きょう、ギリシャのシリザ政権が分裂しチプラス首相は辞任 した。ギリシャからの難民がきょうも国外に脱出している。ことし1月、EUの緊縮財政に反旗を翻して登場したシリザ政権に世界が注目した。とくに7月5日の「国民投票」には、ヨー ロッパだけでなく世界中の左翼が固唾をのんだ。しかし圧倒的なNO投票にもかかわらず、直後にチプラスはEU案以上の譲歩を丸呑みにした。ギリシャ国民だけでなく世界中がその裏切りに唖然としたものだった。どういう取引と利得の裏があってチプラスが辞任したのか、神のみぞ知る。
チプラスとシリザは何であったのか?すでにいくつもの論評が出ているし、チプラス辞任の今、改めて議論が湧き起るであろう。ここに紹介するジェームズ・ペトラス教授の論考は、EUへの譲歩案をギリシャ議会が「承認」しそれを受けたEU緊急融資が取りざたされていた7月28日のものである。著者ペトラスは、チプラス-シリザの裏切りは「国民投票」に始まったものではなく、その出自から共犯者にして協力者階層の本質的政策であったと性格分析する。すなわち ドイツ帝国建設の勢力拡大とギリシャの売国的隷属化はひとつの本質的帰結であると。しかも最近イスラエルとの軍事同盟を結んだシリザ政権の植民地主義的な性格が、ドイツ帝国によるギリシャの植民地化、隷属化を許したのだと喝破する。
日本もまた米帝国建設の一翼にならんと、売国的共犯者にして協力者の支配層が国民を欺きつつあるとき、ペトラス教授の帝国・階級分析は大いに参考になるのではないか。加害にせよ被害にせよ共犯協力にせよ、植民地主義的感性と思想、策術こそ克服しなければならないものだから。拙訳ですが紹介させていただきます。(2015年8月21日記)
著者ジェ-ムズ・ペトラスは、ニューヨーク州立大学ビンガ ムトン名誉教授で、かなり以前からアメリカのシオニスト組織の分析を軸に米-イス ラエル帝国同盟の世界各地の動向を暴き批判してきたグローバル・リサーチ誌の古くからの常連投稿者。
※原著者の文中( )内は[ ]で表し、訳者の挿入は( ) で表した。
Greece and the European Union: First as Tragedy, Second as Farce, Thirdly as Vassal State
ギリシャ共和国と欧州連合:悲劇の第一幕、茶 番劇の第二幕、隷属国家の第三幕
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ジェームズ・ペトラス教授(松元保昭訳)
2015年7月28日
グローバル・リサーチ誌
経済不況を終わらせ、彼らの主権を回復し、また生活水準を急激に谷底に落とした後退する一方の社会・経済政策を逆転するために、ギリシャ国民の奮闘は三たび拒否した。
1度目の拒否は悲劇として現われた。ギリシャの大多数が政府にシリザを選んだとき、彼らの負債は増大し経済はさらに不況に陥り失業者と貧困が急増した。ギリシャ国民は「新たな方向」というその約束を信じてシリザに投票した。その勝利に続いてただちにシリザは、海外の銀行家、官僚および政治的寡頭支配者たちの経済命令に対するギリシャ 国民の服従を終わらせ主権を回復するといって その約束を放棄した。その代わりに、シリザは欧州連合を独立諸国家の連合と考える寡頭支配的な帝国ブロックのなかにギリシャ共和国を繋ぎとめた。ギリシャ国民の偉大な勝利で始まったことが、悲劇的な戦略的後退へと方向転換した。政権第一日目から、シリザ はギリシャ国民をだましてドイツ帝国への全面服従の袋小路に導いた。
次いで、彼らが選んだ指導者の今にも起こる裏切りにギリ シャ国民がその承認を拒否したとき悲劇は茶番劇に変わった。シリザが、前政権の民間銀行家、投機家、また寄生政治官僚によって被った不法で唾棄すべき負債を引き受けてギリシャの国庫を空にし、さらにより大きな譲歩を提示したとき、国民は唖然として開いた口が塞がらなかった。
