アベノミクスの根本的誤りは、現代資本主義に成長を期待した点であろう。少なくとも、安倍側近・ブレーンの「経済学者」は成長を信じていたようだ。安倍首相が「ブレーン」の理屈をどの程度理解してアベノミクスを広言したのかは判らない。ただ、「経済成長」とか「日本経済の復興」などと唱えれば選挙に勝てると思ったであろう。投機的な資金の動きが株式価格を上昇させれば、経済拡大が進んだと喜ぶ人物だ。「日本の経済の高度成長」を知っている人々は、1990年のバブル崩壊以後の日本経済の低迷からの脱却が出来そうだとアベノミクスを当てにした。これは所詮見果てぬ夢に過ぎないが、その点をきちんと説明し、アベノミクスへの期待をいさめる人(経済学者を含め)や政党は皆無だった。
しかし、資本主義のかつてのような成長はもはやあり得ない。自動車産業を中心とする耐久消費財産業基軸の経済発展は終わったのだ。そしてこの基軸産業に代わって資本主義を引っ張る製造業は1970年代以降でも登場していない。そもそも自動車産業自体が第一次世界大戦を大きな梃子としてアメリカで成立したのだ。以後、ナチスのフォルクスワーゲンに始まって、自動車産業は国家の様々な支援で育てられてきたのだ。他方で、中国・ラテンアメリカ・さらにアフリカ諸国での自動車産業などの耐久消費財部門の発展はあり得よう。それは結局、現実に進行しているように、アメリカ、EU、日本などの既存の耐久財部門の市場を奪って行くであろう。そして、こうした新興工業諸国・地域の耐久消費財産業も遅かれ早かれ行き詰まる。
こうして、現代資本主義を観てみると、学者や政治家が経済成長を唱えることが全くの嘘っぱちであると知らねばならない。
ここで、アベノミクスへの論評は一区切りとする。「財政政策」や「成長戦略」、突如登場した「新しい矢」については出来るだけ早い時期に論評をしたい。ただ、この分野?は安倍政権が非常に細かな、細部に及ぶ政策やそれに準じる処置を実施または予定している。成長しない経済を拡大させ、選挙に勝つためにまんべんなく恵みをばらまかなければならない。膨大な書類が積み上がっている。収納の場は電子化されているから問題ないが、それを文書として眼を通すのは余生の無い僕には一生掛かる気がする。こうゆう文書を作成するお役人達も政権の「走狗」役を演じさせられて、楽ではないなと実感する。まあ、空しい万華鏡とも見えてしまう。そして政権は、憲法改正に執念を燃やしている。選挙に勝ち、憲法改正を実現できればアベノミクスの数本の矢が的を射ようと外れようとお構いなしなのではないか?!日本国民は、更に騙されたいのかな?