アメリカ連邦最高裁判決「遺伝子特許は認められない」

著者: 田中一郎 たなかいちろう : 「ちょぼちょぼ市民の会」/原子力資料情報室会員
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昨日(2013年6月13日),アメリカ連邦最高裁は,遺伝子について,特許の対象に

はならないとの判決を下しました。別添PDFファイル,及び下記URLはその関連

報道です。

<別添PDFファイル:添付できませんでしたので図書館等でご覧下さい>

(1)遺伝子は特許か?(2013年6月12日付朝日新聞)

(2)米最高裁 遺伝子特許認めず(2013年6月14日付朝日新聞他)

(3)遺伝子特許は認めるべきではない(Jスティグリッツ 『日経ビジネス

2013.6.3』)

<関連サイト>

(1)米最高裁、ヒト遺伝子の特許認めず 国際ニュース  AFPBB News

http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2950270/10902601

(2)朝日新聞デジタル:遺伝子の特許認めず バイオ産業戦略に影響 米最高裁 –

テック&サイエンス

http://www.asahi.com/tech_science/update/0614/TKY201306130482.html

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130614-00000004-asahi-sci

(3)時事ドットコム:自然のDNAに特許認めず=人工合成は有効-米最高裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013061400134

判決のポイントは次の2点だと思われます。

(1)判決は「自然に発生するDNA断片は自然の産物であり、特許は認められな

い」とした

(2)ただ、自然の遺伝子から作られ、実際の創薬や検査に使われる「相補的DN

A」と呼ばれる人工遺伝子は「自然に発生はしない」として、特許が認められると判

断した。

問題は(2)の「相補的DNA」と呼ばれる人工遺伝子がどのようなものか,ある

いは,どの程度のものであるのか,その「人工」性がどこまで求められるのか,です

が,現状ではよくわかりません。仮に,下記のウィキペディアに説明があるような,

単純なDNAの逆転写にすぎないものであるとしたら,それは事実上,遺伝子と何ら

変わるところはなく,この判決はいわば,遺伝子特許を裏口入学の形で認める欺瞞的

なもの,ということになります。

また,遺伝子を特許として認めてきた国はアメリカだけでなく,日本や欧州なども

そうで,そうした国の今後の対応も注目事項です。更に,既にアメリカで認められて

いるたくさんの遺伝子特許はどうなるのでしょうか? これも注目です。

今後の遺伝子組換え特許の動きに注目いたしましょう。基本的な考え方は,日経ビ

ジネスの記事にあるスティグリッツ氏の議論と同じで,遺伝子特許は絶対に認めては

ならない,ということです。インドなどの発展途上国では,欧米先進国の企業の手下

たちが大挙してやってきて,古来よりその有効性が一般的に知られている薬草などの

成分や遺伝子を発見したと言っては「特許」をとり,その後は逆に,原産国であるイ

ンドなどの発展途上国に対して,その薬草などの使用に係る特許料を払えと,訴訟を

起こしたりしています。こうした遺伝資源の略奪行為は「バイオ・パイレーツ」と呼

ばれて,世界各地で厳しく批判されているところです。少なくない日本企業も,その

片棒を担いでいる可能性があります。

<参考>

(1)ウィキペディア「相補DNA]

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E8%A3%9C%E7%9A%84DNA

(相補的DNA(そうほてきDNA、complementary DNA)は、mRNA から逆

転写酵素を用いた逆転写反応によって合成されたDNA。一般には「相補的」を意味

する英語、complementary の頭文字をとって、cDNA と省略される)

(2)バイオパイレーツ

http://peachface.blog92.fc2.com/blog-entry-549.html

(3)遺伝子工学の技術

http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/genetech.htm遺伝子工学の技術

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1334:130614〕