ウクライナで虐殺はあったのか? OHCHRレポートから

ジャック・ボーはどうやら、こちらの買いかぶりだったようで、知りすぎた男The man who knew too much改め、知ったかぶりの男Know it all guyとでも評した方が適切であることがこれまでの考証で明らかになったと思われる。

 

さて当論稿は表題にあるように、ロシア側のウクライナ侵攻正当化理由の一つである、ウクライナにおける虐殺について、引き続き国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告に基づいて考察しようというものである。

 

まず、2014年のマイダン革命以来の非戦闘員死者数の年次推移はこれ。データーの作成時期は今年3月15日。繰り返しになるが、2022年以前では、2014年のドンバス、クリミア半島での内戦激化期が最多となって、年を追うごとに著しく減少していっているのがだれの目にも明らかだ。2022年は言うまでもなくロシアの「特別軍事作戦」と称するウクライナ侵略によって引き起こされた突出した死者数がプロットされている。

 

23-03-24-Ukraine-35th-periodic-report-ENG.pdf (ohchr.org)

続いて、2022年2月のロシアによる侵攻開始前後の非戦闘員死傷者数を見てみるために、22年9月9日付データと6月23日付データとの二つを比較すると、前者が2月全体、後者が侵攻開始日24日から月末までの数字で、圧倒的大部分が侵攻開始以降で生じているのが判る。しかも作成時期が後になると、追加が当然生じている(例えば二つの報告が重複する3月期のそれを見よ)ので、実態としては24日以降にすべて生じていると見てよいだろう。

 

ReportUkraine-1Feb-31Jul2022-en.pdf (ohchr.org)

2022-06-UkraineArmedAttack-EN.pdf (ohchr.org)

結論を言うと、ロシアによるウクライナ侵攻以前では2014年危機とそれの延長期と解される期間での非戦闘員死傷者が大量に発生したが(ウクライナ管理下地域とドンバス親ロ派地域双方の数字が含まれる)、2016年以降は激減しているといえる。もし2014-15年の期間の数字をもって虐殺を言うのならば、その時点でロシアはそれこそ国連安保理なり国連人権高等弁務官事務所なりに提訴していいはずだが、実際には泥縄的に侵攻直前に国連事務総長あてに何等の証拠も示さず、「虐殺」を言い募るお手紙を出したにとどまった。「虐殺」は侵攻を正当化するための言いがかりであり、プロパガンダだったにすぎないと断じてよいのではないだろうか。そうして「虐殺」はロシアによる侵略によって引き起こされたものであると。

 

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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