一言で申し上げれば,原木シイタケのみならずキノコ・山菜類全般の危機的状況
は,ひとえに農林水産省(及び厚生労働省)によるキノコ・山菜類,及びその原木・
培土に関するずさんで無責任な放射能汚染管理による結果であり,典型的な「東京電
力(福島第1原発)放射能放出事件」に係る「二次災害」と言えるでしょう。原木シ
イタケに限らず,すべてのキノコ・山菜類の生産者・農家、及びその関連事業者に対
して,加害者・東京電力及び事故責任者・国は,その全ての損害を賠償・補償する義
務があります。これは風評被害などではありません。失敗行政・ずさん行政の必然的
結果です。
(1)原木シイタケ危機 (日本農業新聞 2013.12.6)
(2)「放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドライン」の策定
について(牛尾光(林野庁):『山林 2013.12』)
●河北新報 東北のニュース/宮城・大衡産 原木シイタケ出荷自粛 セシウム基準
値超(2013年12月19日)
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/12/20131219t13020.htm
(記事の引用)
宮城県は18日、国の検査で基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超え
る放射性セシウムが検出されたとして、同県大衡村の施設内で栽培された原木シイタ
ケの出荷を自粛するよう農協や村、生産農家全2戸に要請した。県産の施設栽培の原
木シイタケから基準値超のセシウムが検出されたのは初めて。既に流通しているシイ
タケは、出荷したあさひな農協(大和町)が自主回収している。
厚生労働省が12日に実施した流通食品の検査で、1検体から1キログラム当たり
110ベクレルの放射性セシウムが検出された。厚労省から連絡を受けた県が、大衡
村で生産された原木シイタケ7検体と、原木となるほだ木9検体の検査を実施。原木
シイタケの放射性セシウムは1キログラム当たり39~73ベクレルで国の基準を満
たしたが、ほだ木は42~120ベクレルで国の指標値(1キログラム当たり50ベ
クレル)を超えていた。
国の方針で指標値を超える50~100ベクレルのほだ木も一定条件下で使用が認
められているが、県は基準値超が今後も出る恐れがあると判断し、出荷自粛を要請し
た。県は今後、県内でシイタケの施設栽培を手掛けている生産農家全戸を対象に、シ
イタケとほだ木の検査を実施する方針。露地栽培の原木シイタケについては、県内2
1市町村で国の指示による出荷停止が続いている。
●基準値を超える汚染食品が市場に流出!110ベクレルの宮城県産シイタケが流通
済み!茨城や群馬の基準値超も市場へ流出! – 真実を探すブログ
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-1386.html
●農林水産省HPより
(1)林野庁-東日本大震災に関する情報
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/jisin/index.html
(このサイトの下の方の「東京電力福島第一原子力発電所事故による影響等」のとこ
ろにキノコ・山菜類に関する農林水産省通知類が掲示されています)
(2)林野庁-きのこ原木・ほだ木の当面の指標値に関する見直しについて
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/120830.html
(3)林野庁-きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の改正について
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/120328_2.html
(4)農林水産省-きのこや山菜について
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/seisan_situmon.html
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/kinoko/qa/situmon.html
(5)林野庁-きのこ・山菜等の放射性物質の検査結果について
http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/kinoko/kensakekka.html
<農林水産省のキノコ・山菜類の放射能汚染管理の問題点>
厚生労働省が定めた一般飲食品の残留放射性セシウム規制値自体が、安全を担保し
ない、いい加減で危ういものですが、それ以外にも、これまでの農林水産省によるキ
ノコ・山菜類の放射能汚染管理=言い換えれば食品としての安全管理には次のような
問題点があり、それは今もなお、改められてはおりません。上記で申し上げたよう
に、「原木シイタケ危機」は、原発事故後の政府・自治体の対応が悪いために起きて
いる完全な「人災」、典型的な「二次災害」です。
(1)まず、初動対応が最悪。チェルノブイリ原発事故の経験から、キノコ・山菜類
や乾燥食品、ベリー類、野生生物の肉などは、高い放射能値を示すことが既知だった
にもかかわらず、政府・農林水産省・厚生労働省・消費者庁は、「東京電力(福島第
1原発)放射能放出事件」で汚染された東日本地域で産出される、こうした種類の国
産食品類について、厳重な警戒態勢をとらなかった(自由に流通させてしまった)。
本来であれば、こうした「高濃度汚染になりやすい」食品類は、汚染地域からの産
出・販売をいったん止めて、汚染状況を確認し、汚染物が市場に出回ることがないよ
うな「体制づくり」をしてから、出荷を認めるべきだった。しかし、農林水産省は、
これらの残留放射能検査体制の確立を含め、必要な措置をほとんど何も取らなかった
(その後、ユズなどのかんきつ類や梅(加工品含む)、クリなどの木の実、イモ類、