帝国権力者として自らの使命に忠実なEUのボスたちは、 シリザのお粗末な奴隷根性をさらなる譲歩を要求しうる招待状とみなした。それは終わりなき債務労働と大規模な貧窮への完全降伏である。シリザのプロパガンダ指導者、ヤニス・ヴァルファキスとアレクシス・チプラスは、ヒステリックな発作から子供っぽい自己中心主義に変えて「ドイツ人とその脅迫」を公然と非難した。ついで 「トロイカ」と足並みを合わせて不承不承のご機嫌取りを演じ、「パートナー」…つまり彼らの大君主に指示を仰ぎ「交渉」で銀行家たちへの屈服に時間を費やした。【訳注:トロイカは欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、 国際通貨基金(IMF)の3機関で構成される対ギリシャ債権者団。】
政権を握ってわずか5か月で、シリザはギリシャ共和国を完全な破綻と屈服の淵へと導いたあげく、ギリシャ国民 に向かって「とてつもない誤魔化し」に着手した。チプラスは、骨抜きの貧困状態を露わにしてこれ以上の命令と削減を拒否すべきか受け入れるべきか「国民投票」を招集したのだ。ギリシャ国民の60%以上がこれ以上の略奪と窮乏に圧倒的なNOを投じた。
オーウェル風のやり方をもった誇大妄想狂のチプラスは NO投票を、トロイカ方針に属し政権の実施にかんするEU銀行家の直接管理を受諾した帝国権力との特権協約の委任だとただちに解釈し直した。そこにはギリシャ年金の徹底的な削減、生活必需品に対して逆なでする消費税VATの2倍化、また抵当に入っている商店所有者と家屋所有者の立ち退きのスピードアップが含まれる。こうしてギリシャ共和国は隷属国家となった。19世紀植民地主義が21世紀に再演された。
招かれた植民地主義
ギリシャ経済と金融システムが強力なドイツ支配階級の支配にはじつにもろいということが明白なときでさえ、保守党員であろうと社会党員であろうとギリシャの政治家はドイツ率いる帝国ブロックいわゆる欧州連合に加わることを公 然と求めてきた。
初期段階から、全ギリシャ社会主義運動[PASOK]と保守党の相手方は、欧州連合の格付け基準を認めることを拒んでいた。政治諸派閥とギリシャ経済界の中枢つまり双方は寡頭支配体制を牛耳る泥棒政治家と泥棒企業家であって、貸し付け、借金、デフォルト(債務不履行)を偽装しては借金し、またその莫大な負債が公的資金で消えていく絶好のチャンスとしてEU加盟を考えたのだった!
ギリシャ危機は「ドイツに責任がある」という左翼の中に広く行き渡った見解は真理の反面にすぎない。一方、ギリシャ国民は浪費家であり彼ら自らが危機を引き起こしたという右翼の金融アナリストの中にある告発も同様に一面的なのだ。現実はもっと複雑だ。
ギリシャ経済の暴落と崩壊は、根付いてきた寄生的な不労所得支配階級の所産であった。それは、天文学的な軍事予算を負わす一方で非生産部門の経済活動に投機しては高金利の借金で儲けた社会党員と保守党員の双方である。彼らは、ギリシャ共和国の維持不能な貿易赤字と財政赤字を隠蔽するため紛れもない市場操作と金融情報の捏造をしながら詐欺に等しい海外金融取引に従事してきた。
ドイツ人と他のEU輸出業者がギリシャ市場に参入し支配 した。銀行家が法外な金利を課す一方、投資家は貧しいギリシャの労働者を食い物にした。進行中の略奪ではギリシャ支配層は彼ら自らが望む 共犯者であったので、(海外の)債権者たちは明白なリスクを無視した。
EU加盟と加盟国の継続は、明らかに二つのエリート集団 に大きな利益をもたらした。ドイツ支配層とギリシャの不労所得者たちである。前者が銀行や市場を上回る投資を得た一方、後者は短期的な財政補助金とその移転を受けた。もっと大事なことはギリシャの政治階級の上に文化的-イデオロギー的ヘゲモニーを確立したことであった。ギリシャのエリートと中産階級は、EUは慈悲深い合意および繁栄と向上志向の源泉であり 「彼らはヨーロッパ人だ」と信じたのだった。現実にはギリシャの指導者たちはギリシャ共和国を征服するドイツの共犯者でしかなかった。そして中産階級の大部分がそのギリシャのエリートの考え方を真似た。
