コロナ禍のゲッティンゲンからの短信

著者: 合澤清 あいざわきよし : ちきゅう座会員
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毎年夏になるとドイツへ行く習慣になっている。

大抵は今頃(6月中旬から下旬ごろ)出発し、9月初めごろまで涼しい-とはいえ、日中は40℃位になり、直射日光の強さは日本よりはるかに強烈である。涼しさは、専ら湿度の差から来る-田舎町でのんびり生活している。

ところが突然の降ってわいたようなコロナ騒ぎである。折角2月に購入した航空券はキャンセルせざるをえず、しかもドイツについて、フランクフルト駅からゲッティンゲン駅までの新幹線(ICE)のチケットを予約購入していた(これは滞在先のドイツ人にお願いして支払いも済ませていた)のもキャンセルすることになった。

有り難いことに、航空券は今回は特例で、キャンセル料なしで返金されるそうだが、ICEのチケット代はキャンセルが効かないらしく、こちらから先方のドイツ人に代金を送る羽目になった。

実際のところ、ぎりぎりまで行くつもりでいたため、ここに来て慌ただしくドイツ人の友人知人にメールでお断りの報せを送っている。

滞在先の家主からは、3月下旬に早々と「今年はコロナが大流行で、ドイツはChaos(混乱)状態だが、どうするつもりなの?」という問い合わせがあった。その時は、「まだ時間がたっぷりあるから、ドイツ行きの予定は変更していない」と返事していた。

ところがこの始末だ。ドイツどころか、田舎の母親の見舞いにも行けない状態である。蒸し暑さに耐えて狭い部屋の中でじっとちぢこまってひと夏を過ごす以外になさそうだ。

ドイツ人の友人からもメールの返信が入ってきた。それによると、(毎年われわれが滞在する)ゲッティンゲンは、コロナの「ドイツでのホットスポット」だという。「今年会えないのは非常に残念だが、今来ることは君たちにとって危険かもしれない」。そしていつも彼らと行く居酒屋の様子も知らせてくれた。

この居酒屋は1600年ごろに作られた木骨作りの本格的なドイツ風の建物で、私達は専ら室内の雰囲気を楽しみながら飲むのが何よりの幸せなのであるが、残念ながら今年は室内営業は禁止され、外の道路に沿って設置されたテントの下でだけ営業許可が下りているそうだ。

なんだか侘しい思いだ。恐らくドイツ中、どこに行ってもこういう状態なのであろう。やはり行かなくて良かったのかもしれない。行ったところで、ドイツ旅行も、彼ら仲間とのホームパーティも出来ないかもしれないのだ。

しかし、それでもなんとなく未練が残る。このメールの主は、確か、今年の夏、ゲッティンゲン大学からドクター(物理学関係)を授与されるはずである。共に祝えないのは非常に残念だ。Bis nächstes Jahr(来年まで)。