財務省当局の政策的な円売りが行われたという(伊東光晴 「アベノミクス批判」 岩波書店 2014/7刊 第2章3項)。服部氏は、円安と株価上昇を前提とした資金の投機的動きによるとする。外為市場・株式市場は先物取引きという偽装的な取引もあったり、「1/1000秒の早さで先物と現物を組み合わせ、株価の変化から価格差を利用して売買を瞬時に行って行く」という取引の場である。私のような疎いどころか、全くの無知な人間には判定しがたい。ただ、財務当局の政策的、意図的な円安操作をアメリカが容認するのか・・・という疑問には伊東氏は触れていない。円安と株価上昇は投機筋には同時進行が望ましいであろう。そこに素人は操作の余地が無かったか、とも考えてしまう。いずれにせよ、投機的な外国投資ファンドの存在を十分に意識する必要があろう。2012/10から外国投資家は日本株の購入を意欲的に進めている。同年の10~11月に焼く6500億円の買越し、国会解散後は、2012/12~2013/3だけで5兆6000億円の買越しであった(伊東 前掲書 P.19).要するにアベノミクスのお囃子だけで大幅な株価のアップと円安が実現したわけだ.つまり、これはアベノミクスという「政策」の結果では無い.さらに、この円安と株価上昇はアベノミクスが成果を挙げることにほとんど貢献しなかったのである.