レンコンやタケノコ、大豆や麦、なども放射能が残留しやすいことが分かってきた
が、これらについても農林水産省は「何もしない」を続けている)。
(2)2012年4月の厚生労働省の残留放射能規制値改訂の際、乾燥キノコ類について
は「水戻し」して食べる状態で残留放射能をキロ当たり計測して判断すると決めたこ
と(お茶も同様)。具体的には、乾燥キノコ類を口に入れる状態まで「水戻し」して
計測するか、乾燥状態の計測値を「重量変化率」と呼ぶ決められた数字で割ったもの
を「測定値」として使うことにしたこと。まさに「汚染の水薄め」をしてしまったわ
けで、この措置により、かなり高い汚染度の(感想)キノコ類でも(チェルノブイリ
原発事故汚染地域からの輸入物を含む)、水で薄めて規制値以下に下げることができ
るようになった。
(3)特にキノコ類については、その栽培の「土台」となるキノコ原木やキノコ用栽
培土について、その原料の汚染物の排除を徹底せず、東日本から全国へ向けて「汚染
されたキノコ原木」や「汚染されたキノコ栽培土」の拡散流通を放置してしまった。
この結果、上記(1)と相まって、日本全国どこでも、キノコ類の放射能汚染が検出
されるようになり、「キノコ類」は危ない、という観念が全国の一般消費者に広がっ
てしまった。当然ながら、子どもたちの学校給食の食材を懸念する保護者からは、学
校給食食材からキノコをはずすよう強い要請も出てくるようになる(キノコの栽培土
には、たとえば木材加工した時に大量に出てくるオガクズやバーク(木の皮)が原材
料に使われるが、森林が深刻なまでに放射能で汚染している東日本産の木材加工から
出てくるオガクズやバークが汚染していることは自明なことである)。
(4)きのこ原木及びほだ木、及び菌床用培地及び菌床に関する「当面の指標値(放
射性セシウムの濃度の最大値)」が次のように決められたが、それらは科学的・実証
的に「安全性」の根拠がない(何を根拠に決めたのか? 「移行係数」の実証的根拠
を明らかにせよ)、各規制値に「安全バッファ」が全く考慮されていない(通常は
100倍くらいの「安全バッファ」を設ける)、そもそも「指標値」という「守っても
守らなくてもいいような、いい加減な数値」であって、罰則付きの厳格な規制値では
ない、生産現場に対する周知徹底が自治体任せになっていていい加減、などなど、キ
ノコ類の生産の安全確保に対して熱意も責任も感じられない実にいい加減でずさん、
無責任極まる対応に終始し、今もそうであること。
●きのこ原木及びほだ木
50 ベクレル/kg(乾重量)
●菌床用培地及び菌床
200 ベクレル/kg(乾重量)
(うがった見方を申し上げておけば、原木栽培キノコ生産者は零細農家が多く、従っ
て政治的に押さえつけることができると読んで、規制値は比較的厳しめの「50ベクレ
ル/kg」としたが、菌床用の栽培土については、ハウスもので比較的大手の会社経営
や地域有力者である生産者が多いので、規制値も原木よりかなり甘い「200ベクレル
/kg」としたのではないか。=たとえば厳しい規制値にしたら、既に使っている菌床
などが全部廃棄となる。いずれにせよ、この原木や菌床の規制値に科学的・実証的根
拠はなく、エイヤーで決めた可能性が高い)
(5)そして、今現在も、上記の河北新報記事でご覧になったように、仮に規制値を
上回る汚染キノコが発見されても、いい加減な対応の仕方である。きちんとした「規
制」の形をとらないで、生産者や生産者団体の「自粛」などとしてやらせていたり
(だから、きちんとしていなくても、誰も責任を問われることはない)、再発防止対
策を厳格にやって行こうとする気配もない。そもそも全国で大量に生産されているキ
ノコ・山菜類について、残留放射能はほとんど未検査状態で食品流通している。たま
たま今回、検査して見つかっただけの話で、潜在的にも、実態的にも、汚染キノコ・
山菜類はわんさと食品流通に乗っていると考えていい。まさに、キノコは危ないの
だ。
(6)また、輸入されるキノコ類についても下記の通り
●東京江戸川放射線 ザル検査で欧州チェルノブイリ禍食品が続々、輸入イタリア産
ポルチーニ282ベクレル ブルガリア産ブルーベリー164ベクレル 基準値100ベクレル
超え すでに日本の食卓に(週刊朝日 10-25号)
http://radiation7.blog.fc2.com/blog-entry-2858.html
(7)別添PDFファイルの林野庁役人が書いた「「放射性物質低減のための原木き
のこ栽培管理に関するガイドライン」の策定について(牛尾光(林野庁):『山林
2013.12』)」は、是非ご覧になってみてください。例えばそこには、次のように書
かれております。いったい、これってなんなんだ、と思います。消費者の食べものの
安全性が後回しにされていることが「よーく」分かります。
(最終ページです)「しかしながら、きのこについては放射性物質の吸収メカニズム
が解明されておらず、実証試験のデータの蓄積にも時聞が必要であることなど、完全
なものを求めると生産再開が手遅れになることが予想されます。現場の皆様には大変
御苦労をおかけしますが、現時点の知見を基に実施して行かさ、るを得ないことを御
理解いただきたいと思います。」
「完全なものを求めると生産再開が手遅れになる」!!!!!! だそうです。
●林野庁-「放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドライン」の
策定について
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/131016.html
<結 論>
冬のお鍋に欠かせないシイタケ、土瓶蒸しに入れるキノコ、煮てよし焼いてよしの
秋の味覚、もちろんマツタケやマイタケも含め、原木きのこのみならず、菌床キノコ
も含めて、キノコ・山菜類を食べるのは当面やめておきましょう。今のままでは「危
険である」とはっきり申し上げておきたいと思います。但し、涙が出て止まらない思
いで申し上げております。