キューバ(人口約1124万人)が国を挙げて憲法改正に取り組んでいるが、今後の改憲スケジュールが明らかになった。12月2日、東京で開かれた駐日キューバ大使館主催の「第5回全国キューバ友好の集い」で、カルロス・ペレイラ駐日キューバ大使が明らかにしたもので、それによると、改正憲法、すなわち新憲法は2019年4月19日に発布される予定という。
キューバの国会に当たる人民権力全国議会は今年7月22日に改憲草案(新憲法草案)を採択した。その後、この新憲法草案が国民の討議にかけられた。
新憲法草案は全部で224条。うち137条は旧憲法の条文、新たに付け加えられたのは87条(38%)。政府としては、国民からの提案と意見はすべてくみ上げ、考慮する方針で、ペレイラ大使によると、11月15日現在、国内外の700万人以上のキューバ人が討議に参加し、多数の意見が寄せられたという。
今後のプロセスルだが、ペレイラ大使によると、幅広い国民的討議が終わったので、今月16日から始まる人民権力全国議会で新憲法草案が再び審議される。そこで、国民の提案、意見を取り入れた草案が提案され、それが承認されれば、2019年2月24日、国民投票に付される。そこで承認されれば、4月19日発布の運びになるという。
キューバの憲法は1976年に制定された。当時は米ソ二大超大国が対決する冷戦下で、キューバはソ連を総本山とする社会主義陣営の一国だったため、その憲法は理念においても内容においてもソ連憲法の影響を強く受けていた。
そのころに比べ国際社会は大きく、劇的に変わった。キューバ自体も、革命を主導したフィデル、ラウルのカストロ兄弟が相次いでトップの座、国家評議会議長(元首)を退き、今年の4月から、革命を知らない世代のミゲル・デイアスカネル氏がそのポストに就いた。
新憲法草案はそうした内外の変化に対応するために起草されたもので、ペレイラ大使によれば、今回のプロセスは「憲法の全面的改正」だという。そして、同大使は、憲法改正の基本的目標として3点をあげた。①国民の団結強化②法体系における憲法の優位性の明確化と憲法遵守義務の強調③近年導入した、あるいは進行中の社会・経済改革を憲法に反映させること、である。
新憲法草案の内容はどんなものだろうか。同大使が挙げたものの中からいくつかを拾うと――
▽生産手段の全国民による社会主義的所有と計画経済を再確認する。ただし、市場の役割と個人的所有を認める。それから、経済発展を加速するために外国投資を導入する必要性を認める。
▽市民への保障体制と国家の義務を強化する。いかなる動機であろうと、すべての種類の差別への拒絶。
▽医療とその基本的サービスへの無料のアクセス、大学卒業までの教育への無料のアクセスを再確認する。
▽国家、社会、家族は高齢者と障害者を保護し援助する義務があることを規定する。
▽大統領と首相のポストを設け、それぞれ5年の任期を継続2期までに限定する。大統領は第1期選出時に60歳未満とする。
要するに、キューバとしては、国家の基本的な重要産業の国有・国営は維持・継続するが、その一方で、市場経済や財産の私的所有、外国資本の財産権を憲法で認めようということだろう。それは、この国がこれまで堅持してきた社会主義を放棄することにならないか。
こうした疑問に対し、ペレイラ大使はこう語った。「われわれは、これまで守ってきた原則を放棄しない。われわれが目指すのは法治社会主義国家である」
法治社会主義国家とは、すべての物事が法に、そして憲法の優位性に従う国家、国家機関とその幹部に国民を尊重し配慮することを義務づけられた国家のことだという。
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