2008~2009年の金融暴落はわずかの 人々にとっては幻想に終わったが、大部分のギリシャ人にとってはそうではなかった。苦痛と苦難の6年後、旧い政治階級のニューバージョン が勢力をもたげた。シリザ!シリザは新しい顔ぶれと美辞麗句を取り入れたが、EUに対しては行き当たりばったりの言質で対処した。シリザ 指導部はEUが「パートナー」だと信じた。
隷属身分への道は政治階級の魂に深く根ざしている。彼らの危機の根本原因をEUの従属加盟国であると認める代わりに、彼らはドイツ人、銀行家、アンゲル・メルケル、ヴォルフガング・ ショイブレ(財務大臣)、IMF,トロイカ…を非難した。ギリシャ支配層と中産階級は、事実上、犠牲者と共犯者の両方であっ た。
ドイツ帝国政権は、ギリシャの共犯臣下どもがドイツの銀行家に返済できるようドイツ労働者の税収入から借金した…ドイツの労働者は訴えた。ドイツ・メディアは「怠惰なギリシャのいかさま師」と非難することで 批判をかわした。同時に、寡頭支配に牛耳られたギリシャ・メディアは寄生政治階級の役割への批判を「ドイツ人」に向けてかわした。これらすべてが帝国建設の階級原動力、すなわち招かれた植民地主義を覆い隠した。階級の代わりに国民を非難するイデオロギーは、ギリシャの公務員と年金生活者に対してドイツの労働者を対抗させる。ドイツの一般大衆が彼らの銀行家を支持する一方、ギリシャの一般大衆は彼らの裏切者シリザの後に続きシリザに投票した。
アンドレアス・パパンドレウからアレクシス・チプラスまで:欧州連合への誤解
シリザが選出された後、大部分がカナダ、米国、ヨーロッパ出身の左翼の学者による即席エキスパートの小軍団が、現在のギリシャの政治的経済的発展についてより軽快により熱く突然書きまた語り始めた。大部分はギリシャの政治とくにその歴史と過去35年にわたるEUとの関係に ついてはほとんど知識も経験も持っていなかった。
ギリシャの主権にかんする最近のシリザ政府の裏切り行為 を方向付けたもっとも重要な政策決定は、私がPASOK(全ギリシャ社会主義運動)のアンドレアス・パパンドレウ首相のアドバイザーをしていた1980年代初期にさかのぼる。そのとき私はEUに留まるか離脱するかという内部議論の当事者だった。パパンドレウは、反EU、反NATOの公約で選ばれたが、チプラスと同じように彼は「何の代案もなかった」と言い張って即座に公約を破った。その時でさえ今日あるように国際的なギリシャの御用学者がいて、彼らはEU加盟国であることが唯一現実的な選択で「唯一の可能性」だったと主張した。その時、無知からか欺きからかどちらにせよ影響を及ぼした「可能性」は、ただ怒号と憶測に満ちたものだった。彼らはEU機構の内在的な力のリアリティーを否定し、また労働者と国民一般大衆の代替案を作る階級的能力を排除してしまった。そのときはまだ、現在のようにヨーロッパ、ロシア、中国、中東および北アフリカとの独立したオルタナティブな関係を切り拓くことが可能だった。保護された市場、強固な観光部門、独立した貨幣制度を維持することの利点は明白であったし、EU加盟国[または隷属身分]をなんら必要としなかった。
