私がテレビと縁を切った経緯は、ちきゅう座に掲載された駄文で明らかになっています。 でも、正確には、日本のテレビと縁を切ったのであって、実はイギリスのテレビ番組、それもミステリィーには眼が無くて「嵌って」しまっています。
イギリスは、ミステリィーの本場です。 推理小説の曙のようなシャーロック・ホームズが主人公の連作に始まり、現代まで実に多くの作家が多肢に亘るジャンルの推理小説を書いています。 そして、それらの作品を元にしたテレビのシリーズが、多くの視聴者を引き付けていますし、私のように、他国の者でも魅惑されてしまうのです。
劇場映画も含めるとSir Arthur Conan Doyleの原作になる“Sherlock Holmes”(シャーロック・ホームズ)ものは、主人公を努めた俳優も多数になりますが、テレビのシリーズで言えばITVのシリーズで主演したJeremy Brettがなり切っていたように思います。 シリーズの途中でWatson役が交代した不自然さが残念ですが、交代したEdward Hardwickeも良い味を出していましたので不満はありません。 この番組は、昔、NHKでも放映していましたね。
1980年代から長期に亘る放映で国民的な人気を博した“Inspector Morse”(モース警部)のシリーズも、一時NHKで放映されていたのですが、本国ほどの人気は出ませんでしたね。 Colin Dexter の原作は、著者がオックスフォード(Oxford)の古典学者なので原文で読むのには苦労します。 でもテレビなら映像の助けで理解が容易になる、と思いきや、テレビはテレビで原作者がシナリオを書いているので、なかなか犯人が分からず術中に嵌ってしまいます。 何でも、人気が出てしまい、原作だけでは足りずに、テレビ番組用に著者が幾本かの脚本を書いたそうです。 それに、この番組は、原作者が出演することがあるので、楽しみです。 でも端役なので、何時出演するのか注意が要ります。 ドラマを離れた楽しみがあるのです。
主演のJohn Thawは、残念ながら亡くなりました。 私は、彼が主演したシリーズでは、“Kavanagh Q.C.”のシリーズも好きです。 これは、ミステリィーではありません。 Q.C.(Queen’s Council)つまりイギリス独特の「法廷弁護士」の物語です。 日本では想像も出来ない社会派のドラマで、見所は法廷での言葉のフェンシングです。 愛妻との死別をも乗り越えて正義を具現するために、法廷で闘うQ.C.が格好良いです。 伝統に則り法廷で法律家が被るかつらがイギリスらしいです。
さて“Inspector Morse”の続編とも言うべき番組があります。 Morse亡き後のOxfordを舞台に、彼の補助をしていたKevin Whately扮するLewisが主人公のシリーズ(“Lewis”)です。 “Inspector Morse”と良く似た雰囲気のシリーズですが、また違った味があり面白いです。 ドラマの中でも“Inspector Morse”の残影が幾らか感じられますし、余程人気があったのですねMorse
警部は。 Oxfordでは、「Morse警部のOxfordツアー」なる観光客向けのガイド・ツアーがあるほどですから。 それにしてもOxfordの関係者が犯罪に関わっている設定も多いこのシリーズの撮影に、大学がその施設を提供するのは大変度量が広いと思います。 日本なら問題が拗れることでしょう。
次には、BBCで放送中の“George Gently”のシリーズを御紹介しなければなりません。 Alan Hunter 原作のシリーズは、1950年代から著されたものですので、Martin Shaw主演で50年代から60年代が設定の作品を映像化するにあたっては、歴史考証が必要です。 でもBBCはこの点ではそつがありません。
私が好きな俳優であるMartin Shaw主演のドラマでは、他に “Judge John Deed”があります。 これは、幾分破天荒な裁判官を主人公にしたものですが、個人的には、女性に関して少し弱点を持つ設定が不愉快です。 “George Gently”の硬派のイメージの方が好きですね。 これは人に依りで、好き好きですが。
BBCでは、“Waking the Dead”も良く出来ています。 Scotland Yardの過去に未解決の事件を新しい視点から再捜査するチームのシリーズです。 緊迫した内容で、最早現代のイギリス警察では、「銃器を携帯しない紳士の警官」等は死語である現実を反映しています。 番組では、短機関銃携帯の特殊班が、犯人を無警告で射殺する場面もあります。
さて、今まで触れませんでしたが、Agatha Christie の原作を映像化したテレビ番組も当然あります。 日本では、こちらの方が人気があるかも知れません。 でも、私は、余り好みではありません。 原作も相当読みましたが、設定が現実的では無いので、趣味には合いません。 女性を主人公にしたものも、余りに不自然で好みではありません。 現実にある犯罪は、暴力的です。 その現実から逃避したような設定を受け入れるには、私のように夢を観ない者では不可能です。
他にも気に入った番組が多くあるのですが、日本では放映されていないのでこの辺で御開きにしましょうか。 終りに、私が、これらのテレビ番組を観たのはイギリスでのことなのか、と御尋ねがあるかも知れませんが、実は、私は、イギリスを訪れたことは無いのです。 ビデオもDVDもある時代ですから。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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