日銀は、2014年秋(10月末)に国債購入額を従来の年50兆円から80兆円へと引き上げる。いわゆる量的緩和(QE)の拡大だ。2013/4からの異次元緩和は、経済の実態での効果は全く無い。鉱工業生産、設備投資、輸出はすでに指摘したように2年経っても成果なしだ。日銀からの円紙幣の供給を60%増やしたところで状況が変わるわけもない。ただ、金融の淀みは深まり、日本からの円の流出、つまり円安と(設備投資などへの)行き場のない資金が株価を押し上げる効果はこれまでと同様あるだろう。そして、円安は全く輸出増にはつながらず、せいぜい輸出金額の円表示が円安分膨れてあたかも利益が上がったかのような幻想を生み、輸入価格の上昇で国内市場依存の高い企業をコスト高で苦しめ、経済実態の顕著な停滞にもかかわらず、空疎! な株高を表示する。先に引用した田中宇はそのレポートでこの日銀のQEを「無謀だ」と警告したFT紙を紹介し、またカナダ人の経済学者ウィリアム・ホワイトの、このQE拡大で日銀の勘定(バランスシート)が肥大化し、勘定総額の自国GDP比が、世界の他の中央銀行をはるかにしのぐ大きさ(不健全さを意味)になる、という警告も紹介している(田中宇の国際ニュース解説「崩れゆく日本経済」 2014/11/24)。