何よりもアンドレアス・パパンドレウとアレクシス・チプラス両指導者に際立っていたことは、EUにおける支配的勢力の階級的本質にかんする彼らの根深い誤解であった。ちょうど1980年代に、ドイツが帝国の勢力範囲を回復し始めていた。シリザ-チプラスが政権の座に就いたとき[2015年1月]までには、ドイツの帝国勢力は否定しがたいものとなっていた。この現実についてのチプラスの誤解は、彼と彼の「仲間たち」の階級および帝国の分析の拒絶の結果 だと考えられる。マルクス主義理論をかざすアカデミックなマルクス主義者でさえ、EU内でのドイツ帝国建設の具体的現実とギリシャ共和国 の準植民地的地位に対して資本主義と帝国主義にかんする彼らの抽象的な批判理論をけっして応用しなかった。彼らは、ドイツ中心のEUだか らより好条件を「交渉する」には十分に賢いのだと思い描き「植民地改革者」のそのイメージで自らの役割を考えた。ベルリンのドイツ政権はその熱烈なネオ-リベで前コミュニストの取り巻き連中プラスIMFおよびフランス、イギリスの帝国パート ナーの中でももともと多数派だったのだから、必然的に彼らは失敗した。シリザはこの権力配置にとって競争相手ではなかった。さらにシリザのインテリの中には奇妙な妄想があった。ヨーロッパ資本主義は米国バージョンよりもより慈悲深いと。
EU加盟国はドイツ帝国建設のために足場を築いた。出発点は西ドイツの東ドイツ併合であった。これはまもなく、EUの従属加盟諸国であるバルト海諸国やバルカン諸国の右派政権合同に引き継がれた。それら諸国の公共資産は格安価格でドイツ企業に先を争って買われた。第3ステップは、ユーゴスラビアの組織的な解体とドイツ勢力圏の中へのスロベニアの編入であった。第4ステップは、ポーランドおよびチェコ経済の主要部門の乗っ取りとブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、他の衛星国家の安価な熟練労働の搾取であった。
一度も発砲することなく、ドイツの帝国建設はEUの新らしい従属加盟国に貸し付けと金融移転をめぐらして展開した。これらの金融取引は以下の条件に基づいていた。1)大部分はドイツや他のEU投資家への新規加盟国の価値ある公的資産の民営化と売却。2)加盟国への社会政策プログラムの解体、大規模な一時解雇の承認、不可能な財政目標と苦悶すること、これらの強要。言い換えれば、同時代のドイツ帝国の拡大は前共産主義国家を衛星諸国、隷属諸国、また傭兵の源泉へと変質させる緊縮措置を必要としたのだった。これが現在ギリシャ共和国で演じられているパターンだ。
これらの新しいドイツの「植民地」[とくにポーランドとバルト海諸国]が ギリシャ共和国に対してきびしい緊縮措置を課せとEUで主張する理由は、何の代案もなく抵抗は空しくそれ自身困難な状況にある市民を説得しつつ同じ残忍なプロセスに彼らが直面していたということである。ギリシャの労働者、農民、公務員の成功したどんなデモンストレーションでも、帝国に対する 抵抗はこれら配下の指導者とドイツの帝国体制の不正な関係を暴露した可能性があった。新しい帝国体制の基盤を維持するために、ドイツはギリシャ共和国に対して強硬路線をとらなければならなかった。さもなければ、バルト海諸国やバルカン諸国また中央ヨーロッパ諸国で近年併合された植民地的な臣下たちは、欧州連合に彼ら自ら編入した過酷な条件を「再考する」かもしれなかった。ギリシャをヨーロッパのハイチに置き換えると、ギリシャ共和国への公然とした懲罰的なアプローチをこれが説明する。反乱を起こしたハイチに対する米国の長年続いている残虐な扱い―そのカリブ海諸国とラテン・アメリカ隷属諸国への見せしめに―に類似しているのだ。
ドイツの非妥協的態度の根本要因は、アンゲラ・メルケル とヴォルフガング・ショイブレの政治的な個性や気まぐれとは何の関係もない。こうした帝国の指導者は神経質な執念深さから動くものではない。彼らのギリシャの完全な屈服を求める要求は、ヨーロッパの段階的な征服の継続というドイツ帝国建設が自ら命じたものなのである。
ドイツの帝国建設は、軍事的征服を基盤とする米帝国建設 と手に手を取って進む経済的征服を最重要視する。ドイツの同じ経済的衛星諸国もまた、米軍事基地の敷地を提供しロシア包囲の演習に仕えている。これらの隷属国家は南アジア、イラク、シリアまた方々で米帝国戦争のための傭兵を提供している。
