最近小生は Ulson Gunnar 氏の『内戦はなく,内戦であったことなどなかったシリア』(New Eastern Outlook)を,ブログ『マスコミに載らない海外記事』の翻訳によって読んだ。ウルソン氏によれば,この紛争は冷戦時代からソ連と結びつきが深いシリアを引き離そうとする地政学的闘争から生まれた,という。2011年との関連でいえば,カタールが石油をパイプラインによって地中海に運ぼうとした,その中継点がシリアであった。しかしシリアはパイプライン敷設を拒否したので,カタールやサウジアラビアなどは過激派を支援してシリア政府を倒そうとした。
ムスリム同胞団については次のような記述がある。
>2011年の紛争は、シリアにとって最初のものではない。オスマン帝国崩壊以来、イギリス帝国が生み出し、育成したムスリム同胞団は、70年代末と80年代始め、現在のバッシャール・アル・アサド・シリア大統領の父親で、当時のシリア大統領ハフィーズを打倒しようとした失敗した企てでも支援されていた。この紛争に参加した武装過激派は、その後の取り締まり強化で散り散りとなり、ムスリム同胞団の多くのメンバーが、アルカイダと呼ばれる新たなアメリカ-サウジアラビアの組織を形成した。同胞団と、アルカイダが、それ以来、現在に到るまで、独立した中東の運命の後を追い続け、阻止しようとつとめることになる。
>ISは、シリアで活動している他の全ての過激派集団と同様、世界中から送り込まれる、気前良く、果てしのない大量の兵器、装備、現金や戦士の受け手だったのだ。
このように見たとき,小生は,シリア紛争を「内戦」と呼ぶ高橋和夫放送大教授や坂井竜谷大名誉教授などの立場はとらない。しかも両者ともアサド政権を悪者扱いしている。欧米日のマスゴミがロシアを悪魔化しているのと軌を一にする。以下に長くなるが,引用しよう。
>2011年以来、シリア“内戦”の意味を理解してようとしてきたが、うまく行かなかった人々にとって・・それは内戦でなく、内戦であったことなど決してなかったのだ。そもそも始まる前から代理紛争なのだと理解することで、理解が明晰となり・・・。
中東には若い頃から関心があったが情報は少なかった。専門家には遥かに及ばないが,最近『マスコミに載らない海外記事』で紹介される記事や藤永茂教授の『私の闇の奥』を読んで,欧米日の記事から流れてくる情報が「嘘」,よく言って「偏向記事」であるように思うようになった。
日本のメディアや大学にも「内戦」を強調させるための資金がカタールなどから入っているらしいが,中東に関する良質の情報が流れてくることを期待したい。