キューバ外務省は7月1日、「キューバは、米国の経済封鎖強化を定めた大統領覚書を拒否する」と題する声明を発表した。米国のホワイトハウスが6月30日に発表した{キューバに対するアメリカの政策強化}と題するトランプ大統領の覚書に真っ向から反論したものである。
米ホワイトハウスが6月30日に発表した一文は次の通り。
本日、ドナルド・J・トランプ大統領は、対キューバ政策を強化するための国家安全保障大統領覚書(NSPM)に署名した。
●本覚書は、大統領の第1期政権下で実施された強硬な対キューバ政策を復活・強化するものであり、バイデン政権によって緩和されたキューバ政権への圧力を再び強化する。
●本覚書は、キューバ政府、軍、情報機関、治安機関に過度の利益をもたらし、キューバ国民の不利益となっている経済慣行を終了させる。
●キューバ軍が管理する企業(たとえばGAESA[Grupo de Administración Empresarial S.A.]およびその関連団体)との直接・間接の金融取引を禁止する。ただし、アメリカの政策目的に資する取引やキューバ国民を支援する取引は例外とする。
●覚書は、米国によるキューバ観光禁止の法令を徹底し、少なくとも5年間の旅行関連取引記録の保存と定期監査を義務づける。
●覚書は、経済封鎖を支持し、国連やその他の国際フォーラムにおける封鎖解除の要求に反対する。
●覚書は、インターネットサービスの拡充、自由な報道、自由な企業活動、自由な結社、合法的な渡航の促進を通じて、キューバ国民への支援を強化する。
●覚書は、危険かつ違法な移民を抑制するために、「ウェット・フット、ドライ・フット」政策の終了を維持する。
●覚書は、米国とキューバの関係が、米国とキューバ国民双方の利益を促進するよう保証する。具体的には、人権の促進、政府統制から独立した民間部門の育成、国家安全保障の強化を含む。
●覚書は、キューバにおける人権侵害、違法な拘禁や非人道的な扱いに関する調査を義務づけ、米国の司法から逃れてキューバに滞在・保護されている逃亡者に関する報告書の作成を求める。
安定し繁栄し自由なキューバの実現を目指して
トランプ大統領は、自由で民主的なキューバの実現に尽力しており、共産主義体制下で長年苦しんできたキューバ国民の声に応える姿勢である。
●キューバ国民は、自由と繁栄への正当な願いを抑圧され、反体制派は、恣意的に拘禁され、政治犯は、非人道的な環境で拘束されている。
●反体制派への暴力と脅迫は、罰せられずに行われており、その家族も報復を受けている。
●信仰者へのハラスメント、市民社会団体による自由な結社の妨害、言論の自由の否定(インターネット接続の制限や報道の自由の欠如など)が存在する。
●キューバ政府は、米国の司法から逃れた逃亡者を匿い、自由で公正な社会の基本条件を満たしていない。
キューバ政権に対する責任追及:トランプ大統領は、第1期政権時に行った対キューバ強硬政策を継続し、キューバ国民と連帯しつつ、政権に責任を取らせる姿勢である。
●第1期において、トランプ大統領は、オバマ政権が進めた片務的な対話路線を覆し、実質的な改革を伴わない制裁緩和に反対して強硬な政策を実施した。
●今回も同様に、トランプ大統領は、断固とした政策を再び採用する。
●トランプ大統領は「大統領として、私はキューバ国民の長きにわたる正義・自由・解放の追求に再び寄り添う」との選挙公約を果たしている。
●最近では、トランプ大統領は、新たなキューバへの渡航禁止措置を実施した。
●覚書は、キューバを「テロ支援国家」と再指定し、米国との法執行協力の欠如、自国民送還の拒否、ビザ超過滞在率の高さなどを理由として挙げている。
これに対し、7月1日に発表されたキューバ外務省の声明は次の通り。
6月30日に米国政府が公表した反キューバ文書は、2017年6月16日にドナルド・トランプ大統領の最初の任期開始時に発出された国家安全保障大統領覚書第5号の再版および修正である。
キューバは、この悪名高い文書の両バージョンを明確に非難し、断固として拒否するものである。
この文書の原本および改訂版は、米国の攻撃的な姿勢と覇権的意図を明白に示すものであり、1996年制定の「ヘルムズ・バートン法」に基づいて、経済的包囲網をさらに強化し、キューバ国民に一層の欠乏をもたらすことで、キューバ国家を支配しその運命を統括しようとする破綻した試みに他ならない。
すでに2017年以降、当時発行された覚書の下で、米国政府は、経済封鎖の極端な強化措置の適用を開始し、それは封鎖を質的に一層有害な次元へと押し上げた。これらの措置はジョセフ・バイデン政権の期間も含めて、8年にわたり維持されてきた。それは現在の物資不足や、キューバ経済が直面する回復・成長・発展が直面している重大な課題を説明するものである。
2017年の原覚書は、米国市民のキューバへの渡航をほぼ全面的に禁止する措置をはじめ、燃料供給網の追跡、送金の妨害、さらには他国政府が自国民のためにキューバの医療サービスを受け入れることに対する制裁措置など、多くの政策の基盤となった。
また、世界中の貿易・金融機関に対してキューバとの関係を断つよう圧力をかけ、我が国で活動する投資家に対する米国内の法廷で訴訟を促し、さらにはキューバをありもしない「テロ支援国家」リストに含めるという中傷的決定を導いた。その影響はキューバ経済に壊滅的な影響を及ぼしている。
このように決定された敵対政策は、国際法および国連の多数の決議に違反している。主権国家に対する経済的強制を攻撃の手段として正当化しようとするものである。それは国全体の政治的意欲を打ち砕き、米国の覇権的支配に屈服させることを根本で狙っている。1992年以来、国連総会がほぼ全会一致で経済・通商・金融封鎖の終結を要求しているのは偶然ではない。
もともとの大統領覚書も、現在の改定覚書も、自らの行動を正当化するために、「民主主義」「人権」「宗教の自由」などの言葉を使用している。これらは、いずれも米国政府の長年にわたる横暴で違法な行為からすれば、まったく相容れない概念である。また文書は、社会主義の破壊と、キューバ経済の資本主義化を公然と目指していることも明示している。
米国の為政者や政治家たちは、こうした行動がキューバ国民のためだと、恥知らずにも主張している。
キューバが直面している課題は、非常に大きく、特に我々キューバ国民が主権を、とりわけ自決権を行使して築き上げてきた国家計画を米国が破壊しようとする企てによって、さらに困難となっている。
キューバが、平和的で安定し、連帯を重視し、ほぼ全世界と友好関係を築いている国であることなど、米国政府には、問題ではない。米国の対キューバ政策は、腐敗しており、反キューバの一部の集団の狭い利害に従うものであり、隣国キューバへの攻撃を生活手段とし、非常に収益性の高いビジネスとしている者たちによって推進されているのである。
初出:「リベラル21」2025.7.04より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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