シリザの経済的降伏は、そのNATOへのいくじのない魂の売渡し、その対ロシア制裁の支持、そのシリア、レバノン、イスラエルに向けた米国政策の無条件の抱き込みに符合する。
ドイツとその帝国のパートナーは、ギリシャの主権を簒奪しギリシャの致命的な公共事業や土地など公的資産500億ユーロを押収する計画をたてギリシャ共和国の働く人々に向かって凶暴な攻撃を開始した。ヨーロッパ資本主義は凶暴なアングロ-アメリカ型の資本主義に代わる社会福祉政策をもつ慈悲深いタイプであると、とりわけフランスの社会民主主義のデマゴーグ、ジャック・ドロール(欧州連合設立時にドロール委員会を率い、その経済社会政策をマーストリヒト条約に結実させた)に奨励されたものだが、この神話だけは追い払うべきだった。
帝国建設の以前のまた現在のバージョンに決定的に重要なことは、植民地主義への転化を促進する政治的協力者の階級の役割である。これが、右派を抱き込みながら左派の話芸に秀でていて緊縮と略奪を一層深める中へと誘い込みながら一般大衆のご機嫌を取り、罠にかけるアレクシス・チプラスのような社会民主主義というものである。
EU内の階級の敵を特定し労働階級の代案プログラムを組織化する代わりに、チプラスと彼に後続する協力者は帝国ヨーロッパによりよく貢献するために階級的協力を助長しながらEU「パートナー」の振りをする。つまり、ドイツの資本家たちが彼らの利払いを要求したとき、チプラスはギリシャ経済からその血を搾り取った。ドイツの資本家たちがギリシャ市場を支配しようとしたとき、チプラスとシリザはEU内のギリシャを維持することでドアを開いた。ドイツ資本がギリシャ資産の乗っ取りを指揮しようとしたとき、チプラスとシリザは売却に喜んで応じたのだった。
民族主権の破壊にはギリシャのエリート内部の明白な階級的協力がある。すなわち、ギリシャ銀行家の寡頭支配者と商業部門および観光業の中枢はドイツ帝国建設者たちの仲介者として演じたし、彼らはギリシャ国民の窮乏にもかかわらずドイツとEUの乗っ取りから個人的に利益を得てもいるのだ。有権者の25%を代表するこうした経済的仲介者たちが、シリザ-チプラスの裏切りの主要な政治的支持者となった。チプラスの左派批評家の粛清と彼の立法・行政権力の権威主義的な横領に拍手喝采するEU中枢と彼らは結びついているのだ!この協力者階層は、屈辱的な65ユーロの年金手当てを受け取るために麻痺している銀行にけっして並ぶことはないだろう。これらの協力者たちは海外銀行口座に何十万、何百万も隠匿しては海外の不動産に投資した。ギリシャの一般大衆と違って、彼らは第一に して第一級の「ヨーロッパ人」であり、ドイツ帝国建設の自発的共犯者なのだ!
悲劇の始まり:ギリシャ国民はトロイの木馬を選択する
シリザはギリシャの政治文化に深く根ざしている。教育を受けたマスコットの指導性は海外ヨーロッパの帝国建設に奉仕する。シリザはギリシャ一般大衆の苦闘、犠牲と苦難からかけ離れているアカデ ミックな左翼主義者たちに支持されている。シリザの指導性は、性急なアイデアと震える手をもってイデオロギー的な教師または救世主として舞台に登場した。彼らは中産階級過激派の波に乗って力を合わせ、地方や海外のエリートおよび有権者の裏切りもあって彼らは従来の慣習的方 法―ラディカルなレトリック、議会選挙、交渉と取り引き―を通して再び台頭することを熱望した。この点でチプラスは、ギリシャ共和国とその国民を自発的に売却するような上昇志向の日和見主義の全世代を象徴している。彼は最悪の政治的伝統を永続させる。彼はキャンペーンで[選挙の後では一般大衆のどんな動員をも見捨てる!]、 階級意識を越える消費者運動を奨励した。彼は、派閥政治、腐敗政治、脱税、利己的な金貸しと浪費家の文化に嵌め込まれた役に立つバカなのだ―ドイツの大君主が短い鎖に繋いでいるのに彼とシリザを大目に見たまさしくそれが理由だ!
