日本政府の招きで日本を訪れていたキューバのブルーノ・ロドリゲス外相は11月9日、東京・東麻布のキューバ大使館で、キューバとの友好を目指す日本の諸団体の幹部との交流会を開いた。その中で、フィデル・カストロ前国家評議会議長(国家元首)兼閣僚評議会議長(首相)=(87歳)=の現況に言及し、「非常に良い健康状態だ」と語った。
ロドリゲス氏は1958年生まれ。2004年に外務第1次官となったが、2009年3月に更迭されたペレス外相の後任として外相に就任した。2009年に来日したことがあり、今回は2度目の来日。滞在中、安倍首相らと会談した。
交流会は外相自身が望んだもので、キューバと日本側の友好団体との関係を一層深めるために開催された。日本側からは約50人が出席した。
交流会では、まず外相が発言し、これに日本側が質問する形で進められた。最初の質問は「ミスター・フィデルの健康状態は?」だった。
フィデル・カストロ氏は2006年7月に腸内大出血で倒れ、第一線から退き、2008年2月、弟のラウル・カストロ氏に国家評議会議長兼閣僚評議会議長のポストを譲った。 2011年4月にはキューバ共産党第6回党大会で党第一書記を辞任、後任にはラウル・カストロ氏が選出された。
カストロ氏が引退した後も、日本人の間では依然同氏の人気が高く、その動静に関心を抱き続ける人が少なくない。外相への最初の質問が同氏の近況に関するものだったことも、そうした事情を反映したものと思われる。
交流会で話すブルーノ・ロドりゲス外相。左はマルコス・ロドリゲス・駐日キューバ大使
外相のフィデル・カストロ氏の現況に関する発言は要旨次の通り。
「非常に良い健康状態だ。でも、この前の日曜日にフィデルを訪問すると、彼は、自分の体のことについてこう言っていた。もう昔みたいな若い陸軍士官候補生ではないと」
「彼は、今なお、いろいろなテーマに関して中身の濃い仕事をしている(筆者注・共産党機関紙「グランマ」に書き続けているコラム「論考」のことか)。第1は核兵器廃絶問題だ。彼は、核兵器が大量に存在する現状を、人類を滅亡させる最も危険なことだととらえ、警告を発し続けている。彼は日本訪問の折りに広島を訪問したが、そこで強い印象を受け、今でもその時のことをよく覚えている」
「第2は、気候変動の問題だ。彼は、1992年にブラジルで開かれた環境と開発に関する国連会議(地球サミット)で、気候変動について演説した。数ある生命の中で絶滅の危機にあるもの、それは人類であると。今、彼はこう考えているようだ。不幸にも現実は、われわれが想像していたよりももっとひどくなっていると」
「3番目のテーマは、食料生産の問題だ。彼は言う。地球の人口は、10年ごとに10億というスピードで増え続けている。したがって、動物性タンパク質が不足するだろう。だから、植物性タンパク質の生産に力を入れなくてはいけないと。彼はそのための研究をしており、彼自身が種を播く菜園を持っている。また、穀物は燃料の原料としてはならない、人間の食料、動物の飼料として用いられるべきだと彼は考えている」
「彼は日本に愛情を持ち続けている。ヒロシマも忘れていない」
質疑の中で、ロドリゲス外相は「2014年はキューバと日本両国にとって記念すべき年になる」と強調した。外相によれば、仙台藩士の支倉常長らの慶長遣欧使節団がローマへの旅の途中、キューバのハバナに立ち寄ったのが1613年。したがって、2014年は支倉常長一行がキューバに上陸してから400周年という記念すべき年にあたるという。ハバナの中心部には支倉常長の銅像が建てられているとのことだ。
外相は「支倉常長との出会いを通じて日本の文化と接触したことは、キューバにとって画期的なことで、これを機にキューバは国際的視野をもつようになり、世界文化にも触れることができた。それから400年という記念すべき年を迎え、わが国としては、日本との関係を一層深めたい。とりわけ、経済、貿易、文化、観光の面で一層交流が進むことを望む」と述べた。
米国との関係では「静かな関係にある。米国の対キューバ政策は変わらないが、事務ペースの会談は続いている」と述べた。
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