先進工業諸国の経済成長の著しい鈍化とそれら諸国の自動車産業の顕著な停滞とは軌を一にしている。アメリカの自動車産業は日本の自動車産業のアメリカ国内での生産とその漸増傾向の中でまたヨーロッパからの自動車輸入増もあって緩慢ながら国内市場を侵食されてゆく。戦前からヨーロッパで生産していたGMやフォードは縮小に追い込まれ、日本の自動車産業も輸出減と国内市場停滞から企業によっては経営危機に陥り、例えば日産自動車はルノーの傘下にに入った。ヨーロッパの自動車産業もいち早く劣位に追い込まれたイギリスで、幾つかの企業が先ずフォード社に吸収され、フォード社の弱体化で中国企業に売られている。スウェーデンの自動車会社も類似の経緯を辿っている。国営企業であったフランスの自動車会社は民営化を経て2社が合併し、残る1社が日産を吸収した。要するにサバイバルゲームである。
2008年のリーマンショックと称される国際的金融大破綻で、それまでに経営的に揺らいでいたアメリカ自動車産業は一気に破綻の危機に直面し、一時的な国有化と一蓮托生の危機に直面した労組(UAW)の犠牲(GMの退職者向け医療保険基金積立不足の一部肩代わりと今後の補償額削減、さらに各種労働者保護の権益削減、雇用削減)によって立ち直るきっかけを得る。これでアメリカ自動車産業は生き延びたが、アメリカ社会の安定の中核といわれた中間層の主要階層が失われたと言うことになろう。現代資本主義の社会的安定性の喪失である。