チプラスのシリザは民主主義を完全に侮った。彼は「総統原理」‘Caudillo Principle’を喜んで採用した。つまり、一人の男、一人の指導者、一つの方針!どんな反対者も解任が求められる!【訳注:Caudillo は親分、親方、ボスからフランコやヒトラーの総統まで政治的支配者を指すスペイン語。】
シリザは、トロイカとその命令、NATOとつまりEU ユーロ圏という帝国機構に完全に屈服した。チプラス/シリザは帝国の命令からの完全な独立と自由を拒絶する。彼の「ドイツへの降伏」では芝居じみた演技に巻き込んだが、彼自身の個人的な指令でEUに対する大規模なNO投票はYESに変えられてしまった。
すべての最も痛ましい政治犯罪は、帝国の大君主の過酷な命令を受け入れるかまたは完全な貧窮に直面するかをギリシャ人の大部分に強要するため、銀行から金を巻き上げ年金基金を空にし「銀行を非難し」ながら日々の給与を凍結してギリ シャ経済を荒廃させたチプラスだった!
最終的な降伏
シリザのチプラスとその追従者たちは、きまってギリシャ 共和国のEU帝国建設者への従属を非難し犠牲者だと主張する一方で、6か月も経たないうちにギリシャ国民の民族意識を徐々に衰えさせてしまった。ギリシャ有権者の5分の3による勝ち誇った拒絶の国民投票と表現であったことが、帝国の協力者によって 茶番劇のような降伏の前兆に変ってしまった。国民投票における国民の勝利は、総統Caudilloへ の大衆的支持だと説明されて捻じ曲げられた。ギリシャの有権者との話し合いを装いながら、チプラスはギリシャ共和国を負債奴隷労働と植民地的隷属身分に追い込むよう彼の政権の権限内に民意を巧みに誘導した。
チプラスはアドルノの権威主義的パーソナリティのこの上 ない象徴である。「上の者には膝まずき、下の者には掴み掛る」
いったん、彼がギリシャの大部分を分裂させ、退廃させ、 疲弊させる仕事を為遂げたなら、現地と海外の支配者中枢は使い古しのコンドームのように彼を見捨てるだろう。そして彼は、ギリシャ国民を欺き裏切った名手として歴史の笑い種になるだろう。
エピローグ
極右の外交政策のシリザの受諾は、ニセ左翼支持者が主張したように「外圧の結果」と見るべきではなく、 むしろ意図的な選択の結果なのだ。今までのところ、シリザ政権の反動的政策の格好の見本はイスラエルとの軍事協定の調印である。
エルサレム・ポスト紙[2015年7月19日]によれば、ギリシャ国防大臣は、イスラエルとの共同軍事演習を含む相互防衛訓練協定に署名した。さらにシリザは、テヘランのイラン政府は中東および地中海におけるテロリストの脅威の代表だというイスラエル政府の馬鹿げた非難を支持して、イラン・イスラム共和国に対するイスラエルの好戦的な立場を後援した。シリザとイスラエルは他のどんなEU加盟国のイスラエルとの協定にも勝る、またその好戦性においてはシオニスト政権と米国政府の 特別諸協定にも近く唯一匹敵する相互軍事援助条約に署名した。
イスラエルの超-軍国主義者モシェ・ヤアロン「国防」大臣[ガザの屠殺人]は、 協定を歓迎しシリザ政権にその支持を感謝した。ユダヤ国家に対するシリザの支持が、アングロ・アメリカおよびカナダのシオニスト左派にその評判をアピールすることは大いにありそうなことである…。
イスラエルとのシリザの戦略的な結びつきは、EUの圧力またはトロイカの命令の結果ではない。協定は、イスラエ ル・テロ国家に対するパレスチナ人民の正当な民族的権利への半世紀にわたるギリシャ人の支持のラディカルな破棄である。この軍事条約は、 ドイツ支配階級に対するシリザ政権の経済的降伏のようにチプラスの政策全体に行き渡る植民地イデオロギーに深く根ざしている。彼は、ギリシャ共和国を経済的隷属から地中海で最も悪化した貪欲な(シオニスト)政権の顧客へとさらに重大な段階に道連れした。
【以上、翻訳終わり】
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5601:150822〕