コロナ報道で検閲行為 海外メディアにも及ぶ NHKワールドなど政府コロナ要請放送受け入れ

 週刊ポストの最近の報道(6/5,6/12)によると、内閣広報室の数人の係官が、テレビの報道番組、コロナ報道などをモニターし、問題発言を書き起こして政府に報告しているという。

 テレビ報道をチェックし訂正求める
 そういえば「羽鳥慎一モーニングショー」(テレ朝月~金8:00) で安倍首相のコロナ対策後手に回っていること、医療機関へのマスクを重点的に配備すべきだとの発言を、厚生労働省が番組出演者を名指ししてツイッターで攻撃した(3/4)ことがある。
 内閣広報室のメディアチェックは、明らかな憲法21条違反の検閲と言わざるを得ない。
 週刊ポストが入手した情報公開資料によると、2月初旬から3月上旬までの40日ほどで、A4判1000枚近くに及んでいるという。特に目立つのはテレ朝の朝ワイドに出演している玉川徹キャスターやゲストの岡田晴恵白鷗大教授、更には「ダイヤモンドプリンセス号」に乗り込んで、政府の対応を批判した、岩田健太郎神戸大教授の発言などだ。報道番組やワイドショーが中心だが、情報番組の「アッコにおまかせ」(TBS、日曜11:45)での和田アキ子とIKKOとのやり取りも含まれていた。

 諸外国メディアに多い安倍批判
 諸外国の多くは安倍政権のコロナ政策に批判的だ。「日本はPCRの検査が少ない。日本のやり方は症状の軽い感染者を特定し、追跡することを困難にしている」(英紙ガーディアン5/4)と指摘した。4/23に外務省が海外メディア向けに開いた記者会見では、「もっと多くの市中感染があるのではないか」などの質問が1時間にわたって続いた。また韓国の「ハンギョレ新聞」(4/30)も「日本政府は韓国の防疫の成功を無視し、軽んじている」と批判した。(朝日新聞5/8の記事より)。安部首相の感染対策としてマスク2枚配布の発表(4/1)は、国内の批判に加え、海外メディアからも「アベノマスクはエイプリルフールか」(Fox News4/1)など嘲笑、揶揄が乱れ飛んだ。

 海外報道にも及ぶ検閲
 今国会で成立の予算の中に、“批判をチェックし、正しい情報を流すために”との予算24億円を外務省が組んだ。主要20か国などのSNSをAI(人工知能)も活用して海外メディアの報道チェック、“正しい情報を発信する”という。
 厚生労働省も国内海外に向けて「ネガティブ情報の払しょく」、「正しい情報の発信」を行う予算35億円が組まれた。
 外務省、厚生労働省、内閣広報室、内閣官房インフルエンザ等特別対策室は一体となって国内、海外の政府批判阻止の動きを強めているのが現状だ。

 特措法でNHKは指定公共機関
 「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」では日銀、赤十字などと並んでNHKが指定公共機関とされた。従来から政権寄りのNHKは、政府のコロナ対策への協力にアクセルがかかっている。国境なき記者団(本部パリ4/8)、日本ジャーナリスト会議(4/11)、などが独立した報道を阻害するとして反対声明を出し、NHKを指定から外すよう要求している。

 NHKの海外放送で政府の要請放送
 160の国・地域へテレビ国際放送(NHKワールド)や、ラジオ国際放送(短波)、インターネットニュースサイト(Japan On Line、17ヵ国多言語)など、NHKの海外向けの情報発信では、在留日本人の生命、身体にかかわる事項、国の重要政策などで政府の要請があれば、それを受け入れることになっている。4月1日に総務省が発表した2020年の要請放送の項目には「新型コロナウイルス感染症に関する国内の最新状況に特に留意すること」が付け加えられた。

 このままではNHKは政府広報機関に陥ることになる
 NHKを指定公共機関から外すよう求めるとともに政府の要請報道に応じないようNHKに求める必要がある。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9875:200625〕