コロナ禍の五輪は中止して!(1)「今からでも決して遅くはないから」

 「今からでも決して遅くはないから・・・」これは「戒厳司令部」からの「伝単(ビラ)」ではない。多くの国民の願いでもある。

 五輪東京招致は、福島の原発事故による汚染水が「アンダーコントール」されているとのウソからは始まった。「東日本大震災の復興の証」は、コロナ禍で消えた。にもかかわらず、一年延期後もほとんどの政党やメディアは、つい最近まで、「中止」を掲げることはなく、頑張っている選手たち、さまざまな工夫をしているホストタウンとなった自治体、五輪関係者たちに意気込みを語らせ、競うように情報を流していた。IOC、JOC、政府や東京都は、もちろん、五輪の“実施本部”を置く、国策メディアNHK、スポンサーとなっている大手報道機関は、今でも五輪推進の旗を掲げ、国民の多くの不安や中止という民意に応えようとしない。
 そもそも、東京オリンピック2020に反対する手立てもしなかった人たちが、いまさらながら、世論を見極めながら、そろりと中止を言い出しているのが現状だろう。
新型コロナウイルスの感染が、いっこうに収まらない中、ムリヤリ、意地になって五輪を強行しようとしている政府与党。強行して、だれがどれだけ得をして、だれがどれだけ損をするのだろうか。国民の、そして、五輪関係者の命や健康まで犠牲にして、五輪を開催するメリットは、何なのか、そこが明確になっていない。
最近になって、ワクチン接種普及と水際対策が、五輪突破のカナメのような情報発信がなされてきたが、どちらも「ヤルヤル詐欺」まがいの状況に振り回されてきた。ここにきて、そのどちらもすでに破綻していることが明確になった。
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衆院本会議に臨む(右から)菅義偉首相、河野太郎行政改革担当相、田村憲久厚生労働相=国会内で2021年4月20日午後1時6分、竹内幹撮影。「「信用できない」「あいまい」ワクチン供給めぐる政治家発言に批判」2021年4月23日『毎日新聞』

 医療従事者・高齢者はもちろん、介護従事者、高齢者施設職員、保育・教育従事者などへのワクチン接種のすべてが中途半端な状況で、集団接種、職域接種まで手を広げたものの、その運営の拙速さもさることながら、ワクチン自体の供給のめどが立たなくなって中止することになった。基礎疾患を持つ人への優先接種はどうなったのか?その掛け声も聞こえなくなった。河野担当大臣は「チケットの予約と違って、売り切れはないから、あわてずに、落ち着いて」などとの発言していたのはいつのことだったか。早い者勝ちの、都市住民優先、大企業優先などの「差別」がまかり通ってしまった。派手なマスクが自慢の河野大臣に接種会場を視察されても事態は一つも変わらない。

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政府は、こんなスケジュールを発表していたが・・・
2021年1月27日『朝日新聞』より

 コロコロと変わる、飲食店などの営業制限と補償対策、給付金の遅れの中で、失業、廃業、生活困窮に追いこまれる人が続出、その手当てがまるでできていない実態を、菅首相や加藤官房長官、小池知事たちは知ろうともしないだろう。挙句の果て、都知事は雲隠れしてしまった。自分の身をめぐって戦略でも練っているのだろう。診断書ではどうなっているのだろう。
海外からの選手や関係者への水際対策も、受け入れ自治体の保健所任せで、感染者を移動させてしまうという失態に、何をいまさらあわてているのか。関係者の会食・飲酒などはさすがに引っ込めたが、感染対策のずさんさはこれからもどんどん明らかになっていくだろう。そこまでして、五輪を強行するのはなぜか、の最初の疑問に突き当たる。

 ところで、首相はじめ関係閣僚は、7月中には、高齢者の希望者には全員ワクチンの2回目が完了のめどが立ったというが、私は7月29日ぎりぎりだし、連れ合いは8月にずれ込む。どのくらいの接種率かと調べ始めると、厄介なのだ。結論的に言うと、6月27日現在、高齢者を含む一般国民の接種率は以下の表のようになった。2回目接種完了は6%前後に過ぎない。ワクチン接種は加速して、1日100万回を達成したと、官房長官は胸を張ったが、1・2回目をあわせての数であり、100万回を超えたといっても、6月の9日、15日、16日の3日間に過ぎない。グラフで推移をみると、どういうわけか、全国では6月16日、東京は6月20日、千葉は6月22日をピークに下降線をたどっているのである。しかも、1日100万回の接種達成というのは、医療従事者を含めてのことらしい。たとえば、一般でのピーク6月16日の1回目51万6742人、2回目44万7623人に医療従事者11万8735人を合わせてのことだった。

 私には、以上の数字をたどるだけでも、時間を要した。厚労省「新型コロナワクチンについて」の中に「新型コロナワクチン接種の実績」というデータは今年の「4月9日まで」とある。4月12日以降は「首相官邸のホームページ」へという。首相官邸「新型コロナワクチンについて」を開くと、「一般の接種(高齢者を含む)」と「医療従事者などの接種」に分かれる。国民全体の接種回数と接種率は、出てこないので、首相官邸の「ワクチン接種状況ダッシュボード」作成担当の内閣官房IT室に尋ねると、ここでは「承知していない」という。内閣官房広報室があるというので、代表にかけ直すと、交換台は、用向きをしつこく聞いてくる。広報室は、各担当からのデータを載せているだけだから、医療従事者の接種者合計と接種率は厚労省に聞けという。質問ではない、意見があるのだがというと、広報室で対応するが、いま5人が待機しているから、後で掛け直せと、断られたも同然である。こうして、国民の質問や意見を蹴散らすことしか考えないのが役所なのだろう。首相官邸には、電話番号は一切記載されていない。
 そしてたどり着いたのが、NHKの「特設サイト・新型コロナウイルス・データでみる」のサイトであった。こちらの方がまだわかりやすいが、尋ねたいことがあっても、電話での質問は受け付けていない。
 ことほど左様に、わずかなことを知ろうとしても、その壁は厚い。今年の1月18日に新設のワクチン担当大臣に就任した河野太郎はもともと軽いが、パフォーマンスが過ぎて、情報もまともに収集できずに、先走ったことばかりを言う。

現在のワクチン接種状況(一般)

全国

東京

千葉

人口(人)

127,128,906

13,832,804

6,319,713

1回目接種率(%)

16.84

14.15

15.82

2回目接種完了率(%)

6.54

5.42

5.82

65歳以上接種率(%)

22.51

23.35

21.03

<参考>
「ワクチン接種状況ダッシュボード」(首相官邸 2021年6月27日版)から作成内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室

https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard

NHK特設サイト・新型コロナウイルス・データで見る

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/#mokuji2

初出:「内野光子のブログ」2021.6.28より許可を得て転載

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/06/post-848d17.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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