ガザ地区での持続的な人道的停戦を求める 非同盟諸国首脳会議が宣言

 我が国の大手メディアの弱点の1つは、グローバルサウス(アジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの新興国・途上国の総称)に関する報道が極めて少ないことである。日本がG7(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス7カ国と欧州連合=EU)に属していることから、報道にあたっても欧米志向になってしまうのだろう。日本人の「内向き志向」も影響しているのかも知れない。

 先日も、こんなことがあった。
 1月19日から20日まで、アフリカ・ウガンダの首都カンパラで第19回非同盟諸国首脳会議が開かれ、「カンパラ宣言」を採択した。が、これを報道したのは「しんぶん赤旗」の国際面だけで、大手の新聞各紙にはこれに関する記事はなかった。

 非同盟諸国首脳会議は、我が国でもよく知られた存在である。米ソ冷戦下の1961年に、インドのネルー首相、ユーゴスラゥィアのチトー大統領、エジプトのナセル大統領らの提唱によって発足した、25カ国による首脳会議で、非同盟主義を理念とし、「第三世界」の結集を図るのが狙いだった。以来、国際政治に大きな影響を及ぼしてきたが、今では国連加盟国の約6割にあたる121カ国が加盟し、国際政治の上での発言力を強めつつある。さらに、グローバルサウスの動きに世界的な関心が高まっているだけに、その中の政治グループの1つ、非同盟諸国首脳会議の動向が注目されている。
 従って、昨年10月に突発したパレスチナ・イスラエル問題が、世界の人々の願いとは逆にますます混迷を深めつつある今、第19回非同盟諸国首脳会議が問題解決のためにどんな方針を打ち出すかが国際的に注目されていたわけである。

 この首脳会議をフォローし、会議閉会とともに「カンパラ宣言」を全文訳して発表した人がいる。ラテンアメリカ現代史研究者の新藤通弘氏である。
 「宣言」は多岐にわたり、長文なので、ここでは、訳文の一部、パレスチナ・イスラエル問題に関する部分のみを紹介する。

カンパラ宣言の一部
 2024 年 1 月 20 日からウガンダ共和国カンパラで開催された非同盟運動首脳会議の成果文書及びこれまでの NAM (非同盟運動)首脳会合・閣僚会合の成果文書の効果的な実施には、平和と安全、 開発、人権、国際協力の分野で提起された課題に断固として対処するために、すべての NAM 加盟国が最大限の約束と決意を表明することが必要であり、そのために我々は以下 のような共同努力を行うことを宣言する:

1.国連憲章と国際法、特に主権、主権平等、領土保全、不干渉、紛争の平和的解決の原則 を尊重し、促進する;

2.バンドン(1955 年)とベオグラード(1961 年)で規定された創設の原則と目的に基づ き、現代の国際情勢における NAM の役割を活性化し、活力を取り戻し、平和で公平で豊 かな世界を目指す;

3.国際連合を主要な多国間組織として強化し、憲章に明記された目的と原則を完全かつ効 果的に果たす実質的な能力を国際連合に提供する。また、総会決議 62/557 に従い、国際 連合安全保障理事会の改革を包括的かつ統合的に推進し、安全保障理事会を国際連合のよ り民主的で透明性の高い代表機関とする;

4. 国連憲章第 8 章に基づき、国連と関連する地域・準地域機関、調整、または機関との間 で、また、その職務権限、範囲、構成に関して、国際平和と安全の維持と持続可能な開発 の達成に有用かつ貢献できる協議、協力、調整の継続的経過を強化する;

5.外国による占領、植民地支配、外国人支配下にある人民の自決権に関する運動の原則的 立場の正当性と妥当性を再確認し、強調する;

6. イスラエルによるガザ地区への違法な軍事侵攻、パレスチナ市民や民間物に対する無 差別攻撃、パレスチナ住民の強制移住を強く非難し、さらに即時かつ持続的な人道的停戦 を求める;

7. 東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の独立と主権の達成、1967 年以前の国境線 に基づく 2 国家間解決の実現など、イスラエルによる占領の終結に向けた実質的かつ緊急 の進展の必要性を再確認し、パレスチナ国家が国際連合加盟国として認められ、国家共同 体の中で正当な地位を占めることへの支持を確認する;

8. パレスチナの危機と、それが地域と国際平和と安全保障にもたらす大きなリスクは、 憲章に委任された安全保障理事会を含む国際社会の関心を必要としていることを強調しな がら、イスラエルがパレスチナ占領地全域及び占領下のシリア・ゴランで入植地の建設と 拡張活動を続けていることを非難する。この目的のために、国際法に著しく違反するこの 忌まわしい占領を終わらせ、数え切れないほどの総会決議と安全保障理事会決議を確実に 履行する時が来たのである;

9. 紛争の平和的解決、紛争の予防と解決、信頼醸成、紛争後の平和構築と復興における 運動の役割を強化すること。これには、国際法に従い、紛争の早期平和的解決のための国 内、地域、国際的な取り組みを支援することも含まれる;

10. 持続的かつ持続可能な平和のための包括的な和平プロセスを支援し、人的、資金的、 後方支援的資源を全面的かつ最適な形で提供し、兵力・警察提供国(TPCC )と協議の 上、 国別オーナーシップの原則と国際社会の支援に基づき、明確に定義され、達成可能 な職務権限と撤退戦略を提供する;

11. 国連憲章第 8 章に基づき、平和維持と平和構築の分野で、国際連合とアフリカ連合な どの関連地域機関との戦略的協力関係をさらに強化することを支持するとともに、安全保 障理事会決議 2719(2023)に従い、安全保障理事会が承認した AU(アフリカ連合)主導の平和活動に対し、予測可能かつ適切で持続可能な資金を確保することにより、国際連合と国際社会がアフリカ連合の活動に対する支援を強化することを求める;

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